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カーツワイルの「シンギュラリティ」最新版その2:知能の再発明

前回の続きで、カーツワイルの「シンギュラリティ」最新本の紹介です。

今回は、第二章「知能の再発明」にフォーカスします。

タイトルから想像できるかもしれませんが、「人工知能の誕生」とその源流にあたる我々の「脳」との関連についてです。

まず、人工知能という言葉は1950年代に誕生し、以下の二大派閥に分かれました。

シンボリック派:人間によるルールベースの積み重ねで設計
コネクショニスト派:結果が合うように各推論機能をネットワークで設計

20世紀は前者が優勢でしたが、なかなか花が咲かず2回の冬を経験します。そして2010年代になって後者に属する「ディープラーニング(深層学習)」が注目を集め、今の盛り上がりにつながっています。

その原因はその計算能力のコスパが飛躍的に向上したことで、レオナルド・ダ・ヴィンチが発明した「空飛ぶ機械」との類似性を指摘しています。(後年になってそれを実現する素材が開発された)

次に、天然知能、つまり我々人類の脳の歴史について。

生命史によると、哺乳類の誕生までに下記の時間がたっています。

宇宙誕生:138億年前(以降もすべて推測)
地球誕生:45億年前
生命誕生:40億年前
多細胞生物誕生:11億年前
陸地へ進出:6億年前
哺乳類誕生:4億年前

脳(発達した神経網)の誕生は、その要素である神経細胞の誕生から1億年以上を要し、そこから大脳皮質部位に3.5-4億年、そして現生人類の構造に近づくまでに2億年かかりました。

そしてこの数百万年で知能は加速度的に進化しましたが、歴史的には下記に大別されます。

小脳:先哺乳類から発達し運動に関する記憶・行動を担う。数千の小モジュールからなりまだ詳細は不明
大脳新皮質:哺乳類で出現し、高次の知的処理を担う。カラム構造でモジュール化され、大規模な並列処理を行う。

後者とディープラーニングとの類似性が、今の成功につながりますが、その根底には収穫加速の法則があるとしています。こちらにはついては、過去にも投稿でふれてるので、参考までに載せておきます。

本著では、囲碁の世界チャンピオンを破ったAlphaGO(とAlphaZero)、そしてTransformer(今のテキスト生成AIの技術的バックボーンに相当)の性能を例示することで、その飛躍的進化が進んでいることを強調します。

途中でGoogleのAI(今のGeminiに至るまで)が事細かに説明されますが、それはカーツワイルが今でも「Google社の Principal Researcher & AI Visionary」(著者紹介より)である理由とも無関係ではないでしょう。

そして今後、脳の構造解析がfMRIの発達とAIが相まって進んで脳のエミュレーション(模倣)が実現し、人間の処理能力を超えたAIとの接合を果たし、(シンギュラリティが起こる)第5ステージに突入します。

その手段として、毛細血管経由で大脳新皮質にナノボットを送って電気信号授受を制御する技術が発明されます。(イーロン・マスクのニューラリンクが目指す侵襲型でなく非侵襲型を採用)
そして、皮質最上位のカラムと外部のクラウドをつなげることで人類の認知能力を拡張することができるというわけです。

まさに「知能の再発明」にふさわしい出来事が、2030年代には実現するという予言です。

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