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しあわせな結婚

カッとなったポールがタブロイド紙でレディを殴った。

そこにあったのが例えガラスの灰皿でもポールは同じ動作で同じスピードでレディを殴ったろう。だから事務所の禁煙は一定以上の成果を上げたと言える。

何故なら重厚な作りの重々しい木製テーブルの天板には先週までタブロイド紙ではなく灰皿があったからだ。

もっともそこにタブロイド紙ではなく灰皿があり…もっと言えばよく分からない専門用語と芸術論を絡めておそらく1シリングの価値もない…この所のブックメーカーの予想のような…インタビュアーの話を聞く間中ポールが煙草を吸っていいならこの不幸は起きなかったのかもしれない激昂したポールはまったく手がつけられない。

しかしレディも黙ってはいなかった。

スコットランド訛りの早口でまくし立てながら煙草に火をつけようとするポールから右手でライターを取り上げ窓に投げつけ(不幸にもガラスは割れてしまった)左手で煙草を引っ手繰るとピンヒールのピンで(!)踏み潰し最後に煙草を踏み潰したヒールの先でポールの股間を蹴り上げてから事務所のやはり重厚で立て付けの悪い扉を強引に閉めてレディは帰った。

「決めた!」

しばらくうずくまってからポールは叫んだ。

彼はレディを追う。

ポールはこの日禁煙と妻を決めた。

我々事務所の意思に反して。

ソワァーがため息を吐いた。


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