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【ジャーナル】[Part 3]こうち100人カイギ vol.9 河田 将吾(NPO法人 四国青年NGO HOPE 副理事長)/田中 愛彩(NPO法人 トサシカケNITARI事務局長)


2019年1月よりKochi Startup BASEにて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。
今回は、2019年10月9日(水)に開催された、vol.9に登壇いただいた5名、1人1人の話にフォーカスを当てています。

9回目の今回は、「NPOで働く」をテーマとし、非営利での社会貢献活動や慈善活動を行う市民団体:NPOで働く5名それぞれの想いについて語っていただきます。

参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。

<こうち100人カイギ vol.9の登壇者>
5名それぞれの話をもっと深く知りたい方は、こちらの記事もチェック!
※お名前をクリックすると、その記事に飛べます。

市野 和美さん(Part 1掲載) 


大石 真司さん(Part 2掲載)
尾崎 昭仁さん (Part 2掲載)


河田 将吾さん (Part 3掲載)
田中 愛彩さん (Part 3掲載)

4人目の登壇者は、NPO法人 四国青年NGO HOPE 副理事長の河田 将吾(かわた しょうご)さん。

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1995年生まれ。24歳。香川県出身。
高校生の時「人は生涯を通してどのように人格を形成していくのか」に強い関心を持っていることに気づく。その疑問を探るため、ワカモノの人材育成に携わる「NPO法人 四国青年NGO HOPE」の活動へ参画。「これからの社会で活躍する人材が育つには、ワカモノにどういった成長の動機付けが有効なのか?」というテーマを掲げて、毎年300名以上の大学生や若手社会人と交流を取りながら、自身が与えられる動機付けを探っている。今年6月より副理事長に着任。ワカモノに成長の機会を与えること、ワカモノが成長していく姿を見守ること、そして自分が成長していくことが好き。

自身の活動について
河田さんは大学3年生の時に、現在関与している合宿事業の代表委員長の方から誘われ、『NPO法人 四国青年NGO HOPE(以下HOPE)』に入りました。それから2年半、HOPEの事業を運営し、今年の6月には同法人の副理事長に就任。自身の活動について「若者の最長に積極的に関与していくこと。サポートしていくことが仕事です」「自分が面倒をみてきた会員が、成長した背中を見ると達成感を感じるのが活動をしていて得たこと」とはっきり言葉にし、なぜ今NPO法人で働いているか、という話に続けました。


HOPEの主な活動
河田さんの所属するHOPEは、2007年に設立。現在、会員数は約360人となっており、団体がこの12年で関わってきた若者の数は2,000人に上ります。ターゲットは若者、特に大学生。自身と社会が遠いと思っている若者に関わり、「あなたも社会の一員だよ」と教えていくことを大きな目標として活動しています。
主な活動としては、2泊3日の成長支援事業と位置づけしている、合宿です。合宿期間を通して、社会で今、何が起こっている問題を解決することを目指しています。また、この経験を積み、若者の社会への参画意識を高める働きかけを行なっています。合宿には、地域系合宿、国際系合宿、教育系合宿と種類があり、NPOが成立して12年間開催していますが、どれも学生が主体です。2泊3日の企画を組むことから、半年間活動する内容を考え、それに伴う集客、経理などといった合宿に関わる全ての作業を行います。
このようなことを、初めから最後まで体験できることから、HOPEは社会に出る前の模擬経営の場、経験を積める場所と考えています。


他の取り組み
HOPEの新たな取り組みとして、今秋から実施予定しているのが、事務局面談というもの。河田さんをはじめ、HOPEの事務局員が参画している若者一人一人に対して行う面談です。
「こういう動機があって今関わってくれている」、「この子にはこういう干渉をして行ったら行ったんじゃないか」と、若者それぞれの動機を聞いた上で、どういう風に成長していくのかということを考え、内的動機を実現するための工夫を行なっていきます。
またもう一つの活動として、『REVIEW+』という活動もあります。これはオーダメイド式のインターンシップのこと。学生と企業が1対1でインターンシップの内容から考えていくという、他所ではあまり例をみないインターンシップ事業です。このような様々な取り組みをHOPEは行なっています。


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大事にしていること
河田さんは、たくさんの学生と関わる中で思うことがあります。それは、最近の若者は社会や自分の成長に無関心な子が増えている、ということ。もちろんそのような若者ばかりではありませんが、2年半の活動を通し、間近で関わる中でそう感じていると実感しています。河田さん自身、元々成長することや自分や他者の考え方に興味があり、HOPEに所属してさらに興味を探求しています。自身の感じる「自らが成長する楽しさ」、これを若者に知って、感じてもらいたい。この思いは河田さんの思いであり、HOPEの願いでもあります。

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モチベーションをどう生み出せるのか
河田さんは最後に、モチベーションについて話してくれました。人間には3つの種類のモチベーションがあると考えています。一つ目は、「お腹が空いた」「寝たい」という生理的動機のモチベーション1.0。二つ目は、「給料が入るから働く」「褒められるから頑張る」と外的動機のモチベーション2.0。そして、3つ目のモチベーション3.0。これは、自分の内側から湧き上がってくるものです。モチベーション3.0のわかりやすい例が『Wikipedia』。金銭的な報酬もなく、誰からも褒められることがないのになぜか続いている活動であり、このような実際にある事例も考えながらHOPEとしての活動も考えて行動しています。
では、どうやってモチベーションを生み出せるのか?若者たちに自分たちがどう関わることで、若者のモチベーションは生まれるのか?河田さんはその答えを「とにかく待つこと」と話しました。ピンチの時でも自分から動き出すまで待つこと、これが若者のモチベーションを生み出すことにつながります。「助けてあげたいけれど、辛抱することも大事かな」と言葉を続けました。河田さんは、HOPEの活動を通して若者たちが高知の社会の中で活躍していることを心から願っています。



5人目の登壇者は、NPO法人 トサシカケNITARI事務局長の田中 愛彩(たなか あいさ)さん。

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1987年生まれ。大阪府大阪市出身。
社会人4年目まで地元で過ごしたが、人と違うことを経験したいという動機から名古屋のバルーンアート会社に就職する。2016年6月に初めて高知を訪れ穏やかに広がる海に感動し、そのまま地域おこし協力隊として土佐市に移住。協力隊任期中に「現役世代が中心となってまちづくりを進めよう」という声掛けに賛同し、2018年3月に「NPO法人トサシカケNITARI」を仲間と設立。任期が終わった今も「土佐市にできる限りの恩返しを」という想いを持って日々活動している。


土佐市の自然に感動して
大阪生まれ、大阪育ちの田中さん。大学卒業と同時に印刷会社に勤めますが、人と違った、変わったことがしたいと思い立ち、就職から4年後、名古屋のバルーンアート会社に転職しました。特技が出来、変わったことがしたい、という欲は満たされたもの、イベント業の為、時間が不規則なことや休みが自由に取れないなど、不自由なことが積み重なり、気持ちが塞ぎ込んでいきました。「これじゃダメだ。落ち着いたところで暮らしたい。」と思い始めた頃、たまたま旅行で訪れたのが土佐市でした。海と空の青さに感動し、2ヶ月後には土佐市の地域おこし協力隊として移住したそうです。
田中さんには、地域おこし協力隊を始めた頃から抱えていた想いがあります。それは「土佐市内に、土佐市のファンを増やしたい」ということ。
都会から田舎や地方をみると、都会を憧れているイメージが強い、土佐市も然り。人も、お金も、関心も、全て都会に流れてしまうことに歯がゆさを感じ、まずは、地元の人、土佐市にゆかりのある人たちの心を捕まえるところから始めないと、このまちは盛り上がらないと、強い想いが芽生えました。

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任期を終えた後も応援するために
では、どうやって土佐市の人に土佐市を好きになってもらうか。その活動や行動に繋げていくか、と悩んでいたとき、「土佐市の若手を中心にNPO法人を作るので、事務局長をやらないか」と声がかかりました。そのNPO法人が現在、田中さんが所属する『NPO法人トサシカケNITARI(以下ニタリ)』です。参加しているメンバーは農家、ジムの経営者、市議会議員、ゲストハウスオーナー、木こりなど、バラエティに富んでいます。職業はバラバラですが共通しているのは、土佐市を面白おかしく、そして盛り上げたいという思いです。田中さん自身は、特にこれといって何かがしたい、という思いがあったわけではありませんが「このまま土佐市を応援し続けられるのであれば」と昨年の3月に仲間たちとNPO法人を設立。地域おこし協力隊の任期は今年の3月で終わりましたが、今は、ニタリの職員としての活動一本で行なっています。


ニタリの活動
高知市に有名な日曜市があるように、土佐市にも日曜市があります。しかし、出店者もお客さんも高齢化で人が減り、衰退してきています。どうにかして盛り上げたい、とニタリが出店したり、出店してくれる人を呼んだり、集客したり、日曜市がこれからも続いていけるような活動も行なっています。
また活動として、『土佐市民協働大学』というニタリオリジナルのイベントもあります。これはニタリのメンバーや外部の方が講師となって、仕事や人生観などを話してもらっています。講義の内容ももちろんですが、お酒あり飲食ありで行なっているので、一般の市民大学とは違って打ち解けやすく、ゲストと参加者、参加者とニタリ(運営)、という壁はありません。田中さんはこの活動を通して、土佐市に新たな繋がりが増えていることを間近で実感し、また、そんな活動を客観的に見ることで、「ニタリって格好いいなぁ」と感じているそうです。一事務局員でありながら、一ファンという目線で活動を見ていると楽しそうに話してくれました。

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対価がもらえなくても
ニタリの活動としてもう一つ。土佐市から業務委託を受け、移住定住促進に取り組んでいます。
田中さんのお給料は、この業務委託事業から出ていますが、この分だけでは生活していくには足りないので、夜はバイトをして生活費を稼いでいます。
業務委託は、今年度のみ。来年度に業務委託がなくなったら、ニタリの事業で収益が上がらなかったら、と周囲からは心配の声も上がりますが、「ニタリからお給料をもらえなくても焦りはない」と思っています。
お金がもらえなければ、もちろん就活をすることにはなる。しかし、今ニタリで活動していく上で、自分以外のメンバーはお給料も報酬ももらっていません。ですが、土佐市のために活動に参加して、時間も労力も割いてくれ、素敵なイベントを次々と開催しています。それを見ていると「ニタリってすごい」と思うことができ「お金をもらわなくてもできることはあるのではないか」、と、田中さんは気づいたそうです。
もし「働く」という意味が、対価がもらえる、保証された環境にいるといった意味なら、「NPO」は働かなくても関わりたいと思える集団ではないか、と自身の思いを言葉にしました。


一人のファンとしても
ニタリは月に1回、ミーティングを行なっています。ミーティングの後は決まって飲み会に出かけ、1次会では、ミーティングのテンションのままで、今後のニタリの動きや、それぞれの展望など熱く語り合うそうです。お酒が進み、2次会はスナックへ。大きな声でどんちゃん騒ぎをし、端から見れば自分たちは阿呆と思われるのではないだろうか、と笑いました。しかし、真面目な話をするところから、阿呆になるところまで1つのグループでできること。それを体感して、「ニタリって面白いんじゃないか、このメンバーが集まって面白いことをできないわけがない」と、田中さんは思っています。ニタリに一番近く、一ファンとしてこれからも見守っていきたいと、ニタリへの熱い想いを語ってくれました。



【総括】
24歳という若さで団体の副理事長として活動する河田さん。自身が体験して大事だと思っている成長することを、自身だけでなく他者にも体験してもらいたいと、日々たくさんの若者に触れ奮闘していることを話す姿は、とてもキラキラして見えました。

我が子を慕うような、そんな嬉しそうな表情で自分の所属するNPOについて話してくれた田中さん。笑いも織り交ぜつつ、自分たちの活動やメンバーへの愛を熱く語る姿に、参加者の方々も「田中さんの所属するニタリっていいな!」と思ったのではないでしょうか。


(レポート:畠中 詩織)



 100人カイギとは 
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の"身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。

お問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒781-0084 高知県高知市南御座90-1 高知 蔦屋書店3F
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/


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