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セッション定番曲その124:You Don't Know What Love Is

ジャズセッションの定番曲。ジャズバラードの代表曲のひとつですが、どんなことを歌っているのでしょう?
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:John Coltrane Quartet

誰もが一度は聴いたことのある人気アルバム「Ballads」から。

私はこのアルバムを「ジャズファンではないけど音楽好きそうな人へのプレゼント」として重宝していました。過激さを抑えて丁寧に吹くJohn Coltraneのサックス、鉄壁のリズムセクション。リラックスしてBGMとして小音量で流しておいてもいいし、本気で大きな音で聴いてもいい傑作。

メロディが丁寧に演奏されているので、この曲を覚えるのに最適だと思います。

ポイント2:Chet Baker Sings

実はこのアルバムも「「ジャズファンではないけど音楽好きそうな人へのプレゼント」として重宝していました。細い優しい声で歌うChet Baker、どんなカッコいい男性なのかと思ったら(当時は)想像通りのハンサムボーイでした。

この歌い方に憧れてマネする人は多いですが、なかなか難しいです。やはりトランペット奏者としてのベースがあっての歌なので、ただ優しく歌うだけではジャズに聴こえません。

ポイント3:「あなたは恋がどんなものなのか全然分かっていない、お子ちゃま」

You don't know what love is

「恋とか愛」とか全然分かっていないね、あなたは・・・

Until you've learned the meaning of the blues
Until you've loved a love you had to lose

「悲恋」こそ本当の恋だと。それが分かっていないうちは「お子ちゃま」

ここの「meaning of the blues」はブルースという心の痛みを歌う音楽のことであり、心の痛みそのものでもあります。

You don't know how lips hurt
Until you've kissed and had to pay the cost
Until you've flipped your heart and you have lost
You don't know what love is

口づけした唇の痛みとか
本気で好きになった相手を失った悲しとか
それを知らないうちは、恋がどんなものなのか全然分かっていない

色々と経験した大人の立場から相手に助言しているようにも聞こえますが、ここでは「深く考えずに恋を軽々しく扱って相手を傷つけてしまう遊び人」の恋人を問い詰めているのかと思います。つまり心を痛めて泣いているのは歌っている当人。どれも直接言っているのではなく、相手のいない所でひっそりと、自分自身に言い聞かせるように歌っている。「ダメな相手との危険な恋」ほど燃えてしまいますからね。

ポイント4:歌のバリュエーション

Ella Fitzgerald、1941年録音
まだ声が若いエラ。表現が過剰じゃなくていい感じですね。ジャズバラードはサラッと歌うのが好きです。


Anita O'Day、1955年録音
執念深そうな歌い方、裏切ったら酷い目に遭いそうです。


Billie Holiday、1958年録音
晩年の歌唱、といってもまだ42歳くらいだったはず。
この人をお手本にして歌おうとして身を滅ぼした人もいるので要注意。



Bill Evans, Tony Bennett
、1977年録音
言葉を噛み締めるような歌い方。Tony Bennettはジャズっぽくはないけど、こういう風にポップスとして歌ってしまうのはアリだと思います。


Cassandra Wilson、1993年録音
「演劇的表現」だと思います。


Marvin Gaye、1961年録音
ジャズシンガー(クルーナー)にずっと憧れていたMarvin Gayeの美声。


Marilyn Scott, Frank McComb、2001年録音
スローファンクにアレンジされています。こういうのもアリ。


ポイント5:インストのバリュエーション

Eric Dolphy、1964年録音
最高の表現、ずっと聴き飽きないです。


Mal Waldron、1959年録音
こういう曲を女々しく弾かせると最高ですね。


Sonny Rollins、1956年録音「Saxophone Colossus」に収録
これもこの曲の代表的な演奏のひとつ、ジャズバラードの魅力が詰まっています。


Roy Hargrove、1991年録音
三拍子を強調したアレンジ。1990年代のジャズインストなんてマニア以外にはほとんど聴かれていなかったと思いますが、脈々と生き続けていました。少し音がキレイ過ぎるけど。


ポイント6:発音のポイント

ゆったりとしたバラードなので、一音一音丁寧に発音して歌いましょう。

love」という単語が何回も出てきますが、意外と発音が難しいので丁寧に。
https://www.youtube.com/watch?v=EiQQgAx5uzg

Until you've loved a love you had to lose

ここは「L」音が続けて出てくるので確実に発音しましょう。

Do you know how lost hearts fear
The thought of reminiscing

「reminisce」は「回想する」「思い出に浸る」という意味で、日本語の「懐かしい、懐かしむ*」に近い感じです。けっこうよく出てくる言葉なので、発音と一緒に覚えましょう。

*日本語を勉強した英語話者がよく「『懐かしい』にピッタリハマる英語の言葉は無いので、Natsukashii とつい使ってしまう」と言っていますが・・・

Until you've faced each dawn with sleepless eyes

「faced」の「d」は軽く発音します。
「dawn」は喉の奥を開けて。


◼️歌詞


You don't know what love is
Until you've learned the meaning of the blues
Until you've loved a love you had to lose
You don't know what love is

You don't know how lips hurt
Until you've kissed and had to pay the cost
Until you've flipped your heart and you have lost
You don't know what love is

Do you know how lost hearts fear
The thought of reminiscing
And how lips tasting of tears
Lose the taste for kissing

You don't know how hearts yearn
For love that cannot live yet never dies
Until you've faced each dawn with sleepless eyes
How could you know what love is



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