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メンバー間で活発に議論する朝会にしよう - ハピネスチームビルディング[2]

この記事の初出は、Software Design 2022年5月号です。

はじめに

私のチームは、アジャイル開発をしており、毎朝チーム皆で集まって今日やることなどを話す会議をしています(現在は全員リモートワークです)。
朝に行う会議は「朝会」「デイリースクラム」「スタンドアップミーティング」などがありますが、今回の話はどれにも共通する内容のため、ここでは「朝会」と呼びます。

朝会が、マネージャーへの報告会になってしまう事は無いでしょうか?
私のチームの朝会はまさにそういう状態
でした。
メンバー間での議論は無く、各メンバーの報告に対してマネージャーだけが助言をしている状態でした。
今回は、そのようなメンバー間で議論のない朝会から、メンバー間で活発に議論する朝会に変わった事例を紹介します。

朝会で改善したいポイント

私のチームの朝会は、メンバー間での議論がありませんでした。
それを改善するために、「話す時はチームの皆に向かって話しましょう」「どうすればゴールを達成できるのかという視点で皆で話しましょう」などの朝会のやり方や目的を伝えたり、ファシリテーターの持ち回りを試したりしました。
しかし、当時は私以外のメンバーが入社1~3年目中心の若手という事もあり、自分のタスクを報告することで手一杯で、他の人のタスクに対して質問や助言ができないという状況でした。
その結果、朝会の中でのチームメンバーの発言は「自分の報告」の時だけであり、他の人が報告する間は黙って聞いているだけでした。
ここが、一番の改善ポイントでした。

メンバーにどうしたいか問いかける

チームを改善するための振り返りの中で、朝会で「他の人が報告している間は黙って聞いているだけ」に対する改善策をチームの皆で議論しました。

この時、私はとにかくこの問題点を解決することの重要性をチームの皆に認識してもらいたいと思いました。
そこで、次のような話をしました。
各自の報告に対してマネージャー1人だけが真剣に聞いたうえで質問や助言をするだけでは、判断を間違う事や考慮漏れが発生しやすくなります。
もしチーム全員が真剣に報告を聞いたうえで質問や助言をすれば、よりよい判断ができたり考慮漏れを防ぐ可能性が高くなり、チームの生産性を高めます。
また、自分のタスクだけを考えるのではなくチーム全体のことをリーダー視点で考えて主体的な行動をする人材は、どのチームでも求められます。そのため、自分以外のタスクを理解して助言する訓練を積むことは、各自の将来のための成長につながります。

上記のように問題点を改善する重要性をチームの皆で共有したうえで、どうしたら良いと思うか問いかけました
その中で、入社1年目のメンバーが提案した施策が「朝会で1人1回質問する」というルールを作ることでした。
この案に対しては、他のメンバーも「良い案だからやってみよう」となりました。

これがもしマネージャーが「朝会で1人1回質問するルールを作ります。明日から守ってください。」と一方的に決めたとしたらどうでしょう。
おそらくチームメンバーは、やらされ感を強く感じ、良い効果を発揮しないでしょう。
だから私のチームでは、「どんな施策をやるか」については厳密に精査せずに「チームの皆が自分から取り組みたいと思った施策」であれば、とりあえず1ヶ月やってみようというスタンスで様々な施策を試しています。

朝会を1人1回質問するルールでやってみる

「朝会で1人1回質問する」を具体的にどのように行ったのか紹介します。

各自が「今日やること」などを報告する際に、自分以外の誰かの報告に対して質問するというやり方です。
例えば5人で朝会を実施する場合、自分以外の4人の報告に対して、そのうち1人だけに1回質問すればOKです。
ポイントは「助言」でなく「質問」でOKという点です。
助言するのは難しいですが、質問するだけなら、分からない事を質問すればいいので、頑張れば新人でもできます。

これを試してみた結果、質問をきっかけに「やり方や優先度の見直し」が起きる事がたびたびありました
そのようなメンバー間の会話の例を2つ紹介します(A~Dはメンバーの名前)。

  1. 優先度を見直した例
    A「今日はXXX機能の3つのサブ機能のうちの1つ目を作ります」
    B「1つ目のサブ機能ってどれの事です?」
    A「ここに書いてある3つのサブ機能のうちの、これです」
    B「あれ?でもそれよりこっちのサブ機能の方が優先度高くないです?こっちがないと他のサブ機能が動かないし」
    A「確かに!じゃあ、そっちから作ります」

  2. タスクのやり方を見直した例
    C「今日はYYY機能の試作を作ります」
    D「YYY機能って何でしたっけ?」
    C「外部のプログラムと連携してデータを作成する機能です」
    D「ああ、前に私がライブラリの事前調査したやつですね」
    A「じゃあ、もしかしたら、最初はDさんとペアプロした方が良いかも」
    C「確かに!じゃあ、Dさん、よろしく」

このように「朝会で1人1回質問する」をやってみた結果、次のような効果があったとメンバーが言っていました。

  1. 質問するために、他メンバーの報告を関心を持って聞くようになる

  2. 自分のタスクの事だけでなく、チームの進捗を考えるきっかけになる

  3. 他の人のタスクを理解する事で、質問だけでなく助言もできるようになる

  4. 毎日の朝会が、会議中に主体的に発言するための訓練になる

  5. 自分の質問をきっかけに「やり方や優先度の見直し」が起きてチームの貢献になり嬉しい

上記5.について、前回にも述べましたが、メンバーの行動がチームの貢献になっても、それをメンバー自らが認識しないと成功体験になりません。
そのため、私は意識的にそれを伝えるようにしました。
具体的には、「○○さんの質問がきっかけでチームの開発が加速しました!」という事を毎回伝えて、「自分の発言はチームの役にたったんだ」と感じてもらえるようにしました。
経験の浅いメンバーが会議で発言しない理由の1つは「自分なんかが発言しても、チームの皆の時間が使われるだけで、チームの貢献にならない」と思ってしまうことだったので、成功体験を積む事でそれを徐々に払拭できました。

日頃から主体的な発言を称賛する

主体的に発言する事による成功体験は、早く多く体験した方が良いと考えました。
よって、朝会の活動と並行して、朝会以外の会議でメンバーが主体的に自分の考えを発言をした時は、その都度ポジティブフィードバックする事を心掛けました。
ただ若手の頃は、そもそも会議で主体的に発言する事ができないので、最初の頃は会議の中で「これについて○○さんはどう思います?」のように、その人の考えている事を話してもらい、その意見に良い点があれば、ポジティブフィードバックを行う事を繰り返しました。
そういうフィードバックを何十回も繰り返していくと、どのメンバーも徐々に主体的に会議で発言するようになりました。
今では、朝会でもその他の会議でも、チームの皆が自分の考えを積極的に発言してくれています。

まとめ

チームの改善を行う際は、皆が自分から取り組みたいと思える施策を行う事が大切だと思います。
もし朝会がマネージャーへの報告会になっている事に問題を感じている場合は、そこを意識して施策を考えて試してもらえると嬉しいです。


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