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ミイラとミライを切り拓くCTスキャンの進化

何とも不思議なタイトルですが、こんなニュースが流れています。

ようは、
有名なミイラをCTスキャンしたら49個お守りが見つかった、
という話です。

このミイラは黄金のマスクをまとって明らかに子供のサイズ(130cm程度)であることから「ゴールデンボーイ」と呼ばれています。
古代エジプトのプトレマイオス朝(BC305〜BC30年)の時代に生きていた15歳ぐらいの少年であることが分かっています。

見つかったのは1916年と100年以上前ですが物理的な解剖は行っておらず、その内部が初めて最新のCTスキャンで鮮明に分かりました。

出所:上記記事内の図

結果、49個ものお守りが意図的に体内の各箇所に配置されていることが分かりました。これで古代の風習や考え方がもう少し分かります。
なかには舌や胸腔内にも仕込まれているようで、それぞれのお守りに意味をもたせていたようです。

で、その前に言っておいた方がいいのは、実はミイラの既成概念が近年覆されています。

まだ定説になっているわけではないですが、死体保存のためでなく神に近づけるため、という説が2022年に発表されています。
これ以上は本題とずれますが、関心を持った方は下記を紹介しておきます。

話をCTスキャンに戻します。
最新型は性能が高いので、その3D画像を鮮明にとらえることが出来ます。今回も、胴体空洞部にあるお守りの画像を発見して、それを3Dプリンタで正確に再現することに成功しています。

CTスキャンは、20世紀初期にそのアイデアが生まれました。そのイメージを簡単に説明しておきます。

CT スキャン中、患者はガントリーと呼ばれるドーナツ状のリングを移動するテーブルに横になります。ガントリーには X 線管があり、患者の周りを回転しながらX 線を対象の人・物に発射します。X 線は、線源の真向かいにあるデジタル検出器によって可視光に変換されて画像として検出されます。

X線を当てるのでレントゲンと似ており、レントゲンより詳細かつ3次元で解析可能な診断と言ってもよいかと思います。

問題点はやはり放射能を浴びせるので出来る限り弱く・短くしないといけないところで、これが近年AIが貢献しています。

このあたりは、医療画像診断全体に言えるのでそこまで驚きはないと思いますが、もう1つのイノベーションが科学の力、それも量子の技術で実現しています。

ようは、
可視光変換でなく、X線が持つエネルギーをそのまま計測して検出する原理でより負担を減らすことが出来る、
というものです。

今後もより負荷の低く、さらにはコンパクトで持ち運びできるタイプも出てくる可能性があり、内部構造の3Dスキャンがより身近になる社会が到来するかもしれません。

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