見出し画像

「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」 - アジアにおける長期投資の機会をどう捉えるか?

みなさん、こんにちは。スパークス・アセット・マネジメント、アジア株投資チームの松井宏平です。

私たちは世界中の投資家とお話する機会がありますが、日本はもちろん、アメリカなどその他先進国でも経済成長の速度が鈍化していることへの危機感を強く感じます。
そんな中、アジア地域のこれからの成長性にますます注目が集まってきています。

そこで今回は、歴史的な視点を持って、今後のアジアの成長見通しをお伝えしたいと思います。
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」です。

第二次世界大戦後のアジアの成長の経緯を今日まで振り返って、一緒にアジアの将来について考えてみましょう!

日本を振り返る

1960年に戻ってみると、日本の一人当たりGDPは、約500ドルであり、アメリカの3,000ドルよりもはるかに小さかったのです。第二次世界大戦後、日本は急速にインフラを再建し、力強い経済成長を遂げました。いわゆる「東洋の奇跡」です。

ご存知のように、1950年、朝鮮戦争が始まり、日本は米国の同盟国として大量の戦争関連の発注を受け、戦争特需が発生しました。
それにもかかわらず、日本は依然として貿易赤字を抱えており、海外からの資金への依存を減らすため、輸出主導型の成長モデルを達成することを目標としました。

貿易に焦点を当てたことにより、日本の輸出額は1960年から1970年までに約5倍に増加しました。

これは、当時の日本の起業家精神と、一人当たりGDPの差で示されるような、先進国に対する労働コスト面での優位性が有効に働いた(人件費が安かった)結果であると私たちは考えています。

中国の台頭

そして次に中国が続きます。これまでの中国の歩みを見ると、日本とよく似ています。

中国の輸出は1980年代前後に勢いを増し、1990年代には人件費の安さを利用して加速しました。(1990年の日米の一人当たりGDPは20,000ドルを超えていましたが、中国は300ドル程度でした。)

中国の国際貿易における驚異的な成功は、少なくとも2010年まで30年以上続いており、その間、中国の輸出額は10年ごとに5倍に急増。つまり、20年で25倍、30年で125倍(!)になっているのです。

しかし、中国は将来にわたって成長を維持し、製造業におけるリーダーシップ(世界の工場という立場)を維持することはできるのでしょうか。
私たちは、化学産業のように、確固たるサプライチェーンを必要とする産業には、まだそれが当てはまると思います。
一方で繊維のような比較的付加価値の低い産業については、日本企業だけでなく、すでに中国企業も中国以外で工場を建設しています。

また、半導体やロボットなどの高付加価値製造業については、中国は世界中の人材を呼び込み急速にその技術力を伸ばしています。最近では、中国企業がグローバル企業からシェアを奪っているという話がよく聞かれています。

こうした高付加価値分野でのシェアの移動は、グローバル投資家にとっても本当に重要な、考慮すべき要素です。
なぜならば一般的に高い成長率と高い利益率を誇る中国において、外国の同業他社が市場シェアを失いつつあることを意味するためです。よって、中国の高付加価値産業には高い成長余地があると考えています。

中国について別な観点からもう一つお話しましょう。

先進国市場では過去数十年の間、富の創出の大半はノウハウ、研究開発、ソフトウェアなどの無形資産を活用する少数の企業からもたらされました。中国も同じ道を歩んでいます。
2000年には、一般的な中国市場指数の構成銘柄のほとんどが銀行か不動産でしたが、現在では、インターネット、ヘルスケア、消費者ブランド・サービス、無形資産の活用などの分野で事業を展開している企業が入るようになりました。
したがって、過去数十年間に経験した米国市場のように、市場全体をリードするであろう後者の企業は非常に魅力的な投資先になると思います。

他のアジア諸国にも投資すべき?

このように、昨今多くのグローバル投資家が、その市場規模と成長可能性を考慮して、中国での投資機会に注目していますが、私たちは歴史的な視点を持っていれば当然他のアジア諸国にも投資すべきと考えます。

インドをはじめとする東南アジアの途上国の中には、中国と自国との間の人件費格差の拡大もあって、輸出の伸びを加速させようとしている国もあります。

例えば、インドは中国と並んで人口が多いですが、輸出額の絶対額はまだ中国の8分の1程度です。
また、人件費を代替する指標として一人当たりGDPを用いると、昨年、中国の一人当たりGDPが1万ドルの大台を突破した一方、インドのGDPはまだ約2000ドルにとどまっています。これは労働集約的な製造業を中国からこれらの国に移転させるインセンティブを企業に与えるのに十分なほど大きな差であると考えられます。

強力な輸出志向型経済へ

アジアにおける製造業の立地を考える際の重要な要素は、政治リスクです。文化革命後の1970年代後半、中国は複数の改革と開放経済政策を導入しました。この方針は外資系企業が中国に参入することに安心感を与えました。

当時、東南アジアはベトナム戦争などによる政治的混乱が続く状態でした。しかし、今日、同地域の政治情勢はこれまでよりもはるかに安定しており、貿易黒字や赤字縮小による潤沢な外貨準備と相まって、同地域の経済はより堅調に推移すると私たちは予想しています。

外資への依存は、インドやインドネシアなどのアジアの新興国の主要な弱点でしたが、これらの国が強力な輸出志向型の経済基盤をうまく構築できれば、大きな変革をもたらすでしょう。

政治が安定した今、私たちの見解では、投資家は新興アジアを注視すべきです。昔の日本でもあったそのような変化の受益者、そう、銀行などが面白そうですよね。

まとめ

・中国も第二次世界大戦後の日本のように、人件費の安さを武器に、輸出額を伸ばし発展してきた。
⇒世界の工場としての発展は終わり、高付加価値製造業に注目する段階に変化。
・インド等東南アジア諸国は、NEXT中国。中国の代わりに世界の工場となる。
・東南アジア諸国の政治はこれまでよりも安定、これからは銀行等のインフラ業に注目。

冒頭に「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」といいましたが、マネジメントの父ともいわれるピーター・F・ドラッカーさんの言葉にも、「未来のことは予測できないけれども、すでに起こってしまった未来を探せ」とあります。

確かに未来は誰にもわからないのですが、私たちの回りには多くの「すでに起こってしまった未来」があるのです。

すでに起こっており、後の世に重大な影響を与える変化でありながら、まだ一般的に認識されていない変化。それをいち早く見定め大きなチャンスとすることこそ、「未来を探す」という意味です。

私たちもいち早く「アジアの成長性の未来」を探し、よりよい企業を見極め、投資を行って参ります。

※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
スパークス・アセット・マネジメントのアジア成長株投資戦略のファンドマネージャーです。