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リモートワークのつらさを共感して楽しいに変える - ハピネスチームビルディング[1]

この記事の初出は、Software Design 2022年4月号です。

はじめに

私は、開発チームのエンジニアリングマネージャーとして、今までチームの皆と一緒に楽しいチーム開発をするための様々な施策を試してきました。
それらの施策は、チームの皆が主体的に提案したものであり、これが楽しく開発する原動力となっています。
そのように皆で提案する活動の事を「ハピネスチームビルディング」と名付けて、私のチームでは大切にしています。
その内容を記事やカンファレンスで発信した結果、役にたったと言ってくれる人もいました(デブサミ2020関西でベストスピーカー賞1位をいただいたり、Qiitaで合計1万LGTMをいただいたりなど)。

この連載では、それらの活動を通して楽しいチーム開発をするために得られた知見を紹介していきます。
その結果、あなたのチームに少しでも貢献できれば幸いです。

仕事で楽しい体験を繰り返す

仕事で「楽しい・嬉しい」と感じるのは、どんな時でしょうか。
色々ありますが、「主体的な行動で成果が出る」というのは、多くの人が嬉しく感じるのではないかと思います。
例えば、自分が提案して導入したツールやライブラリに対して、他の人から「便利になった」と言われると嬉しいと思います。

従って、私のチームでは「主体的な行動で成果が出る」という体験を繰り返す事を重視しています。

しかし、「主体的に行動しましょう」と言うだけでは、なかなかできません。
それが自然にできるようになるまでは、それを促すような取り組みが必要です。
今回はその一例として「コーチングのように質問することで、改善の施策を提案してもらう」という方法を紹介します。
具体的にイメージできるように、以降でリモートワークの改善の事例を説明します。

各自が感じる問題点を聞いてみる

私のチームは、コロナ以前はオフラインで同じフロアでチーム全員が集まり、メンバー同士で相談しながら開発していました。
しかし、コロナの影響で、突如リモートワークに切り替わりました。
そのリモートワーク2日目の朝、各自がリモートワーク初日に感じた問題点を話してもらいました。
その結果、「孤独感を感じる」「意外と疲れる」などの問題点が挙がりました。

このときの話し合いで気をつけたのは、マネージャーの私が問題を見つけて解決するのではなく、チームメンバーに自分で問題点を見つけてもらうということです。
そして自分たちで見つけた問題点に対して、自ら改善する施策を提案してもらいたいと考えていました。

質問の受け答えから提案が生まれる

リモートワークに対して、メンバーが挙げた「孤独感を感じる」という問題に対して、コーチングのように質問しました。
以下に、私とメンバー(「メ」と表記)との会話の一例を記します。

私「なんで孤独感を感じたんです?」
メ「チャットのコミュニケーション中心だからかもです」
私「なるほど!じゃあ、どうなれば解消されそうですかね?」
メ「出社してた時の状態に近くなれば解消されるかもです」
私「なるほど!じゃあ、出社してた時と一番違うのは何です?」
メ「気軽に声をかけづらい事です」
私「それだ!気軽に声をかけやすくするために何をします?」

この後、メンバーから様々な提案が出てきました。
ここで気をつけたのは、「気軽に声をかけやすくする事」が孤独感の解消になると予測して良い提案を思いついたとしても、それを言うのを我慢して、まずメンバーに言ってもらう事です。
そうすることで「自分が考えて提案した施策」と感じてもらいやすくなりました。

私の経験上、他人から提案された施策は素直に受け入れにくい事があります。
逆に、自分が提案した施策は愛着があり成果が出て欲しくて真剣に取り組むため、チームの改善という点でも、なるべくメンバー自身に提案してもらった方が良いと感じています。

成果が出て嬉しいと感じてもらう

「主体的な行動で成果が出る」を実現しても「成果が出た」と本人が感じてなければ意味がないので、提案してもらった施策が少しでも効果があれば「○○くんの提案のおかげで声をかけやすくなった」という事を伝えました
また、効果の大きい施策も小さい施策もありましたが、提案した本人が一番効果を実感して「自分の施策で自分は声をかけやすくなりました」と嬉しそうに話してくれた事が印象的です。

こうして「主体的な行動で成果が出る」をメンバーに体験してもらったわけですが、次に、実際にどんな施策が提案されたのかを紹介しましょう。

リモートワーク改善で効果的だった施策

チームの皆から挙がったリモートワーク改善の施策で、特に効果的だったものは3つあります。

1つ目は「毎日1回以上ビデオ通話に誰かを誘うルール」です。
これはリモートワーク2日目から適用したルールで、初期のビデオ通話に慣れていない時期に効果的でした。
このルールによって、ビデオ通話に誘う敷居が大きく下がりました。
同じフロアで「今ちょっと良いですか?」と話す感覚にかなり近づきました。

2つ目は「スピーカーフォンの導入」です。
ビデオ通話を気軽に行うようになると、今度はビデオ通話のたびにヘッドホンを付け外しするのが面倒に感じました。
また、長時間のヘッドホンは疲れますし、長時間のイヤホンは外耳炎のリスクがあると言われています。
そこで、スピーカーフォンを導入して、ヘッドホンやイヤホンの付け外しをせずに「シームレスにビデオ通話開始」ができるようになりました。

3つ目は「各自が待機するルームを作り、用があればルームに入る」です。
つまり、チャットでの「今から通話いいですか」というやり取りを省略して、いきなり相手に話しかける方法です。
これを行うためには、チームメンバー全員が、いきなり話しかけられても大丈夫な関係性になっている必要があります。
その条件さえ満たしていれば、よりスピーディーにビデオ通話を開始できます。

具体的な手順として、Zoomのブレイクアウトルームを、下図のように人数分、作成します。
その際に[参加者によるルーム選択を許可]にチェックを入れます。

Zoomの手順

通常時は、そのルームにチームメンバー1人ずつが待機します。
話しかける時は、その人のルームに入って、いきなり話しかけます。
Zoomのブレイクアウトルームはミーティング終了後に停止するため、私のチームでは朝会の時にブレイクアウトルームを作成しています。
なお、Discordでも下図のようにチャンネルを人数分作成すれば同じ事ができます。

Discordの手順

以上の施策によって、私のチームでは、相談があればワンアクションで即座にビデオ通話するようになりました。
他にも、ペアプログラミングやモブプログラミングを頻繁に行うため、1日に何回もビデオ通話を行う事になり、「孤独感を感じる」という問題は無くなりました。

まとめ

仕事で楽しい体験を繰り返すためには「主体的な行動で成果が出る」ことが大切です。
その例として リモートワーク改善の事例を紹介しました。
今回の事例は、チームの皆で問題点を見つけて、質問の受け答えの中から提案が生まれる事が、仕事での楽しい体験に繋がりました
これはリモートワーク以外の題材でも活用できる考え方なので、楽しいチーム開発をするための参考にしてみてください。
また、もしリモートワークに対して何らかの課題があるとお感じの方は、事例のようにチームの皆で改善施策を考えてみると、そのチームに合った施策が生まれるかもしれませんよ。


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