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カーツワイルの「シンギュラリティ」最新版その5:仕事の未来

前回の続きです。

今回は、第5章「仕事の未来(The Future of Jobs: Good or Bad?)」を中心に触れていきます。

この章では、技術革新が雇用に与える影響について触れています。鉄板の話題ですね。前章もそうですが、前作との一番の違いは、より社会的な影響について考察している点です。大きな方向性は変わってないので改めて前作を読み返しても相互補完的に楽しめると思います。

まずは自動運転車の技術進化で、Googleの自動運転事業(現Waymo)がAI(深層学習)によって加速的に進化して、自動配車タクシーの展開まで進んだ事例を紹介します。本作では(著者がGoogle社員なので)Waymoしかふれてませんが、次世代の自動運転車も次々と登場し、過去にも触れたので参考までに載せておきます。

次にAIの進化による雇用喪失をテーマに話が続きます。

2013年に話題になったオズボーン教授によるAIで失われる職業リストなどが例示されます。しかし、歴史的に見ると、技術革新は常に新しい雇用を生み出してきて、第一次産業革命に起こったラッタイト運動もいつのまにかなくなりました。例えば、農業の機械化で農業従事者の割合は激減しましたが、その後、製造業や他のセクターで新たな雇用が生まれました。

しかし、技術進歩の恩恵が社会全体に行き渡るまでには時間がかかります。一部の人々は仕事を失い、新しい環境に適応するのが困難な場合があります。これは社会的な緊張や政治的な分極化をもたらす可能性があります。

これを軽減するためには、賢明な政策決定と社会組織が必要です。技術の進歩は人類の古くからの苦難を克服する機会をもたらしますが、その恩恵を公平に分配し、社会の調和を保つことが重要な課題となります。

その具体的な施策例として、社会保障制度の拡充やユニバーサルベーシックインカム(UBI)の導入が検討されています。カーツワイルは、2030年代までに先進国でUBIまたはそれに相当するものが実現すると予測しています。

短期的処置が必要とする一方で、新しい技術は創造性を発揮する機会を増やし、芸術や知識創造の分野での人間の能力を拡張する可能性があります。例えば、AIを活用することで、個人でも大規模な映画製作が可能になるかもしれません。

今後さらに人間とAIの融合が進み我々の能力が拡張されていくことで、新しい仕事や創造的活動が可能になることも予測しています。
カーツワイルは、長期的には技術進歩が生活水準を向上させ、暴力や犯罪を減少させると楽観的な見方をしています。そして物質的な豊かさが増すことで、我々はより高次の欲求を追求できるようになるとみています。

その新しい欲求として、GDPなどの従来の経済指標では捉えきれない価値が生まれています。例えば、無料のデジタルサービスは公式な経済統計には反映されませんが、我々の生活に大きな価値をもたらしています。

ということで、技術革新は避けられない流れですが、その影響を把握し、短期・長期の両面で社会全体が恩恵を受けられるようにすることが重要と唱えています。教育、社会保障、政策立案などを通じて、変化に適応し、新しい機会を活用できる社会を作ることが求められているというわけです。

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