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うらを取る/うらに眼をやる(その後編)
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うらを取る/うらに眼をやる(その後編)

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記者の目 こころの芽
――着想・取材・発信の「舞台裏」――

細川暁子(ほそかわあきこ)さんが綴るエッセイのスタートしました!
中日新聞生活部記者。三重県出身。2003年入社。
彦根支局や東京本社などを経て、現在は名古屋本社で医療担当。
二児の母で、子どものころに習っていたバイオリンを娘と練習中。

今回は「うらを取る/うらに眼をやる(その後編)」です。
前編からのつづきをどうぞ


 “すべてを疑え”。
 新聞社に入ってからは、先輩にそう教わった。――取材相手から情報をもらっても、ガセネタかもしれない。その人の言葉は、本人の勘違いかもしれない。事実確認には「裏」を取ることが不可欠で、「表」の情報だけで信用してはいけない。

 もともと備わっていた私の疑い深さは、この仕事を通じてより強化されたのではないかと思う。人を素直に信用できないことは、人としてどうなのか、と自分でも思う。最近は、歳とともに自分の記憶力に不安が出てきたせいで、何度も取材相手に、内容に間違いがないか確認することも増えた。ほとんど強迫的なのではないかと感じる。

 きたやま先生に、お会いして話を聞いてみたい。――そう強く願っていたところ、中日新聞の記者として、きたやま先生に取材するチャンスが訪れた。
 2022年5月3日の中日新聞と系列の東京新聞に、インタビューは掲載された。先生には、「先行き不安の時代に、どう向き合えばいいのか?」というテーマでお話を伺った。

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(ここまで前回)


「人にはみな表と裏がある」
建前と本音を使い分けて生きている」
二重性を持っているのは当たり前」
――裏表があることは、決して悪いことではない。当然のことなのだと。きたやま先生が、そう言い切ってくれたことに、救われる思いがした。仕事は仕事。表舞台とは別に、本来の自分らしくいられる楽屋裏を確保することを意識し、大切にすればいい。表と裏で、一人の私。そう考えれば、楽になれた。

 個人的に、一番聞いてみたかったのは、きたやま先生とシェイクスピアとのつながりだった。先生は、シェイクスピア研究の第一人者である故・高橋康也さんから影響を受けたことを教えてくれた。高橋さんからシェイクスピアの劇の東京公演に誘われたこともあり、本からは言葉遊びなど英国流のノンセンス(無意味)の価値について教えられたそうだ。高橋さんが亡くなった時、きたやま先生はたまたまイギリスにいて、現地の新聞に大きく載った追悼文を読んだという。


きたやま先生に取材するチャンスを手に!

 
 その高橋康也さんが編者を務めた『シェイクスピアハンドブック』を実家の書棚で見つけた。そこに、興味深い記述があった。「精神分析の創始者フロイトの著作の中でゲーテと並んで最も頻繁に引用される作家はシェイクスピアである」〔著者は大橋洋一〕。父によると、ヴィクトリア朝時代の精神科医たちはシェイクスピア作品を治療に取り入れていたという記録もあるという。やはり、精神分析とシェイクスピアには深いつながりがあった。
 
 自分が強烈に惹きつけられる人や、その人の考え方、なぜ自分がそこに惹かれるのか。理由を探っていくと、何か見えてくることがあるものだ。そしてその何かは、無意識のうちに、自分に大きな影響を与えていたことに気づく。

記者の目 こころの芽 
vol.1《うらを取る/うらに眼をやる》ここまで


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木立の文庫の公式note(連載)です。2018年の秋、京都に生まれた出版社です。人と人が集う広場に、本の石畳を歩く小道に、webでの声の交差点に、なれたらという夢があります。人が生きることの綾/こころとからだの出会い/人間=自然まるごとのbeingを、皆で探ってゆきたく思います。