タイのドリアン農園でタイ人の仕事ぶりを見た
今後のキャリアについて考えながら世界を回る僕にとって、世界の人々の働き方には、興味があった。だからこそ、タイで楽しみにしていることがあった。
フルーツ農園見学だ。
通常の観光でも、現地の人々が働く様子は見られる。ゲストハウスやレストラン、トゥクトゥクの運転手などと、僕たち観光者は触れ合う機会が多い。
しかし、それはあくまでサービス(もっと言えば、お金)を通してつながった関係で「客」である僕たちが彼らの素顔を覗くのは難しい。
もっとリアルな姿を見たい。そう考えた僕は、コネを使うことにした。
コネは、使うためにある。
タイのチャンタブリーという街に、僕の友人が住んでいる。彼は、留学時代に知り合ったタイ人の女性と結婚し、昨年からタイへ移住した。
彼の妻一家は農園を経営し、ドリアンとマンゴスチンを栽培している。彼は農家に婿入りしたのだ。
その友人のところに遊びにいけば、タイの農園を見学できる。そして、農園で働くタイ人のリアルな様子を見られる。
こうしてコネを利用した僕は、バンコクからバスで4時間半、タイ東部のチャンタブリーへやって来た。
熱帯気候のタイは、農業が主要産業。特にフルーツはマンゴーやドリアン、バナナ、パイナップルなど何を食べても美味しく、フルーツ好きにとってはたまらないフルーツ王国なのだ。
なかでもチャンタブリー県はフルーツ栽培が盛んな県(他に宝石の街としても知られる)として有名だ。
いったん整理しよう。フルーツ大好き芸人の僕が、フルーツ王国タイのフルーツ県チャンタブリーに上陸したのである。
テンションぶち上がりである。友人の車に乗せてもらい、僕たちはドリアン農園に向かった。
「果物の王様」と呼ばれるドリアン。チャンタブリーでは3〜4月にかけてが収穫時期だ。今日は4月19日。ちょうど収穫を行う日だという。
収穫時期といっても、収穫は毎日行っているわけではない。日頃の行いのおかげだろうか。たまたまドリアンの収穫日に重なった。
僕たちが農園に着くと、すでにドリアン収穫は始まっていた。
この農園のオーナーは友人の妻の両親。彼らに雇われたスタッフたちが収穫作業を行う。
ドリアンの収穫方法は独特だった。収穫は2人ペアで行う。1人が木に登り、ドリアンの実を切り落とし、もう1人が麻の袋でキャッチする。
簡単にやっているように見えるが、実際はプロの技。とても素人が手伝えるレベルではなかった。
彼らは終始、ハイテンションで楽しそうだった。友人が僕を紹介すると、彼らは「ビデオ、ビデオ」と言って、自ら華麗なドリアンキャッチを披露してくれる。
本来は麻の袋でキャッチするはずだが、素手でキャッチするパフォーマンスも見せてくれた(危ないので本当はよくないとは思うが)。
僕にとってドリアン収穫は初めて見る光景でとても興味深い。だが、彼らにとっては日常の仕事なはずだ。
どうしてこんなに楽しく取り組めるのだろう。僕が来たからサービスしてくれたのかと思ったが、友人によるといつも通りなのだという。
口はずっと動いている。冗談を言い合ったり、僕に「ビデオ、ビデオ」と言ったり。でも同時に、手も動いている。着実に、収穫されたドリアンは積み上がっていた。
そうこうしているうちに、お昼休憩。友人妻の母の手料理を僕もごちそうになった。コップンカップ。
このランチタイムが一番の驚きだった。僕と友人がのんびりご飯を食べている間に、気づけば彼らはいなくなっていた。昼食をささっと食べ、てきぱきと午後の収穫作業へ向かっていたのだ。
僕はタイ人のイメージを勘違いしていたかもしれない。タイ人はのんびりと仕事をするだろうと思っていた。どちらかと言えば、休憩ばかりで生産性は低いのだろうと、勝手に思っていた。
しかし、のんびりしていたのは日本人の僕たちの方だった(友人は僕に付き合ってくれていたわけだが)。
1日で収穫したドリアンはこんな量になった(実際は撮影後もドリアンは増え続けた)。
まだまだ仕事は終わらない。収穫の後は仕分け、計量、荷台への詰め込み作業。
ドリアンの形や大きさ、また叩いて鳴る音でまずはランクを判断する。特に質の高いもの、出荷可能なもの、出荷不可能なものに分けていく。あれだけたくさん収穫したのに、出荷不可能なドリアンも意外に多い。
仕分けが終わると、次は計量。ドリアンは重さあたりで値段がつけられるため、計量は重要な作業工程だ。
そして、山場は車への詰め込み作業だ。ドリアンを出荷上へ持っていくために荷台に詰めこんでいく。
これがなかなかの重労働。途中でトラックから落ちないように、隙間なくドリアンを詰め込まなければならない。そのため、一つひとつドリアンを丁寧に車に載せていく。
この一連の作業の中で、彼らはほとんど休まなかった。時折、水やジュースを飲み始めるので休憩かな?と思いきや、一口飲んですぐ作業を再開していく。
友人によると、彼らの給料は時給ではなく、出来高で支払われているらしい。何時間働いたかではなく、どれだけドリアンを収穫して出荷したかによって、彼らの給料は変わる。
こうした給与制度は、彼らの生産性の高い働き方に大きな影響を与えているだろう。もしも時給制だったとしたら、きっともう少しのんびりと働いていたかもしれない。だが、それを差し引いても、彼らの熱心な仕事ぶりには驚かされた。
僕はこの日、11時〜17時ごろまで、農園を見学させてもらった。自分は見るだけで労働はしていない。それでも35℃超の気温の中、屋外にいるのは相当こたえた(実際翌日軽く夏バテしていた)。
しかし、彼らは僕たちが着く前から仕事を始めていたし、僕たちが帰った後、さらに出荷作業を行っていた。軽く10時間は働いていたのではないだろうか。それも炎天下で、休憩をほとんど取らずに。
僕はタイ人に対して、仕事よりもプライベートを優先し、仕事はなるべくだらだらやるといったイメージを持っていた(1年タイ留学経験のある自分のイメージ。ちなみにこれを悪いとは思っていない)。
しかし、ドリアン農園で見た数人のタイ人の働きぶりによって、僕のイメージは覆された。
「知る」「学ぶ」の基本は、現場を見ることだと改めて思い知らされた。現場を見せてくれた友人夫妻一家、農園のスタッフたちに感謝したい。
最後に。チャンタブリーの新鮮なドリアンは、これまで食べた中で最も美味しかった。何よりも、臭くなかった。
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