石田 康平

研究者/デザイナー。未来の建築やVR、MRなどが中心。東大建築学専攻長賞、新建築コンペ…

石田 康平

研究者/デザイナー。未来の建築やVR、MRなどが中心。東大建築学専攻長賞、新建築コンペ最優秀賞ほか。クマ財団2期クリエイター(1800人以上→50人)。トヨタドワンゴ高度AI人材認定。DC2。ex Takramインターン。思考のまとまりをnoteで。

マガジン

  • 2023年3月に「夢における空間論」を書き上げるまで

    旧「2023年3月に博士論文を書き上げるまで」。博士論文を書き上げるまでの日々を綴っていました。今は延長戦中です。月に1回フランクな研究報告書がとどきます。どうVR×建築の研究がまとまっていくのか。研究のテーマや進捗などがメインです。

  • 「今月のよかった本リスト」まとめ

    毎月、読んだ本から5冊を選んでおすすめしているシリーズのまとめです。いろんな本を知りたい方はぜひ。

  • 人気noteリスト

    はじめての方にぜひ読んでいただきたい主要なnoteをまとめています。

記事一覧

固定された記事

受賞論考の全文公開〜夢の中で暮らすことから始まる都市の公共性のこれから

この論考は、僕が2021年5月から7月にかけて書き上げたものだ。 「新建築論考コンペティション」というコンペが開催されることを知り、それに参加するために執筆した。 結…

石田 康平
2年前
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研究日記2024年3月の報告書

今月は異様にのんびりしていた。ほとんど大人の夏休みだった。モラトリアム。もちろん仕事もしていたけれど、それよりも膨大に本を読み、展覧会を訪れ、いくつかの文章を書…

石田 康平
2週間前
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イイ感じの本は読みたいけど難しすぎるのはご勘弁!というあなたに向けたおすすめ本リスト

「イイ感じの本は読みたいけれど、難解な本はちょっと無理です!」というあなたに向けたブックリストです。 本棚に並んでるとなんか豊かで、ふと思い立った時に読みたくな…

石田 康平
1か月前
53

研究日記2024年2月の報告書

1. 東京都現代美術館での展覧会、大詰め現在、自作を3作品展示中の東京都現代美術館にて、2月23日、2月24日にギャラリーツアーを実施した。23日に1回、24日に2回実施し、各…

石田 康平
1か月前
8

研究日記2024年1月の報告書。

12月からコンペに取り組んでいるものの、うまくまとまらずにパニック気味。考えた内容やアイディアは沢山あってもプレゼンとしてうまくまとめられない。難しい。パニック気…

石田 康平
2か月前
9

研究日記12月の報告書

1. MOTでの展覧会東京都現代美術館の企画展「アニュアル展extra」にて、新作2つを含む3作品を出展している。 ひとつは博士論文をまとめ直した『歴史におけるVR的なもの』…

石田 康平
3か月前
6

研究日記11月の報告書

銭湯のすばらしさ。 銭湯にここ2ヶ月ほど通うようになったのだが、今までのどんなものより、快眠とストレス低減と自律神経の調整に効果がある感じがする。 最近、睡眠時…

石田 康平
4か月前
8

研究日記10月の報告書

10月29日に誕生日を迎え、29歳になった。ほとんど仕事もないままに29歳となるとは思わなかった。フラフラしているといろんなプロジェクトによんではもらえる。しっかりした…

石田 康平
5か月前
8

研究日記8, 9月の報告書

7月末に仕事を辞めてから、なんだかずっと暑いような気がする。7月、8月、9月と長らく猛々しい夏の中にいる。思えば去年の今頃は「能面をつけて8人が暮らす集合住宅」のた…

石田 康平
6か月前
9

「君たちは、どう生きるか」の問いを読む。

『君たちはどう生きるか』は1937年に『日本少国民文庫』の全16巻のうちの1冊として出版された。吉野源三郎の著作ではあるが、実は企画者と当初執筆する予定だった人間は吉…

石田 康平
8か月前
24

研究日記6, 7月の報告書

ずいぶん書くのが遅くなった。6月はほとんど何も書けなかった。沈んでいたと思う。6月の中旬に東大の退職を決めて、7月の初旬からヨーロッパに2週間ほど行き、7月末に退職…

石田 康平
8か月前
11

闘争と一瞬の花火としてのパリコレ〜ゲストとしての鑑賞とお手伝い

パリコレは一瞬の花火のような時間だった。 ブランドは半年ほど全身全霊で準備し、現場に入ってからも膨大な人がフランス語や英語や日本語を行き通わせながら準備する。設…

石田 康平
9か月前
8

研究日記2023年5月の報告書

1. Podcast「だれかとどこか」のアップロード4月から東大の助教2人でひたすら議論するPodcastチャンネルを始めた。今月も無事に週ごとに4本の動画と音声をアップできた。1…

石田 康平
10か月前
10

研究日記2023年4月の報告書

少し前のnoteでこのマガジンは「2023年3月に博士論文に書き上げるまで」の延長戦として、「2024年3月に夢についての原稿を書き上げるまで」として継続することを決めた。少…

石田 康平
10か月前
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2024年3月まで「夢における空間論」延長戦のお知らせ

4月はあまりに多くのことがゆきすぎて、異様に長かった。身体の代謝が高いと時間がゆったり流れるという話を小耳に挟む。4月の時間が流れ始めるにつれて、この3月までの時…

石田 康平
11か月前
6

椎名林檎『罪と罰』は「幽霊」の曲である。

このnoteでは、椎名林檎さんの名曲である「罪と罰」の歌詞を読み解いてみたい。いわずと知れた名曲であり、最近ではAdoさんにカバーされたりもしている。あの退廃的な曲の…

石田 康平
11か月前
21
固定された記事

受賞論考の全文公開〜夢の中で暮らすことから始まる都市の公共性のこれから

この論考は、僕が2021年5月から7月にかけて書き上げたものだ。 「新建築論考コンペティション」というコンペが開催されることを知り、それに参加するために執筆した。 結果としては1等(最優秀作品)に選ばれ、『新建築』という雑誌の2021年10月号で巻頭論文を飾ることとなった。 このnoteでは、その論考の全文を公開している。 コンペのテーマと審査員論考は、論文よりもゆるく、エッセイよりも硬い文章のイメージである。 自分の主観も込めながら、ある程度論理性のあることをしっ

研究日記2024年3月の報告書

今月は異様にのんびりしていた。ほとんど大人の夏休みだった。モラトリアム。もちろん仕事もしていたけれど、それよりも膨大に本を読み、展覧会を訪れ、いくつかの文章を書いた。たくさん読み、なにかを書いてみるほどに、自分が何を考えようとしているのかよく分からなくなった。たくさん考えたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。時間は溶けた気もするし、長かったような気もする。一人になると、時間感覚はバグって長短のコントラストが異様にくっきりとして記憶が朧げになる。 そういう1

イイ感じの本は読みたいけど難しすぎるのはご勘弁!というあなたに向けたおすすめ本リスト

「イイ感じの本は読みたいけれど、難解な本はちょっと無理です!」というあなたに向けたブックリストです。 本棚に並んでるとなんか豊かで、ふと思い立った時に読みたくなるような本。読んだあとに、ちょっと賢くなった気になれる本。 そういうのを集めました。 4冊に絞りました。10冊も20冊もあっても、解説も大変だから。 じゃ、はじめます。 1. 日本の色辞典(紫紅社, 2000年)染色家の吉岡幸雄さんによる、日本の色の辞典。 服を買いに行ったり、雑貨をみたりするとき、「あ、こ

研究日記2024年2月の報告書

1. 東京都現代美術館での展覧会、大詰め現在、自作を3作品展示中の東京都現代美術館にて、2月23日、2月24日にギャラリーツアーを実施した。23日に1回、24日に2回実施し、各回ともに20人から30人の方が参加してくださったようだった。 3月2日にも1回、3月3日にも1回ギャラリーツアーを実施する。Virtual Renovationのデモも、特段トラブルがなければ、この機会にのみ体感してもらえる。 日時|①3月2日(土)16:00~ ②3月3日(日)17:00~ 各回1

研究日記2024年1月の報告書。

12月からコンペに取り組んでいるものの、うまくまとまらずにパニック気味。考えた内容やアイディアは沢山あってもプレゼンとしてうまくまとめられない。難しい。パニック気味な月末。 ツイートで自分を奮い立たせてみたが悪手だったかもしれん。 新建築の巻頭論考の執筆新建築の原稿を急に書くことになって、10日ほどで書き上げて一週間ほど細かくやり取りして校了した。内容は、博士論文で考えたことをまとめた。期間こそ短かったものの大変貴重な機会でありがたい限りだと思った。 そういえば、このn

研究日記12月の報告書

1. MOTでの展覧会東京都現代美術館の企画展「アニュアル展extra」にて、新作2つを含む3作品を出展している。 ひとつは博士論文をまとめ直した『歴史におけるVR的なもの』、2つ目は2019年のMR時代の都市構想『Virtual Renovation』(デモは新しく作り直した)、3つ目は新作のコンセプト『Off-Real』の展示である。 このnoteマガジンは「夢」についての原稿を今年度末までに書き上げることを目標としてきたが、美術館の展示という形で期せずして一つの段

研究日記11月の報告書

銭湯のすばらしさ。 銭湯にここ2ヶ月ほど通うようになったのだが、今までのどんなものより、快眠とストレス低減と自律神経の調整に効果がある感じがする。 最近、睡眠時間3-4時間でずっと1,2週間過ごしていて、いつもなら吐き気を催したりえづきまくったりするのだが、今回は全然そうならなかった。これも多分銭湯のおかげと思う。前までは、寝付けずストレスに感じることも多かったのだが、銭湯に行った日は間違いなくずっと深く眠れる。おすすめである。 温泉とかと比べて銭湯はやたらと温度が高い

研究日記10月の報告書

10月29日に誕生日を迎え、29歳になった。ほとんど仕事もないままに29歳となるとは思わなかった。フラフラしているといろんなプロジェクトによんではもらえる。しっかりしたものもあるしとてもいい加減なものもある。ほとんどはいい加減なものである。 お金も払わずに働かされることが多くて、さすがに疲弊してきた。不安定であることは特に気にならないし、まあいい加減であることも良いのだが、不安定は自分のためにあるときには贅沢でもあるけれど、時間を取られ二束三文に利用されしかし先が見えないと

研究日記8, 9月の報告書

7月末に仕事を辞めてから、なんだかずっと暑いような気がする。7月、8月、9月と長らく猛々しい夏の中にいる。思えば去年の今頃は「能面をつけて8人が暮らす集合住宅」のために、敷地とした三鷹の森に通っていた頃だった。汗をしっかりかいたあとのビールが美味かった。今年はまだ禁酒令の中にいる。酒を飲まない生活は、時間が長くてとても良いと思う。 8月中旬ごろ、仕事を辞めてからだらだらと過ごしすぎている気がして、3つの目標を立てた。第一に、酒をしばらく断つこと。第二に、毎日運動すること。第

「君たちは、どう生きるか」の問いを読む。

『君たちはどう生きるか』は1937年に『日本少国民文庫』の全16巻のうちの1冊として出版された。吉野源三郎の著作ではあるが、実は企画者と当初執筆する予定だった人間は吉野ではない。山本有三という小説家である。小説自体は、主人公のコペル君が学校を中心とした様々な経験と叔父さんとの対話によって学びと気づきを得ていく物語となっている。 1937年前後、当時の日本では軍国主義の勃興により言論や出版の自由は弾圧され、人々の自由な発言や執筆は困難となっていた。『日本少国民文庫』を編纂した

研究日記6, 7月の報告書

ずいぶん書くのが遅くなった。6月はほとんど何も書けなかった。沈んでいたと思う。6月の中旬に東大の退職を決めて、7月の初旬からヨーロッパに2週間ほど行き、7月末に退職した。 退職のことについてどのように書けばよいのかいささか迷った。 書いて吐き出してしまいたい気持ちと、隠すべき経歴としてなかったことにした方が賢いのではないかという気持ちとの間でゆれた。ただ自分のメモとして言葉を書いてみても何か胸のつかえがとれなかった。抱えているものというのはそういうものだろうか。自分の情け

闘争と一瞬の花火としてのパリコレ〜ゲストとしての鑑賞とお手伝い

パリコレは一瞬の花火のような時間だった。 ブランドは半年ほど全身全霊で準備し、現場に入ってからも膨大な人がフランス語や英語や日本語を行き通わせながら準備する。設営はそのようにしてたくさんの人が、それぞれの持つ時間を溶け合わせるようにして進む。 ショー自体はたった10分か15分かそこらで終わってしまう。あまりに早く短く、しかし濃い。その前後の時間を体験できたのはとても幸運なことだった。このnoteでは、パリコレの体験とその前後について書く。 主にファッションを学ぶ人やもの

研究日記2023年5月の報告書

1. Podcast「だれかとどこか」のアップロード4月から東大の助教2人でひたすら議論するPodcastチャンネルを始めた。今月も無事に週ごとに4本の動画と音声をアップできた。1週か2週に一度くらいVRや能や夢について自由に議論する時間は、それ自体以上に、あとから見返す機会が貴重なものとなっている。自分が何を話していたのか、話していた時の記憶と記録は、まるで結びつかない。自分も自分の話から想像を深める。まるで刺激をそこに保存しておいておくような感覚がある。 編集は時間がか

研究日記2023年4月の報告書

少し前のnoteでこのマガジンは「2023年3月に博士論文に書き上げるまで」の延長戦として、「2024年3月に夢についての原稿を書き上げるまで」として継続することを決めた。少し遅くなってしまったけれど、長かった4月の間のことについて少し書いておきたい。 大学のことはじめこの4月より、東京大学大学院で特任助教に着任した。

2024年3月まで「夢における空間論」延長戦のお知らせ

4月はあまりに多くのことがゆきすぎて、異様に長かった。身体の代謝が高いと時間がゆったり流れるという話を小耳に挟む。4月の時間が流れ始めるにつれて、この3月までの時間は止まっていたのではないかと思う。 5月の時間は、再び速く流れている。気がつくとひとつきが終わりに近づいている。 この2ヶ月ほどずっと悩んでいた。博士3年間の振り返りをしてみようと思ったのだが、どうにもうまくいかなかった。 今振り返ると、特に忙しくはなかった気がする。16平米ほどの狭い部屋で3年を過ごした。ひ

椎名林檎『罪と罰』は「幽霊」の曲である。

このnoteでは、椎名林檎さんの名曲である「罪と罰」の歌詞を読み解いてみたい。いわずと知れた名曲であり、最近ではAdoさんにカバーされたりもしている。あの退廃的な曲の独自性は一体どこからやってきているのか。 僕の解釈によれば、あの曲は街を漂う幽霊の歌である。おそらくは不倫などの道ならぬ恋の果てに事故死した女性の地縛霊の、悲痛な叫びである。不倫の罪悪感が、あの曲に退廃感を与えているのではない。不倫という罪による罰の中にいる、死者の無限の苦しみが、あの曲を退廃的なものとしている