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#8 金の話

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さて、今回は少し堅苦しい話になるかもしれない。金の話である。プロデューサー志望の方なら、読んでおいて損はないだろう。現在、日本映画の多くは、製作委員会方式が一般的となっている。いわゆる、出資企業の集合体である。一本の映画に対して複数の企業が事業費(製作費+配給宣伝費)を出資し合い、資金のリスクを分散する仕組みだ。各企業の出資金の額により、出資比率が決まり、映画公開後の収益から出資比率に沿った額が各企業に配分される。構成するメンバーには、出来上がった作品を映画館に営業する配給会社や、原作があればその出版社、制作現場を取り仕切る制作プロダクション、TVや配信事業者などのメディア、新聞社、広告代理店、ビデオメーカーなど多岐にわたる。だが、時代とともにそれも、少しづつ変化しており、現在の主流は、まず、幹事会社のプロデューサーによる、個人でのアルバイトで予算を賄うケースが増えてきている。主に、深夜のコンビニエンスストア、そして、ウーバーイーツなどの配送業で、映画の予算を賄っているのである。「子供はわかってあげない」の場合、まず、どの程度の予算がかかっているのだろうか。今後の世界での映画興行復興の鍵となる、クリストファー・ノーラン監督作「テネット」が、およそ二億二千万ドルに対して、本作は、それよりも約一千万ドルほど安い、二億一千万ドル程度になるだろう。当のプロデューサーであるT氏は、私とN氏が、ふじきさんを追いかけている間、一体何をしていたかといえば、佐渡にいたのである。観光目的で訪れた、女子の団体に混じり、砂金を採っていたのである。現在、日本映画のプロデューサーのほとんどが、佐渡へ行ったり、徳川の埋蔵金を探したり、あとは温泉や油田を掘り当てたりして、映画を作っている。これが日本映画の現状なのである。

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そうしてプロデューサーがウーバーイーツなどで、個人で稼いだ予算が、人件費になって割り当てられていくのである。あまり生々しい話はしたくはないのだが、監督のギャラが、今だとだいたい、一本、一億円ほどだろうか。演出部、制作部など、スタッフの月給が、だいたい月で五千万程度である。プロデューサーになってくれば、映画予算のおよそ三分の二が、そのままギャランティーとなるはずだ。映画は金だ。映画業界は夢がいっぱい。今からでも遅くない。みんな、今の会社をやめて、映画の仕事をしよう。映画業界をもっと盛り上げよう。映画万歳。日本映画の未来は、君の手に。

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とここまで書いて、T氏からのクレームがはいった。原稿を読んで、怒りの電話だ。

バカなことばかり書かないでください!本気だと思われます。やめてください。2億ドルもかかってるわけないでしょ!、ギャラの話とか、本気にする人いますから!、塔の上とか、脚本の国とか、わけわかんないこと、書くのもうやめてください。ノーランをなんだと思ってるんですか!、佐渡をなんだと思ってるんですか!いい加減、本当のことを書いてください。ちゃんと、みんなが知りたいやつです。早くキャストの話をしてください。え?、なんですか?すごい風の音がするって?、ええ、そうでしょうよ。今どこから電話してるかって?そりゃ沖田さん、鉄骨の上ですよ。高層ビルとビルの間に渡された細い鉄骨を歩いてるんです。下?怖くて見れませんよ!、足がフラフラしているんです。私は、これを渡りきって、金持ちたちのゲームに勝って、映画の資金にするんです。いいですか、沖田さん。私は本気です。来週、原作者の田島先生に会いますからね。ちゃんとしてくださいね。

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T氏は、それから鉄骨の上を無事に渡り、莫大な金を手にした。さて、これでようやく映画がはじまる。映画はやっぱり金だ。みんなで作るから金がかかる。だから、映画はみんなで観よう。

あ、金の話は全部嘘です。


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映画「子供はわかってあげない」の上映が、2021年になりました。それゆえ、プロダクションノートを真摯に書いていたら、自分が死んでしまいました。映画はできたのでしょうか。できなかったのでしょうか。できないから公開が延期になったのでしょうか。果たして、映画はできるのでしょうか。
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