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映画レビュー「ジョジョ・ラビット」

映画のような夢を見てますか?
映画は映画館で観たいコウニです!

地元の映画館は子供映画ばかり上映しているので、いい映画が観たくなってフォーラム福島まで足を運んできました。

母が「いい映画だったよー!」と、笑顔で含みを込めて言っていたのが観に行く決め手となりました。母も映画好きなんですが、笑顔でこの言葉をした時は間違いなく名作なんです。

映画「ジョジョ・ラビット」

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めっちゃ面白い!面白い!面白い!??
“面白い”という表現があっているのかはわかりませんが、こりゃ、久々にいい映画を観たなぁというのが率直な感想です。
こういう名作にたまに出会えるから映画を観ることをやめられない。それを映画館で観られて良かったと思いました。

どのぐらい面白かった(いい映画)かというと、子供が主人公である名作映画はたくさんありますよね。僕が好きな映画でいうと、

 スタンド・バイ・ミー
 ニュー・シネマ・パラダイス
 グーニーズ
 パーフェクト・ワールド
 ぼくのバラ色の人生
 リトル・ダンサー

これらに続く勝るとも劣らない作品です。僕が既ににいい大人になっていて、シナリオライティングやストーリーテリングの知識があって多少書けるようになっていることを鑑みてしまえば、きっと、これらの作品より勝っているような気がします。そのぐらいの作品です。

そして、このジョジョ・ラビット。これが名作映画と呼ばれるにふさわしい物語です。と、言いつつも「物語が」とバラして考えるよりも、作品全体が素晴らしいんです。

原作は読んでおりませんが、原作本からして名作なんだと思います。それに加えて、その原作の登場人物たちが、生き生きとした姿のまま映像表現するための脚本と脚色と演出がめちゃくちゃ素晴らしいのだと思えました。

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僕は、この本作品で初めてタイカ・ワイティティ監督を知りましたが、原作を読みながら、この画を頭の中で描いていた想像力がヤバイです。この想像力を持って、世の中の物語を見ていたり読んでいたりとするのだとしたら…鳥肌ものです。しかも、本作品でアドルフ・ヒトラー役までこなしてます。

この監督、凄まじいクリエイターでアーティストです。

配役も登場人物のキャラクターもいい。描かれていない背景すら想像させてくれます。美術も照明も撮影手法も素晴らしい。ワンカットワンカットが絵になるような連続。最高のフィルムカメラででも撮影でもされたかのようです。音楽・SEも名作にふさわしい。ビートルズの名曲から始まるオープニングは、音楽好きも映画に惹きこまれてしまうでしょう。

 決して素晴らしくない
 戦争と洗脳を題材に描かれた
 嘘と本当と愛と成長の素晴らしき世界

まあ、作品を作った方々の想像力と映像表現力が素晴らしすぎて、このレビューを書くことすら陳腐に感じています。
(でも書きます。この作品を一人でも多くの人に知ってもらいたいから)

それぐらい名作映画です。

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プロローグのあらすじはこんな感じです。

舞台は、第二次世界大戦最中のドイツ・フォルケンハイム。
10歳のジョジョは、ずっと夢見ていたヒトラーユーゲント(ヒトラー青少年団)に入隊することになった。希望と緊張と不安になるジョジョ。そんなジョジョを勇気づけてくれるのは、空想で描いたアドルフ・ヒトラーだ。ヒトラーは、とてもユーモアがあり、ジョジョを勇気付けていつも背中を押してくれる父親のような大切な存在だ。
ヒトラーユーゲントでは、戦場で目を失って帰ってきたキャプテンKから、ユダヤ人の悪魔性を学び、男子は立派な兵士になるべきナイフをはじめ兵器の使い方を実践する。
そんな中、ジョジョは皆の前でウサギの首を折って殺すように教官から命じられる。迷った結果、意を決してウサギを逃がそうとするが、ウサギは捕まって目の前で首をへし折られ放り投げられてしまう。そして、教官に「戦地から逃げ出したお前の親父のようだ!ジョジョラビット」と吐き捨てられる。

(余談ですが、このシーンは秀逸です。とても短いシーンですが、ジョジョがウサギを扱っている姿と一連の流れから本当に優しい少年であること、時代が優しさを一切必要としていない寛容なき世界であることが見てとれます。タイトルになるだけあって、本当に秀逸な本と演出です。)

悲しみと悔しさで、その場から逃げ出したジョジョに、盟友アドルフ・ヒトラーは言う「ウサギは偉大だ。毎日命を顧みず家族のために人参を盗み出す。命を顧みずにだ。ウサギのように勇敢になれ。ジョジョ。お前は勇敢なんだ。ウサギになれ」と。
奮い立ったジョジョは「僕はウサギになるんだ!」と、心踊らせながらヒトラーとともにユーゲントの皆の元に走り出す。そして、手榴弾の使い方を解説しているキャプテンKの手から人参を奪い去るがごとく、勢いよく手榴弾を奪って投げ飛ばした。が、しかし、手榴弾が木に跳ね返されて足元に落ちる…。 ドバーンッ!!!!

と、こんな感じで始まります。多分、スタートから10分以内のプロローグです。ここから、ヒトラーユーゲントの皆とは訓練できずに、軍から雑用のような仕事を与えられて過ごすジョジョの物語で、子供の視点のように、ユーモアと希望が溢れるかのごとく、母親とユダヤ女性と軍の大人たちと戦争が描かれていくのです。

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どのシーンをとっても、無駄がなく、素晴らしい。
そのシーンをそう描くんだ。へー!面白い!なんて思っていたことも、ただ面白いのではなく、物語の一部になっています。
戦争中にあった史実に基づいた、本当にあったかもしれない物語。こんなにユーモアと愛が溢れて、所々で笑える映画なのに、この人たちはなぜ幸せではないのだろう。刹那的にある幸せが、それを深く感じさせてくれます。

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映画館で、僕の隣のカップルが外国人の方でした。映画を見て笑っていました。僕もクスクス笑いました。

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唯一、描かれた戦闘のシーンですら、ジョジョの視点で描かれていて、ユーモアに溢れているように見えることが、それがある意味で狂気じみていて、今までにない戦争映画を彷彿させていました。ここもまた秀逸なシーンです。

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映画の結末を観て、とても心が洗われるように良かったと思える部分と、戦争という不条理な出来事に、またそれをこんな風に描いてと思ってしまうクソ大人な自分へ腑に落ちない気持ちが程なくして起こりました。おそらく、同じ会場で観ている大部分の人に同じことが起こったのかもしれません。

エンドクレジットが続くにつれ、すすり泣く声がどんどん多く大きくなっていきました。ただただ、音楽にのせて作品に関わったクリエイターたちの名前が流れているだけの白と黒の映像に。

 1秒1秒-。
 時を刻むごとに-。
 泣き始める人が増えて行く。

とても不思議な現象です。エンドクレジットが終わる頃、泣いていないのは数人といったところでしょうか。その数人の中の一人に僕もいましたが、涙を堪えていたのは言うまでもありません。

きっと、戦争映画でもなく、本当に可哀想と思えたのなら声を出して泣いていたことでしょう。この映画を観ながら、戦争という不条理と主人公たちと共に僕も精神的に戦っていたのかもしれません。絶対に死にませんよって。

 決して素晴らしくない
 戦争と洗脳を題材に描かれた
 嘘と本当と愛と成長の素晴らしき世界

ジョジョ・ラビット。
久々の不朽の名作です。ぜひ、映画館でご覧ください。

映画「ジョジョ・ラビット」予告

タイカ・ワイティティ監督インタビュー映像

今回のレビューいかがでしたか?

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