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2020 Women’s Collection - 制作 4 (複数の時間の収集)

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2020 Women’s Collection
Fashion Designer : Yuko Koike
Model : Ksenia , Hair & Makeup : Marisa Tipkanok , Photo : Yuko Koike

koike. 2020年新作コレクションです。この作品はカメラから見た光と、夜の物語、二つの重なりを表現しました。

制作のインスピレーションは、二つあります。写真や映画のような視覚のイメージ。そして、芸術家の歴史や制作背景、あるいはわたしのなかにつよく残っている物語。

いまここで見えているものと、見えていないけれどわたしの人生で出会った大きな景色の重なりが、制作を支えています。

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ドレス(ワンピース)、シューズ、全て koike.

閉館時間の21時、展望台から夜にカメラを向けている。ここは日本でいちばん高い電波塔で地上から450mあるだけあって、いくつもの街の光が凝縮して見える。

数えきれない光が目の前に広がり、雑多な街でさえも遠くから見れば、美しい光になる。蛍のように生き物が動いている光。不規則で、ゆらめいていて、強弱があって、陰影が変わりつづけるから何度もシャッターを押す。

瞳のなかを潤してくれる街の光に酔いしれる。輝きのインスピレーションが銀糸となって、編み込み、作品のイメージを組み立てていく。

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夜の街を見るたびに、思い出す景色がある。

深い山に二人だけ。肺につきささりそうな冷たく澄んだ空気を吸い込む。風の音はしない深夜24時。どこを歩いても雪。おそるおそる足跡をつける。

遠くで動物の目が真んまるに光っているかもしれない。怖いけれど、このワクワクしているのは野生の本能なのだろうか。

小さくて繊細で、こぼれ落ちてきそうな星があふれている。冷たい空気のなかの無数の星は細氷のようだ。消えそうに、はかなく、輝きつづけ、とても綺麗で、まるでスパンコール。

きっとこんな景色を見ることは、人生でそう何度もない。体から光が溢れてくる、銀河の花のような洋服をつくりたいと思って夜を見ていた。

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