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ヒト対AI どっちに軍配か フィリピンのBPOからの考察

週末に、久々に対面方式で学会が開催されました。
すっかりオンライン方式に慣れてしまっていましたが、久々の対面、質問者にマイクを回したりは、授業では自分でやっているとはいえ、なかなか新鮮でした!

そういう訳で、今週は学会ネタを、差し障りのない範囲で私なりにアレンジしながら考えてみたいと思います。

まずは、フィリピンから。同国の主要産業の一つが、ITアウトソース産業で、一般的にはBPO(Business  Process Outsourcing)産業と言われています。BPOは、「Voice」と呼ばれるいわゆるコースセンターなどの業務と、「Non Voice」といわれるソフトウェアのバックヤード開発などに分かれますが、フィリピンで有名なのはVoiceのほうです。100万人超が就業し、いずれは5倍になるとの見通しがこれまではありました。

米国主導で進んできた、アウトソースの潮流をうまくつかんできたのが、アジア屈指の英語力を誇るフィリピン(もう一つはインド、こちらは「Non Voice」で存在感)ということになりますし、それを進めたのも米系IT・コンサルティング企業です。トランプ政権時代には、米国から雇用が流出しているとの懸念が一時的に高まりましたが、それを乗り越えてきました。

ですが、コロナ禍では、同国ではASEANでも最も厳格な移動規制が敷かれたため、コールセンターへの出勤は一時困難に。在宅勤務への移行は、通信インフラなどの課題もあってスムーズにはいかなかったようです。

現在は、コロナ禍から正常化の道がみえいるのは朗報ですが、AIの急速な技術進展で、顧客サービスをコールセンター対応からAIチャットに切り替えるケースが増えており、今後は、AIとの競争も激化する可能性が高まっています。

まさに、ヒト対AIが現実になってきている気配。
さらに、同国ではこれまでBPO産業は、産業振興上も優遇されてきましたが、インフラ投資による製造業振興を志向する傾向がドゥテルテ政権からは強まっている感があり、今後、マルコス新政権がBPO産業の優遇を維持するかどうかも、一定程度、懸念材料になりそうです。

外部環境的にはフィリピンBPO業界は、「Non Voice」へのシフトを求められていくことになりそうですが、そのためには、人的資本への投資が不可欠となります。そういう方向に進むことが、フィリピンにとっても望ましいシナリオかもしれません。

他方で、クレイム処理、トラブル処理を、AIがどこまで対応できるのか?という疑義も残ります。チャット対応では、なかなか肝心なところまでたどり着かず、顧客サイドが疲れてしまう・・・そういう経験をお持ちの方はにわかに増えているのではないでしょうか。

私個人としては、フィリピンBPOの「Voice」部門は、予想に反して意外と長く生き残って、対人オンラインビデオ会話センターとして、むしろ存在感を高める可能性はあり、雇用にも引き続き貢献するのではと考えていますが、果たしてどうなるのか。

フィリピン英会話、利用された方もいらっしゃるかと思いますが、対人スキルの高さ、英語力の高さは、やはり、圧倒的な分があると思いますが、「Voice」もまた、教育関連のほうによりシフトする流れになるかもれません。

ヒトとAI
人材の高度化
産業政策
サービス貿易摩擦

本件は、実は、多くの示唆を含んでいますが、同国の強みは英義力を核にしたヒトではないでしょうか。日本企業でも、フィリピンをグローバル人材センターとして捉えて成功している造船会社やエンジニアリング会社があります。

アフターコロナで新政権の船出するフィリピン、米中の安保の視点の報道が目につきますが、その経済のけん引役をになってきたBPOの行方と変化にも、静かに注目いたしましょう。


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