廃漁網ベンチャーがシード調達するまでの話
⓪ 「はじめに」と「結論」
初めまして、amu株式会社(”あむ”と読みます)の代表をしている
加藤広大(かとう こうだい)です。
amuが何をしているか端的にいうと
「廃棄漁具を再資源化してサーキュラーエコノミーをつくる」
ベンチャー企業です。
つい先日ベンチャーキャピタルのANOBAKAさんからシードラウンドの調達を実施しました。
このnoteではいわゆる"ソーシャルベンチャー"と言われる私たちamuが
どのようにしてシードラウンド調達をしたかを
現在地点の記録という意味も含めて記載したいと思います。
結論から申し上げると
「使えるものはなんでも使う。
事業性から逃げなければソーシャルベンチャーも何も関係ない。」
という当たり前なことになってしまうのですが、どのように
この結論まで自分が辿り着いたのか、弊社の紹介も含めて書きます。
① amu株式会社とは?
冒頭でも少し触れましたが私たちamu株式会社の紹介を少しさせてください。
amu株式会社は宮城県気仙沼市という岩手県に少しめり込んだ場所で
2023年5月に創業したベンチャー企業です。
amuの事業
私たちの事業は簡単にまとめると4ステップあります。
① 全国の漁業者(いわゆる漁師さん)が使い終えた漁具、漁網を回収
② パートナーリサイクル企業と連携して再資源化
③ 素材ブランドとしてさまざまなメーカー様に素材を企画販売
④ 販売先企業様の製品の役目が終えたら再度回収、再資源化
→ ③ に戻る。
③ ④ を循環させることで「漁具からサーキュラーエコノミー」を生み出していきます。
漁具はみんなの厄介者
ところで皆さんは漁具が海洋プラスチックゴミの44.5%が漁具ということをご存知でしょうか?(参照:出典:The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics (2016.Jan. World Economic Forum 出典:環境省 海洋ごみをめぐる最近の動向)
さまざまなご意見があるかと思いますが、ここで伝えたいのは、海の中にたくさんの漁具があることは事実であるということです。
また、おか(陸)まで持って帰ってきたとしてもリサイクルされることはほぼなく、産業廃棄物として埋め立て、焼却処理される選択肢をとることが大半であること。
産業廃棄物業者も漁具を焼却処理をする場合も塩分が炉を痛めてしまうのであまり扱いたくない。と言う事実も見えてきました。
要するに使い終えた漁具はみんなの厄介者なんです。
私たちはこのような事業を通して海洋プラスチックになる可能性があった漁具や、焼却埋め立てされる漁具を再資源化することで減らしている。と捉えることもできると思います。
ただ、この事業のスタートは環境軸ではありませんでした。
どうしても証明したかった仮説
この事業のスタートは一つの仮説です。
地球を掘ってできただけの素材より
漁師が命懸けで使った漁具からできた素材の方が価値が出るのではないか?
それはつまり、
無機質な素材より誰かを経由した物語が付与した素材の方が価値が出るのではないか?という仮説。
同時に、その”誰か”が「いらない」と判断したものがいわゆる『ゴミ』であることにも気づきました。
「こんなに物語に溢れる原料が捨てられてしまうなんてもったいない」
そう思ったのがこのamuの事業の始まりです。
それに、世界三大漁場の恩恵を受けて生きてきた三陸、気仙沼にいたからこそ発想できた事業だと心から思います。
(どうして出身でもない気仙沼に移住して事業を起こしたのかについてはまたの機会に記録したいと思います)
② "ソーシャルベンチャー" amu
前述したような仮説を持って事業を進めてきたamuですが
皆さんが想像するよりずっとたくさん言われることがあります。
「へ〜!良いことしてますね〜!」
もちろん興味の強弱はあれどすんごいいわれてきました。
正直、返答に困る。
「事業なんだから世の中に良いことなんて当たり前だろ!!!!!」
と思うのです。
確かに海洋プラスチックゴミの削減に貢献する事業ではありますが
どのベンチャー企業も、大手企業も真っ当に頑張っている企業は全部ひっくるめて「自分たちの仕事が世の中を良くしている」と信じている
もしかしたら良くしている大小はあるかもしれないけど、誰かを笑顔にしていることには変わりはないと私は思っています。
だからこそ、ソーシャルベンチャーと言われるのが違和感しかない。
みんなソーシャルベンチャーであるはず。
百歩譲ってソーシャルベンチャーだとしても事業性をおざなりにしているわけじゃない。
amuを育てるために資金調達に奔走している時、
さまざまな人たちと話す中で自分の中で葛藤し続けてました。
③ 使えるものはなんでも使う
ある時、自分の中で吹っ切れたタイミングがあります。
「amuが見たい景色に近づくのなら、なんでも使えば良い。」
ソーシャルベンチャー、SDGs、地域発ベンチャー、Z世代
あらゆるカテゴライズがあるけれど ”見たい景色に近づく” のであれば受け入れる。
「いろんな人を仲間にしていかないと見たい景色には近づけない」と気づいた瞬間がありました。
地球を掘ってできた素材より
漁師が命懸けで使った漁具からできた素材の方が価値が出る
そして循環がより価値を大きくする
これが実証できた世の中はきっと良くなっている。そう信じています。
カテゴライズなんていうのは些細なことで目標に近づくため、事業を伸ばしてさらに大きく実証させるためにうまくつきあうものだと考えを改められてから、いろんなことがうまくまわってきた感覚があります。
④ シード調達でしたこと
もうひたすらにピッチ、VC周りに北の地、気仙沼から東京に繰り出しまくってました。
ここまで書いてなんですが、いわゆるソーシャルベンチャーならではの動きはほぼないんじゃないかと思っています。
シードベンチャーはきっとほぼ、泥臭く話しまくって一緒に走ってくれるVC、投資家を探しまわっているんじゃないかとおもいます。
あえていうのであれば、
地域発、海洋プラスチック、サーキュラーエコノミー、クリーンテック
といったワードが出た途端わかりやすく目にシャッターが降りる方は多々いらっしゃったのでむしろ「よし、次だ!次!」と試行回数を多くまわせたのは良い点だったと思います。
どんなに最初"良いこと特化"のベンチャーに見えても「事業性から逃げなければ」VCも投資家もしっかり話を聞いてくれることも
今回の調達で大きな学びになりました。
(市場規模がある前提で相手によって話す順番変える!に尽きるが)
⑤ ANOBAKAさんと出会う 調達実施
シード調達のきっかけになったのはロケットピッチという3分間で自分の事業をプレゼンするイベントでした。
そこでANOBAKAの松永さんからメッセンジャーをいただきオンラインを繋がせていただいたところがスタートでした。
そこからはamuを見つけてくださった松永さんと事業を磨く磨く。
「漫画家と担当編集ってこんな関係なのかもな」と漫画で得た浅い知識で思ったりもしました。
当たり前ですが自分では気づかなかった事業の強み、弱み。それぞれをどのように見せるのか?
勉強になることばかりでした。
そして運命の投資を決める投資委員会当日。
オンラインでANOBAKAのメンバーの方々がずらっと揃う中でプレゼン。
質疑応答、今後の事業について「伸ばす」ためには?、流石に緊張しました。笑
終わってからANOBAKAさん内で投資検討。
30分だったのか、1時間だったのか。
途方もなく長く感じました。
松永さんから着信
「結論から言うと、投資すると決定しました。」
シンプルに嬉しかった。
自分が信じた夢を真剣に考えてくれたこと。
一緒に見ようと決めてくれたこと。
仲間が増えたことが嬉しかった。
何よりamuを信じ続けてくれた松永さんとこれからもご一緒できることが嬉しかったことを覚えています。
⑥ amuが向かうさき
と、長々と書かせていただきましたがamuははじまったばかりです。
私たちは漁具を世界一資源化する企業になり
漁具からサーキュラーエコノミーを生み出します。
モノのルーツ(トレーサビリティ)が環境軸だけでなく
「これはこの港町のこんな漁師さんがいたからここまで届いたのか。」
「このスニーカーの前はテントだったのか!」
循環、ルーツを可視化することが価値になる世界をつくっていきたい。
こんな壮大なことベンチャー企業一社で叶えられると思っていません。
私たちの廃漁具からできた素材を使ってサーキュラーエコノミーを
共につくっていく企業廃漁網をリサイクルできる企業
共に漁具を回収してくれる漁業者、行政
amuの事業のソーシャルインパクトを算出できる方
さまざまなポジションの方々と力を合わせてやっと叶うものだと考えています。
少しでも興味を私たちamuに抱いてくださったらぜひお話しさせてください!
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⑦ 最後に
勢いのまま書いてしまいましたが、
ここまで読んでくださったかたがもしいらっしゃるのであれば
本当にありがとうございます!!!!
こんだけ書いてなんなのですが
・地域発ベンチャーのススメ
・回収地域での漁師さんとのエモエピソード
・どうして漁網にロマンを感じたのか
・amuがあえて嫌われたい相手
などなど、書きたいことはわんさかありますのでまた読んでくださると嬉しいです。
amu株式会社 加藤広大
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