カンバン12

《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.12

課題2:人と人との絆を伝えるコピー
 ・「はじめまして」って冒険だ。

こういうコピーに出会ったとき、じぶんが歳を重ねたことを実感する。
これを書いたのは、専門学校生。成人しているのか、していないのか? ご本人に確認しなかったのでわからないが、年齢からくる瑞々しさと清々しさをコトバから感じてしまう。

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キャリアとしても、年齢としても、じぶんから先に「はじめまして」と言う回数は減ってきている。(逆に先に言われたりして…。苦笑)でも、過去のじぶんを思い出してみると、一体どれほどの「はじめまして」を口にしてきたのだろうか。

小学校、中学校、高校、大学、会社員時代、独立後も。初めて顔を合わす人たちへの挨拶と、これからの始まることへの期待を込めて「はじめまして」とコトバにして伝えてきたように思う。

この挨拶は礼儀かもしれないが、モチベーションのスイッチも兼ねている。「よし、がんばろう」と新たな挑戦を始めるために気持ちを切り替える。ここで挑戦としたのは、目標に到達できるのか、できないのかわからない。筋書きのないドラマの始まりを意味するからだ。

この筋書きのないドラマこそ、日常の中にある『冒険』なのだ。

この一行は実体験の中で蓄積され、コピーとして生まれてきたコトバだ。短いながら、とてもイノベーティブだ!
挨拶することの意味を再発見し、積極的(前向き)に見知らぬ人との関係性をつくり深めていくことができるだろう。そして、この気づきをトリガーにして、多くの人の心(情緒)に響くと思われる。

たった一行で心が踊った。
実は審査会中、私自身はこのコピーをあまり注目していなかった。それなのに表彰式当日、会場のスクリーンに映し出された瞬間、コトバがスッと身体の中に入ってきたのだった。
会場には多くの若者がいたし、見知らぬファイナリストの方々も多数いた。私にも『はじめまして』を感じさせる会場の空気があったからなのか、それまでしっかり読み込めていなかったからなのか? 瑞々しさ。清々しさ。そんな共感を覚えながら発表を見守っていたのだが、残念なことに協賛賞をはじめ各賞を逃したのだった。

じぶんの見る目がないのかなと思っていたら、TCC(東京コピーライターズクラブ)会長 谷山雅計氏の表彰式への参加と評価により、急遽特別に設けられた「谷山賞」を受賞しました!(さすが谷山会長、お目が高い‼︎)

今、このコピーをお前は書けるか⁉︎ と問われれば、すぐには書けないと答えると思う。この瑞々しさ、フレッシュさは、経験を積んだ中年の私では、過去を深く思い起こさなければ導くことができない。

若さとは武器なのだ。
読んだだけで中年の心を踊らせた、直向き前向きでポジティブな訴求(直球型)こそ、若者コピーの醍醐味なんだと思う。そして、じぶんがすぐに書けないという意味において、このコピーを高く評価したい。

「A」って「B」だ。
この例えを使う言い回しは、言うまでもないくらい、コピーでは使い古された構文だ。だが、構文は使い古されていて目新しさを感じなくとも、その時代、その場所で、実感をともない新しさを感じさせるコトバ(キーワード)を置き、組み合わせることができれば、コピーに新しい価値を持たせることは可能だ。
このコピーは古い構文であっても、新しい価値はキーワードの組み合わせにあることを確認させてくれる好例とも言えます。

※コピーの版権・著作権等の使用に関する権利は、静岡コピーライターズクラブに帰属します。
https://shizuokacc.com/award/

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