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Fingertip spectacle! Draw a line. 作品解説Tips2「絵画の世界で生きていく上で盲目的に美しさを求めることは不毛なことなのかもしれません」

Tips1では美しいという認識が人から教わったものだという話をしました。
美しさが人から教わったことである以上、そのことを知らずに、自分の中から表出する手の感触や琴線に触れる感覚、脳裏に浮かぶイメージをオリジナルのものだと信じて追いかけ、評価を期待していると不毛に終わることになります。

手の感触、琴線、イメージは誰かに教わったものです。
例えば私が絵画の中で模索しながら形について探り当てた美しさの琴線は、その元となるモチーフをかすかな記憶を頼りに手繰り寄せて掘り起こした結果、幼い頃のガンダムのプラモデルから来ていることがわかりました。

教わったものである以上歴史的な発明といったような評価を期待してもそれが評価されることはありません。

絵画的な美しさは私の所に習いにくる人がこれまでに鑑賞も制作も経験がない場合、全員に教えなければなりません。1人の例外もなく絵画の中で何を美しいとしているのかを教える必要があります。教わらなければわからないものなのです。

審美眼というものはこの時に教えた型とぴったりとハマるものを色んな所から発見する物の見方のことをいいます。人間はなんでも認識しているわけではありません。注意する対象を学び、その対象が最も認識しやすい状態に神経や筋肉、脳の働きが合わせています。やがて脊髄反射的にわかるようになる。それが審美眼です。

絵画の言う所の美しさとは多くの場合、その型の正体は光です。そして、形であったり、色であったり。絵画の形と色の多くは光の現象を前提に存在するものです。

東京芸大の入試では審美眼の最終局面の課題として空間をイメージすることが暗黙の了解で課せられており、合否の鍵を握ることであったりします。美術市場では画面に金箔を貼っていると美しいとしていたりします。それがやはり美しいと教育されると、自分の神経、筋肉、脳は働き、何より心が同調するように働くことで、それを美しいと認識するようになるのです。
ここまで言えばもうお解りでしょうが、金箔が美しいと教育されていなければ金箔に注意は行きません。

美しいとは、何を持って美しいと称するのかを教わる。又はその法則を自分で見つけ出さなければ誰にもわからないのです。

現代の絵画の制作の中で美しさはとても重要な意味があります。Fingertip spectacle!はそのとても大切なことを皆さんに教えるための制作です。

絵画の鑑賞には意味があります。

これまでの絵画の歴史上にない美しさを求めるのではなく、すでに認識している美しさを鑑賞するために制作するのであればなんの問題もありません。

問題は美しさが人から教わったもの。ということに気づかずに、それを歴史的な評価を求めて制作を続けてしまうことです。
今のアートの世界はそこを利用して成り立たせています。
そこが今のアートの世界の実に不毛な点なのです。

ここで書いていることを知っている人は少ないです。学校の先生、美術館の学芸員、画廊、コレクターの殆どの人が知らないことです。
それによって多くの問題が起きていますが、皆さんが知らないことによってそれぞれの運営が成り立っています。

学校では普通は美しさを論理的には指導しません。私はしていますが、珍しいはずです。教えてしまえばすぐですが、教えなければ暗黙の了解で理解するまでにある程度の年月を要します。学校は基本的にそこで儲けるのです。

画廊は歴史的な評価は得られようのないことはわかっていてもコレクターに販売したり、作家から個展をするためのレンタル料を稼ぎます。

美術館はコンクールを催し出品料を稼ぎます。これらが美しさで評価している以上アートの歴史に残るような評価を得られることはありません。しかし画廊やコンクールに出品する際には、にわかにその期待を醸しだすのです。
これはアート全体が陥っている時計仕掛けです。

絵画の美しさはとても重要なものです。
でもこれは天才的なものでも、才能でもありません。
正しく人から教えてもらうことで誰でも理解できるものです。
それを明らかにしていないのは、学校、美術館、画廊がそれを暗黙の了解として集客するビジネスモデルになっているからです。
明らかにしてしまえば、根底から崩れます。

Fingertip spectacle!の活動の意義は美しさを1つずつ皆さんにわかりやすく解説することです。

Leafletを読んで頂ければ作品で皆さんに伝える美しさに気づいて頂けると思います。
それが他の作品を見る際の見方にもなります。
解説を読んでから見て頂ければ、私以外のアート作品が鑑賞の前に予備知識を得ていなければ理解できないことを良くわかって頂けると思います。


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