ラスト一行、衝撃のどんでん返し
「こうして二人で出かけるのも、高校の時以来じゃない?」
佑美が言う。
「たしかに、そうかもしれない」
靖子が言う。
二人は高校時代のクラスメイト。青春のすべてを共に過ごした親友であったが、卒業以来4年、ほとんど会うことがなかった。
「会社のほうはどんな感じなの?」
佑美は卒業後東京の大学に進学したが、靖子は地元の企業に就職した。LINEさえ数年やりとりをしていなかった佑美は、そんな靖子の近況を知りたかったのだ。
「んー、まあ、ぼちぼちって感じかな」
「そっか」
靖子にはなんだか言いたいことがありそうだった。心の奥になにか抱えているようなその姿が、佑美はすこし心配に思えた。
「どうした?何か言いたいことがあるなら、何でも言ってよ。私達、親友じゃん。ね?」
「え?」
「だって靖子、何か言いたそうな顔してるもん。親友にはお見通しだぞ?ほら、なんでも話してみて?」
「うん。…実はね、私高校のとき、佑美に隠してたことがあって」
「隠してたこと?」
「そう。やっぱりどうしても、直接伝えなきゃと思って」
「なあに?」
「3年生のとき…3年の夏に、佑美が美術の授業で創った作品が、その…なぜか割れちゃってたことがあったじゃない?」
「あったね」
「実はあれ…割っちゃったの私なんだ。放課後、誰もいない教室に忘れ物取りに帰ったときに、真っ暗だったから怖くて、急いでたら後ろのロッカーにぶつかっちゃって、なんか割れた音がしたんだけどそのまま逃げちゃって」
「…」
「ごめん、ごめんね、あのときすぐに佑美に伝えて謝ればよかったのに…どうしても言えなくて。ずっと言わなきゃと思ってたんだけど、卒業まで言えなくて、そのあともなかなか会えなかったから」
「…なに、そんなこと?」
「え?」
「なんとなくわかってたよ、あの日、靖子なんか申し訳なさそうな顔してたもん」
「え…ほんと?」
「ほんとだよ!」
「いつか言わなきゃって、ずっと悩んでたんだけど」
「そんな大ごとじゃないって!なんなら私、今まですっかり忘れてたもん!」
「なあんだ、よかった」
「さ、そんなこと気にしてないで、はやく行くよって!」
「ちょ、ちょっと、待ってよー」
二人は駅に向かって駆け出した。
全部うそ。
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