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オンライン講座でブコウスキー『郵便局』を読みました

 5月10日の夜7時半から、NHK文化センターのオンライン講座「文庫で味わうアメリカ文学」で、チャールズ・ブコウスキーの『郵便局』(光文社古典新訳文庫)を読みました。
 自分が訳した作品ということもあり、講座が始まる前はみんなどんな風に読んでくれるのかな、とドキドキでしたが、僕が思ってもみないような新鮮な意見が多数出て、すごく面白かったです。
 とにかく労働環境がひどいお仕事小説、という見方が多かったです。特にパワハラや不正行為、非効率、不合理が横行するこうした組織は日本にもたくさんある、という元ビジネスマンの方の指摘は印象的でした。確かにそうですよね。
 あとは、主人公のチナスキーがやたらと女性にモテること、その割には男性とのつながりが希薄なこともたくさん指摘されました。そう言われてみれば、彼は男性の多い職場に勤めているにもかかわらず、仲のいい男性の友人はほとんど出てきません。ここら辺には、マッチョぶってはいても実は繊細で根暗なブコウスキー本人の性格も反映されている気がします。
 アメリカで生活した経験がある受講生の方が言っていた、地方の郵便局のあり方も興味深かったです。郵便配達の方が地元民に愛され、感謝のプレゼントをもらうこともある、とのこと。めちゃくちゃほっこりするエピソードですよね。こうした話とロサンゼルスの殺伐とした郵便局の描写との対比も面白いです。
 次回は6月7日で、読むのはグレイス・ペイリー『最後の瞬間のすごく大きな変化』(文春文庫)です。少々前衛的な作品ですが、受講生の皆さんがどう読んでくれるのか、今から楽しみです。


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