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「AI技術がコモディティ化している」はウソ?~研究者が企業で活躍するためにこれから求められるスキル~

田村浩一郎@ACES

0. 自己紹介

皆さんこんにちは、株式会社ACESの代表の田村(@7142857)です。簡単に自己紹介させていただくと、私は東京大学の工学系研究科博士課程で松尾研究室に所属し、Deep Learningの金融への応用について研究しつつ、株式会社ACESという会社を経営しております。先週はIPOのタマゴにも出させていただきました。

1. AI技術がコモディティ化しているという主張の理解

Deep Learningが登場してから、"AIブーム"が続いていました。

- 偉そうな人「とりあえずAI!」
- AIコンサルっぽい人「AI人材が不足!目指せAIエンジニア!」

私としては、「なんだかなぁ」というモヤモヤは感じつつ、それでもAIに期待する人・理解をする人が増えることは総じて良いことだと思います。

しかしその反動からか、2018年くらいからでしょうか、AI技術はコモデティ化しているという話をちらほら聞くようになりました。
そうした言説の主張点は、

・sklearnを始めとした機械学習ライブラリが普及し、多くのエンジニアが機械学習の関数を実装・活用しやすくなった
・AutoMLソフトウェアやGAFAの提供するAPI/基盤によって、MLOps領域も含めてローコード/ノーコードで利用できる機能が増えた
・論文で公開されるアルゴリズムも、著者実装や再現実装がGitHubに公開されるようになっている

ということだと認識しています。
(AI技術のコモデティ化/民主化が話題に出る前から、もともと多くのアルゴリズムが論文として公開されていましたので、論文がオープンに公開されているという事実は、本質的であるものの今回の論点ではないかと考えています)

こうしたトレンドは、総じてポジティブだと思います。私としても、簡単にAIアルゴリズムを実装できることは嬉しいです。

一方で、ACESを創業して3年半くらいたちますが、現状AI技術がコモデティ化しているというのは正直誤った見方だと思います。
むしろ、コモデティ化を議論するずっと前のステージにいると見ています。

2. コモデティ化の前に、そもそも付加価値はあったのか

「コモディティ化」とは、高付加価値の製品の市場価値が低下し、一般的な商品になることを指す。

引用: コトバンク

今回私がこのnoteで立てる問いは、「現状、産業に対して、AI技術を用いた高付加価値の創出がそもそもできているか?」というものです。
AI技術が難しいこと・できる人が少ないことと、付加価値が高いことは独立です。

画像分類でイヌとネコの分類ができることって、そもそも産業価値どれだけあるのでしょうか。
物体検出で人を検出できること、人数を数えられることに、あなたはいくら払いますか。その精度が1%上がった時、どれだけの価値が増えますか。
高度な数学やエンジニアリングを行なってそういった認知処理を実装するより、人を雇った方が安くないですか。

私は、多くの企業が、AIを産業・事業価値にまだ落とし込めていない状況であり、コモデティ化する以前の問題に直面していると感じています。

産業におけるAI価値というのは、

AIの価値 = 知的処理単価×産業全体でのトランザクション数

で計算されます。そもそも単価が高く、かつトランザクション数が多い知的処理を、ソフトウェアで再現できることにAIの価値があります。

知的価値(目的レベル)とAIによる実現可能性(技術レベル)の2軸でAIの社会実装の市況を下の図のように整理すると、コモディティ化はおろか、そもそも価値の高い知的処理をAI技術で実現することができていない領域がほとんどです。

AI技術の整理

さらに、コモデティ化されていると言われやすい物体検知などの認識技術も、論文にはなっていないけれども、社会実装におけるissueが様々存在していて、まだまだ研究余地があります。

現状をやや批判的に表現すれば、AI技術がコモディティ化しているわけではなく、マーケティングされたAIブームと、AI人材の希少性にかまけた人月商売の開発事業や教育事業の事業価値(≠社会価値)が見直されているということなんだと思います。

3. AI"研究者"は依然として事業価値への貢献は大きい

価値の高い知的処理をAI技術で実現することができていない領域がほとんどであり、AIでチャレンジングな知的処理を再現実装できる"研究者"の事業価値への貢献は依然として大きいです。

特に、アカデミアの技術を事業へ接続することができる能力は、大変な価値があります。
ACESにおいて、アカデミアの技術を事業に落とし込むバリューチェーンを下図に書き起こしてみました。

アカデミアから事業への接続

弊社は、現場の課題や価値から逆算して、論文から現場までのプロセスをデザインしています。

1. 研究・論文を取捨選択(場合によっては自ら論文化): 数多くあるAIの技術・論文から、産業で価値を生むアルゴリズムを選択し構造化する付加価値
2. モジュール化/パッケージ化: モジュール化/パッケージ化することで、再現性を持って、かつ高速に仮説検証を実現する付加価値
3. データ学習と仮説検証: 業界知見を取り込み、仮説検証を繰り返すことで人の知見を技術でソフトウェアで再現する付加価値
4. 導入・運用: 「知見」を現場の価値に落とし込み運用する付加価値

このプロセスを回せる・担えるAI研究者/エンジニアは、自身の専門性や技術を社会の価値に落とし込むことができ、人材価値も高いです。

特に、企業では、

A: issue drivenに考え、適切な問いを立てることができる
B: データに基づく実験が上手い/仮説検証が早い
C: 実装や実験が積み上がるような構造的なエンジニアリングができる
D: 必要とあらば、数学・エンジニアリングの知見を活用して、自らアルゴリズムを実装できる

スキルは、単純なAIの"知識"よりも重要だと思料しています。

4. ACESは、アカデミアの価値を事業価値に接続することを目指しています

日本の博士/アカデミアの現状は、なかなかにひどい状況ですよね。海外の博士は給料が出るのに、日本の博士は学費を払っています。博士/アカデミアの人材を事業価値に転換できる企業も少ないのが現状です。

ACESとしては、そうした博士/アカデミアの現状を変えていきたいと考えています。

私自身も、起業したのに博士課程で研究を続けているのも(実は今博士3年なんですが、もうすぐ予備審査です...!)、そういった想いがあるからです。
正直、起業して博士過程も続けるのは結構辛いですが、自分がそういったチャレンジを行い、そして仕組みを作っていくことが重要だと考えています。

また、博士過程の方が、研究を続けながら社会人として働ける仕組みも導入しています

社会人博士制度

ACESには、面白い「問い」がたくさんあるので、チャレンジしたい研究者・博士課程の方、そうでなくともAI技術が好きなエンジニアの方、一度お話ししませんか。

ACESは事業も伸びて非常に面白いフェーズで絶賛採用中ですので、是非!

▼特に募集中のポジション
自社開発AIソフトウェアの開発を担うフロントエンドエンジニア
商談のデジタル化を実現するプロダクトの自然言語処理/音声認識エンジニア
画像・映像認識アルゴリズムを用いたSaaSプロダクトをグロースさせるプロダクトマネージャー
最先端AI技術でリアル産業のDXを進める機械学習エンジニア・プロジェクトマネージャー
リアル産業現場をDX 経営戦略を立案するBizDev

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田村浩一郎@ACES
ACES,inc. CEO/東大松尾研究室修士/ 投資(日本株、仮想通貨)/サッカー(バルサ)/夢はポケモンマスター/ポーカー koichirotamura.com