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勝者を見極める!環境意識の向上とアジアの投資機会

近年、環境意識が世界的に高まっていますが、投資の世界でも同様に変化が起きています。
その1つが消費者の意識変化による企業行動の変化であり、業績に与える影響でもあります。アジアもその例外ではありません。

以前は経済成長のためにはある程度の環境破壊はやむを得ない、という認識を持っていた人もいたかと思われますが、今後のアジアは「持続可能な社会を目指しつつ、高い成長を遂げる」という両輪で回っていくと期待されています。

このような変化の中、多くの投資家は新しい投資機会を探し求めるため、新興企業に目を向けます。一方で、私たちは業界の地殻変動を正しく理解して、冷静にリスク・リターンのバランスを見極めることが大切だと考えます。今回は、2つの業界の例を用いて、環境意識の変化に対しての私たちのアプローチについてお話ししたいと思います。

環境意識の変化における投資機会とリスク・リターンのバランス


環境意識の変化による企業行動、ひいては業界の変化は、様々な分野で急激に起きていることが目にとれます。

例えば、自動車業界では自動運転技術の進歩や電気自動車(EV)の登場により、業界で大きな地殻変動が起きていると言っても過言ではないでしょう。
新たな技術とともに新規参入者が増え、多様なブランドが確立されることは、購入の選択肢を広げることになるため消費者目線からも歓迎されると思います。ガソリン車を運転したことはないが、電気自動車を保有しているという消費者が今後出てくることは容易に想像がつきます。

また、昨今の状況を観察すると、電気自動車の製造に際し、ガソリン車製造の経験が必ずしも必要ではないことがわかります。
一方で、いわゆるハイブリッド車の製造には、ガソリン車製造の経験が重要な鍵になりそうですが、上記のような消費者がハイブリッド車を好むか否かは、まだわかりません。

このような事情から、多くの投資家は新しい投資機会を探し求めるため、新興企業に目を向けます。自動車の例でいえば、テスラ等EV車メーカーが最たる例です。当然、こういった新興企業への投資に関しては、相応に大きなリスクが伴うと考えられます。
一方でガソリン車に関する知見を持ち合わせる企業への、投資家の評価は低くなっています。もしかすると、そういった企業はEV化によって得られるものよりも失うものが大きい、と投資家は考えているかもしれません。

従って、業界の地殻変動を正しく理解し、投資機会を把握し、リスク・リターンのバランスを見極めることが大切だと考えます。これはどの業界でも同じことです。

進むPET分野のリサイクル

このような中、私たちがアジアにおいて、業界の地殻変動がおきているものとして注目している分野のひとつはPET(ペットボトルなどの材料となる)分野でのリサイクルです。電気自動車ほど注目はされていませんが、持続可能な社会・地球のために私たちができることの1つがリサイクルです。

現に、欧州ではその意識が急速に高まっており、飲料などで使われるPETボトルのうち、2025年までに25%はリサイクルから作られる材料が含まれるようにする、というEU全域での目標が掲げられています。そのため、デポジット制度(当初購入時にあらかじめ多めの金額を支払い、ボトルをリサイクル向けに返戻したときに、その金額が戻ってくる)を導入し、ボトル回収率を同年に77%まで高めようとするなど、具体的な施策も出てきています。

私たちは、この目標を達成するために欠かせない、ボトル原料のサプライヤーに注目しています。コカ・コーラやペプシコなど飲料大手は上記目標達成のためへのコミットメントを表明しており、そのためには多少の投資も厭わないというのがポイントです。
さらには、飲料大手のリサイクルへのコミットメントはEU域内だけにとどまらない状況になっています。地球の裏側のアジアではリサイクルを全く進めないというのは、グローバル企業として取ることができない選択肢であり、むしろ、経済成長を持続可能なやり方で企業経営を進めなくてはなりません。
このような理由から、ボトル原料のサプライヤーにとってアジアは非常に面白い地域となります。欧州と比べて人口も多く、PETボトル需要の成長率がそもそも高いうえに、リサイクル由来原料の需要増加幅は欧州よりも大きいでしょう。

より勝者を選びやすい?

そして、サプライヤーの中でも、飲料大手向けにグローバルで原料を供給できる会社への集約が進む可能性があります。
EUのリサイクル目標を思い出してみましょう。原料の25%をリサイクル由来とする目標であり、100%リサイクル由来とするには未だ遠い数字です。現実的には、ボトルの回収がなかなか進まず、回収したのちも粉砕、洗浄、化学反応もしくは物理的再生を用いて、原料となるPETフレークが製造されるという工程を踏んでいるため、リサイクル由来の原料をすぐに増やすことはできません。

したがって、飲料大手は従来型の石油由来のPET原料とリサイクル由来のPET原料の両方をしばらく使い続けることになります。自動車で言えばハイブリッド車のような状況ですが、消費者と異なり飲料大手には100%EV化が達成されるまで購買を待つという選択肢はなく、世界中でボトル入り飲料を売り続けなければなりません。
そうなると、ハイブリット車の製造にはガソリン車製造の経験が鍵を握るように、既存の石油由来PET原料のサプライヤーがリサイクル原料を供給できる体制になる、というのが自然の摂理であると思われます。
リサイクル由来品の供給は十分ではないため、おのずと大手サプライヤーに有利な状況になり、その勝者がアジアの数量成長の恩恵を受けることができる、という仕組みです。

現時点ではリサイクル由来のPET原料の価格は、安定しているものの従来型の石油由来品と比べて高額です。サプライヤーの視点で見れば、顧客の新しい要望に応えることにより新たなビジネスチャンスを獲得できるとともに、リサイクル由来品は価格が安定していることから、企業業績の安定性も増すことができます。

ちなみに、PETボトル自体がなくなってしまうのではないか、と懸念を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
その可能性を完全に否定することはできませんが、製造工程でのCO2排出はアルミ缶やガラス瓶と比較して、石油由来であってもPETボトルは大幅に少ないと言われており、リサイクルが進めば排出量はさらに低減されます。PETボトルが持つ、軽さや透明性、また十分な安全性や強度を加味すれば、少なくともボトル向けの材料としては一番優れているのではないでしょうか。
(注:最近紙化がすすんでいるストローなどで使われるプラスチックとPETは異なる素材のため、用途やリサイクル法も異なり別物です)

さいごに

PET分野のリサイクル。電気自動車や自動運転のような、誰もがワクワクするような話ではないかもしれませんが、投資という観点においてはリスク・リターンのバランスが重要なポイントとなります。
ワクワクする業界でも、敗者に投資してしまえば、お金はすぐになくなってしまいます。

ワクワクは横に置き、より勝者を見極めやすい分野で、しっかりと投資機会を見つけてまいりたいと思います。


※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。

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スパークス・アセット・マネジメントのアジア成長株投資戦略のファンドマネージャーです。