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バリュエーション計画の妥当性を判断するには、何をしたらいいか?

こんばんは。
今日はWeb3から離れて、企業価値を表すバリュエーションの話をしようと思います。投資をしていると口頭で伝えられることも多いのですが、実は資本政策表というものによく記載されています。なので、まずは資本政策表の話から入り、バリュエーション額の判断の話に行こうと思います。目線としては、相変わらず事業を作る側のビジネスサイドの人間として記載していきます。

資本政策表ってなに?

投資の業務をしていると、資本政策表というものが頻繁に出てきます。これは簡単に言うと、企業がお金をどうやって集めて、どのように使うかを決める計画のことです。企業は事業を行うために資金が必要ですが、その資金は株式を発行して株主から集める方法(エクイティ調達)や、銀行からお金を借りる方法(デット調達)などがあります。資本政策表では、これらの方法をどのように組み合わせるか、つまりどれくらい株式で資金を調達し、どれくらい借入れをするかを決めます。

この計画には、お金を借りるときに発生する利息のコストや、株主に支払う配当なども考慮されますし、各資金調達ラウンドにおいてどのくらいのバリュエーションを目ざすかについても見ていくことになります。企業がこの計画をしっかりと立てることで、事業を安定的に運営しやすくなる重要なものです。

ですが、特に企業を作ったばかりで事業アイデアの組み立てているような段階だと、作った資本政策表が、果たして本当にこれでいいのだろうか?投資家はこれを見て不信感を抱かないか?と疑問を持ってしまいがちです。特にいくらで新株を募集する(新しく株を発行して投資家に販売する)のか、という点は投資家が最も気になる点であり、バリュエーションの妥当性の話に直結するポイントです。
妥当性を判断する際に、ある程度寄りかかれる考え方を持っていると便利なので、その考え方をご紹介します。

妥当性判断のための8つの主要ポイント

市場の動向と競合分析
スタートアップが活動する市場の成長性や競合他社との比較を行うことで、その市場における将来的なポテンシャルを評価します。

②事業計画と収益予測
事業計画とその実行能力を評価し、収益予測が現実的かどうかを見ます。特に、市場成長率、製品の差別化要因、顧客獲得コスト(CAC)、ライフタイムバリュー(LTV)などが重要です。

③過去の資金調達と使用状況
これまでの資金調達の歴史とそれによって達成された成果を確認し、資金の効率的な使用を評価します。

④チームと経営陣
創業者や経営陣の経験、能力、ビジョンが事業計画の実現可能性に大きく影響します。彼らの経歴や実績を確認し、信頼できるチームかどうかを判断します。

⑤製品開発の進捗状況
製品開発の段階と市場への適合性を確認し、製品が成功の可能性を秘めているかを評価します。

⑥リスク要因
法規制、技術的な障壁、市場の変動性など、潜在的なリスク要因を把握し、それらが事業に与える影響を考慮します。

⑦株式の希薄化
今後の調達で予想される株式の希薄化の度合いと、それが現在の株主に与える影響を理解します。

⑧投資家のリターン
投資家にとって十分なリターンが期待できるかどうかを評価します。これには、将来の出口戦略(M&A、IPOなど)の可能性も含まれます。

これらの観点が、調達ラウンドによって重要度の比重を変えて登場するイメージです。

調達ラウンド毎のポイント解説

■Angelラウンド:プロダクト開発に使う資金+人件費等の捻出

 ▼検討ポイント

  • 創業者や初期チームの経歴、業界知識、ビジョンがあり、チームとしてポテンシャルを感じるか △バリュエーションの加点減点要素

  •  市場に対する深い理解と革新的なアイデアが必要

  • 初期の製品コンセプトが市場に適合しているかどうか=明確なニーズがあり、法整備や税務などのルールの観点からも実現可能な状態にあるか

  • 初期顧客からのポジティブな反応や、初期のトラクション

  • 対象とする市場の大きさと成長性

  • 現在の市場環境や投資トレンド、同様のステージの他社との比較 ★このラウンドのバリュエーションのベースはココから考える

■シリーズA

 ▼検討ポイント

  • ビジネスモデルが市場で機能し始めているかどうか(PMFに向けてポジティブな状態=実用最小限のプロダクトで、カスタマーサーベイ、NPS、リテンションの改善を繰り返し、改善が見られ、PMFまでの道順がある程度つかめている状態)

  • 顧客基盤(アプリのMAU等)、売上のマルチプルによる算出で、他社バリュエーションと乖離がないか ★このラウンドのバリュエーションのベースはココから考える

  • 顧客基盤(アプリのMAU等)、売上、市場シェア、の成長率 △バリュエーションの加点減点要素

  • 競合と比較し競争力が発揮できているか

■シリーズBラウンド:PMFはできている状態

 ▼検討ポイント

  • 競合比較:マルチプル(売上、利益)による算出でバリュエーションに妥当性があるか ★このラウンドのバリュエーションのベースはココから考える

  • 事業をさらに拡大するための計画とポテンシャルがあるか △バリュエーションの加点減点要素

  • 安定した収益源と利益の見込み △バリュエーションの加点減点要素

  • 法規制、市場変動などのリスクが管理されているか

各ラウンド毎の検討ポイント・バリュエーションに必要な項目について記載しました。基本的には、「★このラウンドのバリュエーションのベースはココから考える」と付いている項目をベースにバリュエーションの値をおおよそ見積り、「△バリュエーションの加点減点要素」と付いている項目を検討してバリュエーションに加点減点を加える、という感じです。
しかし、実際に「バリュエーションは〇〇円である!」とバシッと算出されることなんて少なくともAフェーズまではなく、Bフェーズ以降で利益が出ている時でさえレンジで算出できるという程度です。なので、まずは①高い、②割高、③妥当、④割安、⑤安い、の5段階くらいの目利きができれば、あとはなんとかなると思います。

以上、ご参照くださいませ!


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