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魚になれた日

今生、はじめてダイビングをした。

わたしは泳げない。

正確にはバタ足しかできない。

意外にも

クラスのなかでバタ足を早く覚えた。

運動がからっきし苦手なわたしは

その優越感が格別だった。

しかし、その後はどんづまり。

バタフライも平泳ぎもままならないまま

おとなになった。

それでも、ダイビングはできた。

最初こそは身体が浮かびじたばたしていたが

すぐにゆったりと

海底を進めるようになった。

♪はじめて泳いだ海の底
とっても気持ちがいいもんだ

完全に「たい焼きくん」と化した。

わたしも毎日、鉄板で焼かれているような

ものなので

たい焼きくんの自由を思う存分感じた。

時折、海上に目をやると

シュノーケリングの方々の足が見えた。

人間はじたばたと

誠に大変なものであることよ。

このまま自由でゼリーのように透き通る

海の中に溶け込んでいけたら

しあわせに思う。

それは叶わず、陸に引き戻され

浦島太郎のように今までのつけを

払わされた。

とにかく寒い。

潮風は凶暴だ。

あんなに優雅に海を漂っていたのに、

一瞬で遭難者のような出で立ちとなった。

そんな痛い目もみたが、

暑がりなわたしの夏は楽しみになった。

とてもよろこびます!!