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環境問題とデザイン

みなさん、木のケーキ「Eatree Cake」や竹のガレット「Bamboo Galette」を食べたことはありますか?
今回はLIFULL Tableで販売しているこれらの商品のデザインコンセプトについてお話ししたいと思います。
持続可能な開発目標SDGsであったり、昨年末にはニューヨークの国連本部で地球温暖化を食い止めようと「気候行動サミット」が開催されましたが、「地球料理 Earth Cuisine」も環境問題に光を当てるプロジェクトです。
私はこのプロジェクトの立ち上げから全体統括・企画・クリエイティブディレクションをしています。

「地球料理 -Earth Cuisine-」とは

「地球料理 -Earth Cuisine-」のコンセプトは「持続可能な社会を叶える、LIFEを見つめ直す、一皿を。」です。
食べることが地球のためになる、地球の新たな食材を見つけるプロジェクトで、社会課題や環境問題を引き起こすマテリアルを「美味しく食べる」という新たな用途開発が出来れば、持続可能な社会が叶えられるのではないかと考えました。
そして、多くの人にとって最も身近である「食の美味しさ」を通して、自然環境を見つめ直す。さらには自身の暮らしや人生を見つめ直すきっかけになればいい。そうすれば地球環境も含めた、あらゆるステークホルダーを幸せにできるのではないかと思っています。

第1弾: 木を食べる

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第一弾は、「間伐材問題」に光を当てました。
日本の国土の2/3が森林で、そのうちの約4割が工業用の人工林です。 その人工林は現在、海外からの安価な木材の輸入や林業生産者の減少が理由で、定期的なメンテナンスである間伐されずに森林環境の衰退を進行させています。
間伐材を「食べる」という新たな用途を開発し、持続的な間伐を続けるためのエコシステムを、林業・シェフ・研究者など業種を超えた協業によって実現しました。プロジェクトを一緒に始めたデザイナーに"木が50%入っているパン"(通称:森のパン屋さん)を自宅で焼いてきてもらうところから検証を始め、その後料理研究家と共に木の食材としての可能性の研究開発を重ねました。
この検証結果をベースに、企画に賛同し「木を食べる」という難題に挑んでくれたシェフは、田村浩二さん。

2018年10月10日、一夜限りのレストラン「Eatree Plates」(東京・奥多摩町の森林)オープン。「五感で感じる森林浴」というコース名で、間伐材が見た目・香り・味、すべての感覚で伝わるようなフルコースをシェフとともに開発しました。また会場となる奥多摩の間伐林の開墾やスペースデザインは、LIFULLのデザイナー総出で行いました(プロジェクトの担当アートディレクターが三日三晩、開墾をし続けてツナギ姿でゲッソリしてたのが忘れられません)。

2019年3月20日、間伐材をより簡単に手にとっていただくために、成分の約20%が間伐材で作られたパウンドケーキ「Eatree Cake 〜木から生まれたケーキ〜」を発売を開始しました。
Eatree Cakeについては、友人の幹太さんにも食べた感想を書いていただいてます。
またこのプロジェクトは、アジア太平洋地域最大級のクリエイティブフェスティバル「Spikes Asia 2019」デザイン部門でのシルバー・ブロンズなど国内外でアワードを受賞することが出来ました。受賞はあくまで通過点ですが、LIFULLに入社しインハウスのクリエイティブ組織をゼロから立ち上げて、その組織に所属するメンバーが中心となって生み出した仕事がアジアで評価されたのは、とても嬉しかったです。

第2弾: 竹を食べる

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第二弾のテーマは「竹害」に光を当てました。
竹に選定した背景としては、昨今の竹材をとりまく環境として、需要の低下、生産者の高齢化・後継者不足等により、各地で管理されない「放置竹林」が増加し、国内の竹林面積は昭和61年以降拡大し続け、現在は約16万ヘクタールに広がっています。成長が早く、繁殖が早い竹を放置すると、周りの動植物の生態系への悪影響や、根を地表から30センチほどの浅い場所に張ることから、雨の際等には地滑り等の竹害を引き起こす可能性があり、今後さらなる社会問題に繋がる可能性があります。

2019年9月24日、東京都現代美術館にて「BAMBOO SWEETS -竹害から生まれた和菓子-」を発表しました。「竹を食べる」という難題に挑んでくれたのは、薬師神 陸さんと坂本 紫穗さん。

2020年2月20日、薬師神さんに共に、竹と笹を24%使用したガレット「Bamboo Galette」を開発し、発売を開始しました。竹の粒子は素材として存在感があるので、香ばしく炒り、上質なバターと一緒にホロホロサクサクのガレットにする事で、竹の風味が香る口溶けの良いお菓子なりました。また、馴染みのある柚子の香りと、甘すぎないようアクセントに振った笹塩もポイントです。
現在、いくつかの会社からコラボレーションの依頼もいただいており、竹を食べることが食文化になるように引き続き活動を続けていきたいと思っています。ぜひお気軽にお声がけください。

持続可能な社会を叶えるために、デザインにできること

ブランドとは、人格を持った生き物のような存在で、人の脳ではなく心や意識の中に記憶として蓄積されていくものだと思います。また近い将来「ブランドが自分をWell-Beingにしてくれるかどうか」という視点で、生活者は企業に投票するように、製品を手に取る時代がくると思います。
デザインの力を信じ、一貫性あるブランド戦略・プロダクト開発・ストーリーテリングを通して、環境問題の解決に取り組む。そうすることで、あらゆるステークホルダーが幸せになる。そんなアクションを引き続きやっていきたいと思っています。

最後になりますが、このプロジェクトに賛同しプロフェッショナルとして仕事を共にした社内外チームメンバーに感謝したいと思います。
そして、Earth Cuisine第3弾の研究開発も進めているので、こちらもぜひお楽しみに。


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