koji itoyama 糸山晃司

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koji itoyama 糸山晃司

Composer / 映画音楽家 HP : http://kojiitoyama.info/ Instagram : https://www.instagram.com/kojiitoyama/

最近の記事

Ambientの即興演奏は轟音にしては品がない

タイトルの通り。今までもそうしてきたけれども。 改めて制作の合間の気分転換にimprovisationをやってみた。 使った楽器は、ティンシャ、シンセサイザー、シンバル、ピアノ、ギター。シンバルはボウイングで。 音数は増えても音楽的な圧が必要以上に大きくならないことを意識してみた。轟音のアンビエントやドローンは正直、誰でもできる。混ぜすぎて濁った絵の具みたいで品がないので。 ひとつひとつの音がソリッドでないと轟音になってしまうので、そこに気をつけながら。 仕組みはシン

    • 受難曲 Passion -Clanio 音楽制作の記録

      2024.03.20 受難曲の小曲集をリリースします。「受難曲」とは、イエス・キリストの受難を描いた音楽作品のことで、有名なのはバッハのマタイ受難曲。僕も気分が沈んだ時はこのバッハのマタイをよく聴きます。 今回リリースするこの現代版の受難曲(Passion)、全トラックのタイトルは思い浮かべた映画の題名から拝借しています。基本的には「無題」ですが、無題ってアートじゃありきたりであまり好きじゃないので。 クラシカルな音を軸にしようと決めて制作をはじめたので、オルガンがほとん

      • 日本各地、フィールドレコーディングの旅をした2023年末

        2023年の12月、静岡〜福井〜京都、そして長野にてフィールドレコーディングをした。環境音を使った作曲仕事の依頼があったから実施。狙ったのは冬の山の音。 ZOOM H3-VRによるアンビソニック録音と、モノラルマイク2本によるステレオ録音の両方を、音場の雰囲気によって使い分けた。 松本では白樺が霧氷で倒れた光景に圧倒された。ここでは遠くの木々が揺れる音と鳥の声、近接の風の音を採集。冬の山の少し悲しい感じをまるごと切り取れた。 真冬の山はかなり寒かった。フィールドレコーデ

        • listudeのスピーカーと、建築空間のBGM制作を小豆島にて

          小豆島にある千年オリーブテラス @1000olive_terrace の空間音楽を制作しました。素敵な建築はVUILD @vuild_official 、スピーカーはlistude @_listude 。至高の組み合わせだと思います。 千年オリーブテラス:https://1000olive-terrace.com/ 音楽はピアノ、ソリッドなアンビエント、それから小豆島のフィールドレコーディング音源をふんだんに使いました。また、オリーブの木から採集した電波を音に変えるという

        Ambientの即興演奏は轟音にしては品がない

          映画『大いなる不在(GREAT ABSENCE)』劇伴音楽制作過程について

          近浦啓監督作品 『大いなる不在』 森山未來 真木よう子 藤竜也 原日出子 トロント国際映画祭の主要コンペティション(Platform部門)に正式出品された。この部門、歴史が浅いという理由もあるが、日本映画が出品されたのは史上初。文字通り快挙である。 トロント国際映画祭は北米随一の映画祭であると同時に、世界3大映画祭にも迫る規模と影響力を持つ。 さらに、サンセバスチャン国際映画祭のオフィシャルセレクションにも出品が決定。日本からは、「君たちはどう生きるか」と本作の2作品の

          映画『大いなる不在(GREAT ABSENCE)』劇伴音楽制作過程について

          新作「ecto / region」「ある風景 オリジナルサウンドトラック」リリースについて

          2022年の秋頃から少しずつ制作を進めていた新作がようやく完成しました。 全12曲で、サポートミュージシャンにKumi Takahara(flau)、マスタリングにChihei Hatakeyamaを迎えた自信作です。 このアルバムの起点は、昨年後半に取り掛かっていた映画の劇伴です。そのときのとあるデモが今回の表題曲「ecto」として再構築されました。「ecto」には、ピアノとシンセサイザーを基調としたlargoとオーケストラ用に編曲したcodaという2バージョンがあり、

          新作「ecto / region」「ある風景 オリジナルサウンドトラック」リリースについて

          アルバム制作について

          最近の所感。 2023年に入って少しずつ制作を進めてきた4thアルバムのミックスが終了しました。全12曲。 昨年の映画音楽の最中に制作したデモが起点となったため、サントラのような作品ですが、今年の3月に第二子が誕生したため、生命の誕生というテーマにも浸食されています。第二子誕生の分娩室でこのアルバムのデモを流していたので、彼がこの世に産み落とされて初めて聴いたのは僕の音楽ということになりました。 リリースに関する情報はまだいろいろ未定な部分が多いため後日発表しますが、マ

          アルバム制作について

          某大手ハウスメーカーのPR音楽及び、新アルバムの制作

          クライアントワークが落ち着いたので新アルバムの制作の続きを行う日々。最近のクライアントワークは、某大手ハウスメーカーのPR案件。なかなかインタラクティブな制作であり、楽しかったというか性に合っていた。 ここでも新アルバムでも、シンセサイザーを再びフューチャーしている。シンセサイザーとピアノ、それから室内弦楽をメインに使っているのだが、とてもいい感触。プロモーションではパフォーマンス映像も撮ろうかと思っている。なにしろシンセの見た目がかっこいいから。 昔はナチュラルなアンビ

          某大手ハウスメーカーのPR音楽及び、新アルバムの制作

          プリプロ、シンセサイザー、ピアノ、そしてフランスの音楽家からの影響

          2023年に入り、観光用のプロモーションビデオの音楽をいくつか手がけた。 作曲の仕事で忙殺されることもなく穏やかな日々を送れているので、ようやく次のアルバムに着手している。今日は家のアップライトピアノでマイキングのテストも兼ねたプリプロ。のはずが、思いの外いい録音ができたため、本ちゃんとするかもしれない。 今回もいくつかの曲で、昨年末の映画音楽で協力いただいた高原久実さんに弦を弾いてもらう予定。すでに一曲はもう録音データが手元にあって、とても素晴らしい。 次のアルバムは

          プリプロ、シンセサイザー、ピアノ、そしてフランスの音楽家からの影響

          最近の作曲仕事 最終ミックスと映画ダビング・ドキュメンタリー

          11月末〜12月中旬まで、東宝スタジオ(成城)で映画のダビングでした。夏から晩秋まで格闘していた劇伴も、この日程でひとまず終了。 8月末にメインテーマの初稿を提出し、10月に横浜で弦のレコーディング、それまでもそこからもずっと作曲続きでした。 ちなみに、今回はトラック数が多い曲を多く制作したので、ミックスではMMultiAnalyzerが大活躍でした。 全トラックに刺して色分けすれば各トラックの帯域が一眼で分かるという優れもの。音を可視化することでミックスが一気にやりや

          最近の作曲仕事 最終ミックスと映画ダビング・ドキュメンタリー

          最近の作曲仕事 映画劇伴用のレコーディングなど

          10月の頭に横浜で映画用の楽曲に使う弦素材のレコーディングをした。 バイオリン、チェロ、ヴィオラを高原久実さん(flau)に。2人でディスカッションしながらいろんな素材とメインテーマのオブリを録音した。 僕はやっぱり現代音楽的なアプローチが好きで、高原さんが到底クラシックでは使わないであろう音(ノイズ)を出すのを喜々として録音する、という極めて前衛的な作業。 こういった録音ができるという点で、エレクトロニカやアンビエントに嗜好ある高原さんに依頼した。大正解。 マイクは

          最近の作曲仕事 映画劇伴用のレコーディングなど

          最近の制作案件 サウンドデザインワーク 雑感

          引き続きに引き続き、映画の劇伴をゴリゴリゴリと書いている。シェパード・トーンという耳の錯覚を引き起こす技術を取り入れたりして、これは新境地という感じ。 映画の音楽制作をしていると、演奏家への依頼や録音に関する事務仕事(録音場所の予約など)が発生する。これまで制作ばかりを担ってきたからか、こういうディレクション的な立ち回りは結構楽しい。10月には横浜でレコーディングがあるが、変わった音や奏法を試したいのでエンジニア込みのスタジオではなくホールに録音機材を持ち込む方法を選んだり

          最近の制作案件 サウンドデザインワーク 雑感

          最近の映画劇伴 音楽制作過程 雑感

          メインテーマのデモが完成し、監督に送る。映画音楽に限らず、この1回目の提案がもっとも緊張する。しかも今回のように自信がある場合は尚更だ。 3通りのデモを送る。無事、最もよくできているかなぁと感じていたものが通った。この瞬間は最高。僕の意図やこだわりも拾い上げてもらった。こういったとき、相性というかシンパシーの通ずる方が相手だとすごくスムーズだ。 もちろんこのメインテーマのデモはすごく時間をかけて制作した。本番用の納品くらいの熱量で書き上げた。 あとは、楽器の生録。ピアノ

          最近の映画劇伴 音楽制作過程 雑感

          最近の暮らしと音楽 雑感

          映画の音楽をゴリゴリと書いている。 シーンの塊がチャプターごとに書き出されたReel映像がだんだんと送られてきて、そのどこにどういった音楽をつけるかを洗い出す。当然だけれど、脚本の段階とは大きく印象が違ってくる。セリフのミックスもされていない、まさに俳優の生の演技がそこにはある。 俳優はすごい。もらったReelを見ていると目の動き一つで演技が変わるのが分かる。さすがに名優と言われる役者は安っぽさがない。ため息が出るほど美しくリアルだ。 テーマの制作 ここ最近は、メインの

          最近の暮らしと音楽 雑感

          最近の仕事と制作 雑感

          2022年も半分が終わった。演奏の機会が多かった。印象深いのは横笛奏者の望月さんとのアブストラクトなコラボレーション。 歴史のある和笛と現代音楽の化学反応を起こせたと思う。ものすごく楽しかった。 あとは、大分・日出のKamenosでUQiYOさんとの共演、耶馬渓での植物インスタレーションなど。どれも刺激的で実験的なプロジェクトだった。 生活においても、引越しと息子の脳腫瘍の手術(終わったばかり)が大きく脳のリソースを占めた。特に息子の手術は今年の上半期どころかここ数年で

          最近の仕事と制作 雑感

          Perspective というアルバムをリリースしました

          2021年5月29日リリース。今作は現代アート的な作品なので、あえて解説を残します。 最近はサブスクの影響もあり、メジャーインディーズ問わずアルバムが単なる曲の詰め合わせと化している場合が多いようです。まあそれ自体決して悪いことではないのですが、やっぱり僕はコンセプチャルなアルバムが好きなので、今回もコンセプト縛りで曲を書いていきました。 結果として「分かりやすい」ものではないアルバムを作ったわけです。そこで、聴く前にもしくは聴いた後にでも読んでもらえれば少しは印象にプラ

          Perspective というアルバムをリリースしました