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私の税理士事務所敗戦記Episode17 消費税の届け出ミスりました。

 先日、日経新聞に税理士の損害賠償が増えているという記事が1面トップに載っていました。

 やはり消費税の届出関係のものが多い。

 消費税には、いたるところにトラップが仕掛けられています。

 わたしも、2度ほどトラップにかかっています。


 一度目は、研究開発型ベンチャー企業のトラップにかかりました。

研究開発型なので当初はあまり売上がありません。

 設立3期目は2期前の売上が1000万円未満のため届出を出さないと免税になります。

 ところが3期目に多額の補助金をもらい、それで大きな設備投資を行いました。

 3期目の申告の時には投資家の意向で別の税理士に代わっていました。

 ある日社長が、少々癖のある新しい税理士を連れてうちの事務所を訪ねてきました。

 その税理士はスボンのすそをホッチキスで止めていました。

 そういうタイプの税理士です。


 本来なら数百万円の消費税還付を受けられるところが、課税事業者の選択をしてないから受けられないとホッチキス先生に言われたので、賠償して欲しいとのことです。

 ホッチキス税理士からネチネチ嫌味を言われました。

 事業計画にはそんな設備投資は、書かれてなかったし、1期目と2期目も少しは消費税の納税があったので、そのまま免税になった方が得と判断したのですが、ちゃんとヒアリングしてなかった私にも否はあります。

 弁護士に相談したところ、訴訟されても負けることはないが、還付できた金額の何割かを払っての和解を勧められました。長引くのも嫌なので結局数十万円払って和解しました。

 今から考えたら、設備投資のもとは助成金なのであちらの腹は傷んでなかったのです。

 そのことから世の中で嫌いな物リストにムカデの次に助成金と消費税が入りました。

 もうひとつのトラップは、消費税の世界でゴキブリホイホイと呼ばれるほどメジャーなトラップ簡易課税です。

 設立2期目の、京都市からクルマで2時間ほどかかるところにある会社です。近所の税理士は嫌だからとうちに来られました。

 全部会社で入力するから安くして欲しい、遠いので訪問も不要とのことでした。

 しかし結局全く入力してもらえず最後はうちで入力しました。そのため簡易課税が有利かどうかの判定ができず届出が間に合いませんでした。

 そうすると

 「業種的に簡易課税が有利に決まってるだろう、プロならそれくらい判断しろ。」ときれられました。

 「そちらで全部会計ソフトの入力をするとおっしゃいましたよね?」と反撃しようとすると

 「そんな難しいことが、できるわけないだろ、できたら税理士に頼まない!」

という視界の外からのカウンターパンチを食らいました。

とても感情の振れ幅の大きな人で、

 「先生を信頼してたのに、私は、経営者として大きな過ちをおかしてしまった。」

と、今にも泣き出しそうな勢いでした。

 結局、決算料をもらわないか何かで和解しました。

 税理士損害賠償保険のお世話になるほどのことはなかったのが、まだ幸いでした。

 消費税率が上がり、軽減税率、国境間の調整、インボイス方式など税制が複雑になると、さらにリスクは高まります。

 リスク回避の方法は、会社とコミュニケーションを密にして、将来の動向をヒアリングしておくことだと思います。

 ホッチキス先生は私なら絶対にこんなミスは犯さないと豪語されていました。

 その節約精神と合理性が私との違いかも知れないので、私も見習ってホッチキスで裾上げしてみようと思います。


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