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ゴールドラッシュとシルバーアックス

 ギラつく太陽。一直線のハイウェイ。トルクにモノを言わせてビンビンにブッ飛ばす。キャデラック・エルドラド―― 名前からしてツイてるだろ? コイツだけはいくら金に困っても手放せねぇ。
 ベガスで久しぶりの大勝負。LAだって郊外に行きゃあいくつもある。モロンゴ。バロナ。パラ―― だが田舎のカジノは性に合わねぇ。俺はベガスが恋しいのさ。あの華やかな街が。老舗のホテルで食えねぇ野郎どもとヒリつくような勝負がしてぇんだ。
「腹、へりましたね」
「バカ。こっからが気持ちイイんだ。お前は寝てろ」
「睡眠は足りてます」
 相変わらず空気が読めねぇギーク。なにバッグ漁ってんだ? チョコバー? ったく。こいつの観察眼を美女に移植できりゃ最高なのに。
「おい、クズをこぼすな」
「あっ」
 エディが前を見て言った。
「あ?」
 目の前、人!? ブレーキ! 衝撃―― やっちまった。
「……」
「イテテ…… 子供、でしたね。でも恰好が……」
 クソ! 人間があんなに飛ぶか? 最悪だ。ガキをはね殺すなんて。なんでこんなところに!
 額の汗を拭う。深呼吸。車を降り、クソ重い足を前に出す。

 なんだ? 死体が太陽の光を反射して―― これは。嘘だろ?

 斧だ。バカでかい。握ったまま死んでやがる。俺にはわかる。こいつはオモチャじゃねえ。それに鎧。鼻まで覆うヴァイキングみてぇな被り物。編み込まれた茶色のつけ髭。ガキの仮装にしちゃ凝りすぎだ。
「やっぱりドワーフだ!」
「あ?」
「ほら、指輪物語とかD&Dとか」
「知らねぇよ。いやドワーフは知ってるが…… うおっ!?」
 跳ね起きた! 思わずケツの銃に手が伸びる。落ち着け。ガキだぞ。生きてるとは……。
「……ここは?」
 女の声?
「十五号線だよ。怪我はない?」
 エディ、それを聞くか?
「奴の魔法か? 無駄なあがきを……」
 ドラッグか? ガキのくせに。
「人間よ、ヴァガスまで道案内を頼めるか? 前払いで一枚、着いたら三枚」
 俺は目玉をひん剥いた。革袋に金貨がたんまり入ってやがる。

【続く】

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