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補償金制度に代わる対価還元のカタチ

小寺・西田の金曜ランチビュッフェ 24号(2015年2月27日発行)より

2月13日、第10回目となる「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」、通称クラウド小委員会が開催された。およそ1年の議論の成果は報告書にまとめられる事になるが、今期最後の小委員会ということで、来期の議論の方向性などが検討された。

まず報告書だが、現在いろんな著作物周辺サービスを行なっている事業者からヒアリングを行なった結果、現在の著作権法の範囲内で十分対応できている、あるいは契約によって個別に対応すればよいという意見ばかりであった。したがって、法的な手当をする必要はなしという結論になっている。

だが現行サービス事業者にヒアリングすれば、それはそう言うはずである。すでにビジネスとして回っているものは著作権法の範囲内か、契約で手打ちになってるから商売できているわけで、現行法上違法な商売の人を連れてきてヒアリングはしていない。またすでにビジネスになっている事業者は、この契約の手間や金銭的コストが競合他社の参入障壁として機能しているので、この手間がなくなりますよ、という方策を望むわけがないんである。従ってこの結論にいたる小委員会のプロセス自体に、大きな穴があったと言わざるを得ない。

一方TPPでは、保護期間延長や非親告罪化が通るのではないかとも言われている。そうなれば、著作権保護だけが強化されることになり、利用促進とのバランスが壊れる事になる。この条件を押している米国には、フェアユース規定という新規参入者が入り込める穴が開けてあるので、新たにサービスをはじめる場合にはそこを使えば良い。

一方日本にはフェアユースという穴がない。その代わりにあったのが、著作権の親告罪という性質である。これは著作権者しか著作権法違反を訴えられないという性質で、仮に違反があっても、著作権者が訴えなければ、そのまま通るわけである。これが日本の、新規参入者が入り込める穴だった。

それが非親告罪化、つまり著作権者の意向は関係なく第三者が違反を訴えることができるようになれば、穴が塞がれてしまうので、新たにビジネスを起こす隙がなくなってしまう。そういう懸念も持ち上がってきた中で、この小委員会の結論が「法改正必要なし」では、日本からはなんのイノベーションも起こらず、ただただ諸外国発のサービスがやってくるのを待ち、日本だけ微妙に歪んだ格好で導入されていくという結果をこれからも受け入れ続ける事になる。

■新たな補償金制度?

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