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我妻氏と対峙するとき

明日がウェビナー

現在進行形の法制審の動きをウォッチしているわけだけど、国賠の準備に向けて、70年以上前の法改正のための議論もウォッチしている

準備を進めているところだけど、男女平等のための共同親権に急進する勢いを家制度文化が蔓延る現状を踏まえてブレーキをかけた、というのが我妻榮という民法の大家だということがわかってきた

みんな知ったら、びっくりすると思う

子どもの権利のための共同親権、以前に、男女平等の共同親権を叶えないといけない


もちろん、男女平等自体が子どもの権利に資するわけで、結果、両親と平等に交流を持ち、養育の責任を果たしてもらうということ自体が子どもにとって利益であろう

もちろん、第二次世界大戦直後の頃は、世界でも、男女平等の共同親権は未完成で、原則として共同親権だけど、父母間の意見が一致しなかったら、父親が決める、という具合に、ツッコミ満載なところもあった

だから、日本があえて、不平等な規定をしなかったことに加えて、父母間の意見が一致しない場合の手当を何も用意しなかったことそれ自体、やむを得ないものもあったかもしれない

しかし、世界はそこから、努力を続けたし、より手厚く子どもの権利そのものに配慮しようとして、一層実り豊かな共同親権制を整備しようとしてきた

そうやって、日本だけが手遅れになってしまっている

中世みたいという批判があるのもやむを得ないだろう

我妻先生は一体何をしたというのか

少しずつ紹介したいと思う

「戦後における民法改正の経過」という文献がある

親権者の決定は最後まで問題となる

・父母が離婚した場合

・・・818条・819条の親権者の問題です。
父母の共同親権だということは、要綱でもはっきりさせているのですが、「氏ヲ同シクスル父母」とするかということは、相当あとまで考えられていて、結局最後に「氏ヲ同シクスル」という文字を削っている・・・。
 旧法では「其家ニ在ル父ノ親権ニ服ス」、父がないときは「母之ヲ行フ」とあったのを、共同親権とはしたけれども、「家ニ在ル」というかわりに「氏ヲ同シクスル」という形で残しておいた。それが最後のところにいってかわったわけです。だから、氏に関する一般的な問題の一つでしょうが、司令部関係では非情に問題になった・・・

・・・

特に離婚の場合、・・・「子ト氏ヲ同シクスル父母」ということでまかなう、・・・離婚したときは「父之ヲ行フ」但し父母が婚姻の際母の氏を称していた場合には「母之ヲ行フ」、そういうふうにかわった・・・しかしこれは、・・・そのままの状態で置いてGHQに持ち込んだところが、「父之ヲ行フ」というのは違憲じゃないか、ということになった・・・GHQでそれを初めて指摘され・・・違憲の疑いがあるから、親権者は協議できめたらいい、それをきめることを協議離婚の要件にしたらどうか、という提案・・・
 ・・・GHQにはこちらからはまだいえないため伏せてあったのですが、実は法制局からも憲法との関係を問題にされ、こちらとしてもそういう規定自体が全体の体系からみておかしいということで、・・・離婚の際は親権者は父母の協議できめるという案をつくっており・・・しかし、・・・親権と氏との関係の問題は、必ずしも離婚の場合だけでなくて、復氏の場合とかいろいろな場合にも問題になる。それをトコトンまで押しつけてゆくと非常に問題が多いので、どうなるかわからない、まだ自信がないので、一応離婚後の親権者は父母の協議によってきめるという案は作っておきながら、GHQの方にはそれがいえない・・・こちらの対案が確定すればあらためるとして、それまでは・・・一応維持するというつもりでいたらか、GHQの提案に対しては反対した・・・何回か繰り返し論争があって、しまいにはGHQの方から、子の年齢で振りわけてはどうか、すなわち、子が小さいときには親権者は母、大きくなったら父、というふうに振りわけてはどうかという案も出たことがあるのですが、こちらの方では対案研究中だったものですから、そのままの状態でずっといったわけです。
 そうこうするうちに、氏の問題が最後にきまり、それと同時に親権の方をどうするかということについても、結局現行法の819条に相当するような案に落ちついた・・・

氏と親権を結びつける試み
・・・「父之ヲ行フ」といっているものだから、違憲の疑いがあるということになった。しかし、われわれの考えでは、実際生活の合せようというまでのことであった。離婚によって復氏する者は、多くの場合、子との共同生活をやめるだろう、だから共同生活を継続している父まは母が親権を行うし、氏も同じである。しかし、去ってゆく者が子供を引き取って連れていってその共同生活に入れるという場合には、子の氏も親の氏も共にかわるし、親権もそっちに移ってゆく。・・・「父之ヲ行フ」だけで押し切っているわけじゃない。
・・・復氏の場合の子の引取の協議不調の場合は、家事審判所の許可でこれに代えることができ、その場合は親権もそれに従う・・・規定・・・。なお、子の引取の協議は復氏の際に限らず復氏の後でもできるという考・・・。
・・・子を引き取って共同生活をし、氏を同じくする親が当然に親権を行うのだが、その引きとって共同生活をするという点で協議が整わなければ、家事審判所の審判できめてもらうことができることになっていた。だから、ここに親権そのものについて協議の調わない場合に、家事審判所に持ち出すことを定めていなくとも、結局同じことになる・・・
・・・そのときにすでに案としては顔を出していた。しかし、向うに提案したものとしては伏せてあった・・・
・・・結局、問題は、親権を共同生活と氏に従わせるか、独立別個の制度として規定するかの違いに帰着・・・たとえば、離婚復氏する母について考えると、・・・子を引きとらないで親権だけ行使したいといっても、それは認められない。しかし、子を引取りたいというのに父が不当に反対するときには、家事審判所が仲に入って父を抑えてくれる。それが・・・ことの共同生活に関係なく、親権の所在だけについて家事審判所に決定してもらうことができるという形になった・・・。
 これは氏との関係で司令部の考えとこちらの考えにとに最後まで少しずれがあった・・・こちらは、・・・親権の所在を共同生活の実体に合せよう、とにかく実際の生活に即するようにするには、まず氏を共同生活の実体に合うようにきめておいて、親権はその氏に合せることが一番おちつくところにおちつくというので、氏というものを共同生活の表象というか、共同生活の実体をつかむ手段として頼っていった・・・ところが司令部の方には、氏と親権とを結びつけることは、要するに家の代りに氏を頭に置いて、それに実質上の権利関係を結びつけることになる。いいかえれば、家の温存になるのじゃないかという頭が初めからあったらしい・・・それをめぐって、・・・最後までもんでいた・・・結局、最後の案としては、親権を氏からすっかり切り離してしまって現行法のような案にきまったのですが、しかし、実質的にはこちらの考えとそう食い違っていないと思うのです・・・

氏という化け物が思いの外、議論の主役を占めてしまったことがわかる

肝心の議論がそのため手薄になって未完成のまま70年以上、令和になった今でも放置されるなんて、罪深いこととなる

男女平等に子育てする未来を想像だにできなかったのかもしれない

続く


なお、トップ画は、我妻つながりである(別の人)

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