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孤独のハッケヨイ

最後のオオゼキ、希望乃海が死んだ。
享年六十八歳。
史上最高齢の現役リキシとして最後まで土俵にあがり、土俵で死んだ。
取り組み相手の御結山が一人で看取った。行司はいない。

かつては六百人を超えるリキシによってピラミッドが形成されていたオオズモウ。しかし残った現役リキシはただ一人… コムスビの御結山だけとなった。

「おれ一人じゃスモウとれねえよ… オオゼキ…」
御結山は独り、ハラール・チャンコ屋台で献杯を捧げた。

なぜこんなことに!
理由は単純だった。スモウに憧れ、リキシを志すチビッ子が消えたのだ。
相次いだ八百長疑惑、暴力事件。
二千二十年を過ぎると体型に縛られないデジタルスポーツが興隆し、リキシスペックを持つ子供たちは皆そちらに流れた。
旧態依然とした協会の対応は全てが後手後手だった。

「クソ… なにがeスポーツだよ…」

「御結山。ちょっとお話、いいかな」
御結山が顔をあげると、男が立っていた。
「私、こういう者でして…」

【続く】

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