「高校生になりたい。」 ペルーから来た17歳の望み <前編>
2018年度も多様なルーツを持つ子ども・若者たちが当スクールで学びました。
オンラインで当スクールの授業をライブ配信する「にほんご×こどもプロジェクト(通称NICOプロジェクト)」は開始から3年めを迎え、遠隔地からの受講生も増えています。
今回は滋賀県からNICOプロジェクトを受講し、高校合格を果たしたマユミさんを紹介します。
マユミさんの来日
2017年4月、日系人の背景をもつマユミさんは、ペルーの首都リマから日本へ移り住んで来ました。母親と一緒に暮らすためです。
母親は1991年に初めて来日し、愛知県の工場で働き始めました。以降、ペルーへの帰国と再来日を繰り返しながら20余年。やがて家族とともに日本に定住する決意を固め、マユミさんを呼び寄せて滋賀県で暮らすことになりました。
中学校編入と年齢の壁
ペルーで5年制中学の4年次を修了した時点で来日したマユミさんは、日本の中学に編入しようと模索を始めます。
母親は市役所の窓口に出向いて相談をしましたが、当時のマユミさんは既に日本の義務教育年齢を過ぎていたことなどから、中学校編入は認められませんでした。
それでも彼女は日本の学校に通う望みを諦めず、地域の日本語教室や学習塾で学ぶ努力を続けていました。
ただ、それらの場も毎日授業があるわけではなく、物足りなさは否めませんでした。
そんな中、市役所がマユミさんについて県の担当課に相談しました。県職員の方が偶然SNSを通じてNICOプロジェクトを知っていたことから、マユミさんに紹介してくれたのです。
東京と滋賀 − 離れていても、つながれる。
こうしてNICOプロジェクトを受講し始めたマユミさん。
そこで出会ったのは、同じく10代でネパールやフィリピンから来日した日本語学習中の仲間たちでした。
似た境遇にある子ども同士が仲良くなるのに時間はかかりません。LINEのIDを交換してメッセージのやりとりが始まりました。日本語の勉強や宿題のことから好きな映画の話まで、話題は尽きなかったようです。
パソコンのスクリーン越しに毎日顔を合わせることが当たり前になりました。そして、仲間たちと一緒に受験勉強に励み、高校に入る夢を追う日々が始まりました。
“初対面”だけど・・・
NICOプロジェクトを運営するYSCグローバル・スクールでは、毎年夏休みにキャンプを行っています。
クラスメートのみんなは滋賀に住んでいるマユミさんをそのキャンプに誘いました。マユミさんもみんなに会ってみたくて、東京で開かれたそのキャンプに参加することにしました。
毎日スクリーン越しに顔を合わせているクラスメートですが、現実世界では初対面。ちょっとドキドキの経験です。マユミさんを目の前にした友だちが持った感想は、
「マユミって本当にいるんだ(笑)。なんか変な感じ」。
もちろんその違和感はすぐに消えて、マユミさんは仲間たちと一緒に大切な夏の思い出を作ることができました。
▼続きは【後編】へ
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