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襲名。

「○○さん、お願いがあるんですけど。僕に名前をつけて欲しいんです。」

ことの発端はこのメッセージからだった。送り先は僕が会社で最も敬愛する先輩だった。この人に出会えたというだけで、僕は今の会社に入った価値があったと言ってもいい。

僕は一目見たときから、この人はヤバいと思っていた。幸運なことに仲良くしていただいて、映画を見に行ったり、フェスに行かせてもらったり、何かとお世話になっている。事実、ヤバかった。

そんな先輩は今、絶賛育児休業中である。男性育休界のパイオニアであり、会社の育休実績1に貢献する英雄的存在なのだ。

自分で文章を書いときながら、もはや、男性が育児休業という表現があまりにも現代の流れから乖離していると思っているが、構成上使わせていただいた。育休に男性だから、女性だから、ということはない。そんな社会になればいい。

さて、育休のお話はミヤネさんかオグラさんかクローズアップ現代とかにやっといてもらって、名前の話に戻る。

先輩は僕の名前を発表するのに、わざわざパワポでスライドを作ってきてくれた。若干の心のざわめきと愛を感じずにはいられなかった。

雨が降る吉祥寺、ビニールカーテンで覆われただけの寒い居酒屋で見させてもらった。

先輩は名前を創造するために、あらゆる手法を使っていた。

僕のパーソナリティから、これまでの生き方まで、前提にある情報を深堀りし、再構築しながら僕に合いそうな名前の候補を出していくという、イケイケコンサルティング会社のようなフレームワークや、
僕を連想させる言葉を羅列し、その言葉たちを拡張させ具体化してから、再度ぎゅっと抽象化させるというなんとも高度なのか、もはや判断がつかない手法まで。

何より面白かったのは、僕のイメージをぎゅっと凝縮させたら「ちんちん」という言葉で形容されていたことだ。笑

僕の今までの人生は要は「ちんちん」という言葉で片付けられてしまう。たしかに、ちんちんありきの人生だった。
そんな人生もアリじゃないか。

結局、たくさんの候補の中から、選ばせていただいたのは、

「T太郎」と「握り酢師(にぎりずし)」という名前だった。

T太郎は単純にイニシャルを組み合わせただけだが、語呂が良く使い勝手がいい。そして実は先輩自身も〜太郎を名乗っており、弟弟子感が嬉しい。

ティー太郎、ティータロウ、てぃーたろう、うん、カタカナも良い気がする。ニューシャネル的なTシャツを作りたい。

問題は握り酢師(にぎりずし)だ。正直、この名前になった意図を聞いたが、クリエイティブジャンプしすぎていて意味がわからなかった。先輩曰く、寿司を握るんじゃなくて、酢を握るという職業?スタイル?を確立した、その道の人ということらしい。字に起こすと大して面白くないが、聞いた時はこの人は頭がおかしいと思って、笑いが止まらなかった。先輩は力説しながら、酢を握る動作を必死にしていた。

僕はその時、確かに握りしめた拳から溢れ出てくる酢が見えた。

これで決まりだ、僕は握り酢師なのだ。酢を握り続ける師なのだ。

とりあえず、ゆったりとこの愛くるしい名前たちと向き合ってゆこうと思う。今は、まだ慣れないが、アレルギー反応が出るか出ないか、見ているところである。来年の年末あたりに、この名前たちの正解が出るのではないか、そんな気がする。本当は一つに絞ろうかなと思っているが当分は併記の形で。

本当に先輩には感謝である。謝謝。

この誰のためでもない文章に陳謝。

メリークリスマス

#日記 #コラム #エッセイ #ニックネーム

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