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週間牛乳屋新聞#15(驚きと発見を与えてくれた中国人社員たち)

こんばんは、牛乳屋です。

私は、日本のベンチャー企業の中国支社の立ち上げに携わっており、登記から清算まで経験しました。当初、私は広州か上海での法人設立を希望していました。天津市出身の中国人パートナーに猛反対され、天津に拠点を置くことになり、2017年6月から2018年8月まで天津で生活していました。

社員を採用したこともあり、バイトを含めて最大で10人雇用していたこともあります。様々な社員がおり、日本では考えられないような経験も数多くありました。今回は僕にとって驚きと発見を与えてくれた社員たちとのエピソードを紹介しようと思います。

名前と地名は変えていますが、全て実話に基づいています。このエピソードを以て中国人は~~と言うつもりがありませんが、人口の多い中国ではこんな人もいるんだなという感じで読んでいただけると嬉しいです。

今回の登場人物
・劉さん(35歳)天津出身営業職 実は資産家といえるほど金持ち
・張君(28歳)天津出身エンジニア 元池袋在住で性格が日本人っぽい
・蔡さん(29歳)河北省邯鄲出身総務職 頑張り屋さんで仕事も丁寧
・野本さん(38歳)北京・天津地域の人材会社の日本人担当者

1.天津クソはここから始まった劉さんのケース

営業職員として劉さんを採用しました。劉さんは天津市濱海新区北塘出身の35歳男性です。以前勤めていた日系製造企業が経営不振のため中国市場を撤退したことから仕事を探していました。

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長野への留学経験と就労経験があり、日本語は十分に話すことができます。質問への受け答えがしっかりとできていたので、採用を決めました。社内ではムードメーカー的な役で、日本の芸人の話も詳しくて、「あんた日本人よりも詳しいね!」と思うことが何度もありました。

劉さんは会話力が達者でしたが、半日かかってもメールの文章が3行(150~200字)という筆記力でした。Excelは使えませんし、パワポ資料の出来も論外です。また、営業職として採用したにもかかわらず、昼食休憩を除いてなかなか外に出ません。不審に思いつつ、何か抱えていることがあるのかもしれないと思い、土曜日に一緒に地元の散歩とランチに行くことにしました。

天津濱海新区をブラブラ散策しつつ、お昼の時間になると彼はある場所に寄りました。5階建てくらいの建物の2階に行くと、そこにはグラスファイバーの鯉の池が6つほどところ狭しと並んでいました。彼はなんと副業で鯉の養殖をしていたのです。

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社内でも皆からの愛されキャラで僕に社員間の情報を流してくれるITエンジニアの張君に内情を聞いてみました。

張君曰く、濱海新区のマンションが不動産バブルで高騰したおかげで劉さんの家族は成金になったそうです。留学先の長野で鯉の養殖方法を学び、中国では不動産と鯉養殖で収入を得ています。社会保険を自分で支払いたくないいため、総経理にペコペコすれば仕事をしなくても何とかなるという理由で日系企業を選んでいるみたいでした。

地元出身の社員は不動産を所有しているため、駐在員よりも裕福であるケースがあります。住宅ローンを抱えてやってくる50代の日本人総経理(月収100万円)よりも、親から億ションを貰った新卒現地スタッフ(月収8-10万円)のほうが保有資産額が多い場合もよくある話ですね。

後日、劉さんに営業職として実績の部分を指摘し、契約内容で規定した営業職としての動きが無ければ解雇の意図がある旨を伝えたところ、彼は翌日「持病の腰痛」を理由に自主退職を選びました。

2.未婚?既婚?蔡さんのケース

蔡さんは、人材会社に紹介してもらった河北省邯鄲(かんたん)市出身の29歳女性です。学生時代に日本語を専攻していたため、日本語は流ちょうであり、努力家肌なタイプでした。蔡さんは進んで業務を進めるタイプでしたので、私は信頼して業務を任せてもよいだろうと思っていました。

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ある日の週末に近所の伊勢丹で、遠くに蔡さんがいるのを見つけました。声をかけようと思ったところ、蔡さんと同年代の男性と4-5歳とおぼしき女の子が蔡さんと仲睦まじい様子で話していました。これは、普通の光景かもしれませんが、私にはとても違和感がありました。

なぜなら

蔡さんは履歴書に「未婚」と書いていたからです。

私は蔡さんに話しかけるのをやめました。未婚と言ってるけど、家族っぽい人がいる?偽装結婚?それとも公開できないやましい理由がある?と考えながら、張君を呼び出して事情を聞きました。

張君によると、天津では出産前後の職場不在が企業にとって負担と考えられているためアラサー既婚女性の採用には消極的。そのため、女性も仕事を得るために「未婚」と虚偽申請をするそうだ。ホントに天津クソですね。

あの男性が配偶者で、子どもが実の子であれば履歴書詐称であり、就業規則の解雇事由に該当します。ただ、蔡さんは真面目に仕事に取り組んでおり、成果を出している。どうする?

悩んだ結果、僕は蔡さんに対してこう言いました。

「蔡さんの仕事への姿勢は素晴らしいと思っていた。ただ、履歴書の虚偽申請一つで人事や経理に関する仕事を安心して任すことができなくなった。信頼を回復する方法はただ一つ。営業として金を稼いでくれるか?」

蔡さんは営業職へ移ることを承諾しました。ところが、直後に本社から天津拠点閉鎖のお達しが来たため、蔡さんは拠点撤退業務を僕と担うことになりました。結果的に、私は蔡さんと一緒に天津事務所の鍵を管理会社に渡し、お別れ会をすることになりました。

撤退することが分かっているのであれば身を守るために逃げるかもしれないと思っていましたが、蔡さんは逃げることなく協力してくれました。おかげで僕は命からがら天津を離れることができました。

蔡さんを紹介してくれた人材会社の野本さんに蔡さんが履歴書を虚偽記載していることを伝えたと同時に、仕事ぶりについてもアピールしました。後日、野本さんから聞いたところ、蔡さんは野本さんの会社経由で別な日系企業で仕事を見つけることができ、確りと仕事に励んでいるようでした。めでたしめでたし!

(つづく)

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