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【レポート】いい経営とは何か ~これからの社会に求められる起業家像~ ~こうちマイプロジェクト道場第2期 特別公開講座


こうちマイプロジェクト道場は、一人ひとりの本当にやりたいことを対話とアクションを重ねながら進める学び合いの場です。
マイプロジェクト(マイプロ)とは、「わたし」が感じている些細な問題意識や違和感、疑問に素直に耳を傾け、その「何か」を「プロジェクト(Project)」の形にして、「やってみる」ことから始まる、自分と仲間、世の中の変化を仲間同士で面白がり支え合う取り組みです。周りの目や評価を気にしないで、「自分の好き・やりたい」という想いに正直に向き合い、一歩踏み出すことを仲間と共に目指すことがこの講座の目的となります。
第2期では、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきます。

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今回は特別編。鎌田 恭幸さん(鎌倉投信株式会社 代表取締役社長)をゲスト講師としてお迎えしました。
『いい経営とは何か ~これからの社会に求められる起業家像~』と題し、事業を始めるまでの経緯や、事業に懸ける想い、ご自身の哲学についてお話いただきました。

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鎌田 恭幸 氏(鎌倉投信株式会社代表取締役社長)

外資系信託銀行の副社長を退任後、鎌倉投信を創業。20年以上にわたる資産運用業務の経験を有する。個人投資家の資産を育むと共に、人をつなぎ、世代をつなぎ、豊かな社会を創造する新たな投資信託を目指している。
著書に「外資金融では出会えなかった日本でいちばん投資したい会社」(アチーブメント出版)


「いい会社をふやしましょう」
神奈川県鎌倉市。自然と文化、革新性の息づくこのまちの一角に、築100年ほどの趣ある日本家屋が建っています。鎌田さんが代表取締役社長を務める投資信託会社・鎌倉投信の本社です。100年続く会社を目指し、わざわざこの場所とこの建物を選んだといいます。

鎌倉投信のポリシーは、「いい会社にしか投資しない」。いい会社、というのは、本業を通じて社会の持続的な発展に貢献しているような会社のことです。
そんな綺麗ごとで本当に事業が成り立つの?と疑問に思われる方も多いでしょうし、実際に鎌田さんたちが事業をスタートした頃は周囲から猛反対を受けたそうです。それでも、「社会課題を放置している会社は発展しない」という考えの元、鎌田さんたちは10年間、この事業を成長させてきました。

1988年、バブル絶頂期に大手信託銀行に入社。待遇もよく、1999年に転職した外資系運用会社でも順調にキャリアを重ね、副社長の座を任されるまでになっていました。しかし、世の中の役に立っているという実感が少なく、社会貢献がしたいという思いを募らせていった鎌田さん。2008年1月、43歳で会社を辞め、「投資で社会の持続的な発展に貢献すること」を目指し仲間とともに鎌倉投信を立ち上げました。
ところが、ちょうどその頃はリーマンショックによる大混乱の真っただ中。会社や経済はこの先どうなってしまうのか…という不安が社会全体に漂う中で、鎌田さんたちの「いい会社をふやしましょう」「投資はまごころである」といったメッセージは、周りの人たちから全く理解されませんでした。
「お前ら大丈夫?」「寝言言うな」「絶対うまくいかない」と、反対の声を浴びつづけた鎌田さん。しかし意外なことに、鎌田さんは反対されればされるほど、むしろ「これはやれる」という確信を深めていきました。なぜなら、常識のある人たちは、新しいことに反対するものだから。鎌田さんは、潜在的なお客様のニーズをくみ取ったうえで、諦めずやり続けることができれば、うまくいかないわけがないと信じていました。


「やりたいこと」を等身大で伝える
事業を始めるにあたり大きな資金が必要だった鎌田さんは、お金を借りるためにいろいろな人を訪ねます。そこで投資家から見られたのは、「大義はあるか」「この人はこれをやり切るか」という根本的な部分だったと語ります。
ある人は鎌田さんの話を一通り聞いた後、こう言って数千万円を貸してくれました。「最初の志を曲げないことと、最後までやり切ること。この二つを約束できるのなら、全面的に協力しよう」。
自分のやりたいことを、素直に、等身大で伝えていったからこそ、周囲の人々の心に刺さっていったのだと、鎌田さんは感じています。

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お金は、“命”であり“祈り”
2億円をかき集め、何とか立ち上げた鎌倉投信。賛同者もちらほら現れ、それなりに売り上げは増えていったのですが、それ以上に運用資金がかさみ、やればやるほど赤字は膨らんでいきました。
-いいことをしているし、お客様も付いてきてくれているけれど、事業としては成り立たない―。
ジレンマを抱え、「死の谷」を乗り越えられるか不安だったという鎌田さん。そんな彼を勇気づけたのが、お客様たちの行動でした。

2011年3月11日、東日本大震災が発生。不安を感じた投資家たちは一斉に株を売りに走り、日本の株式市場は20%暴落。額にして100兆円が、数日にして失われたのです。
しかし逆に、鎌倉投信には、なんと過去最大の入金件数が。そこには、「こんな時だからこそ、いい会社を応援したい」という、投資家たちの“祈り”が込められていました。

-お金は使う人の色に染まり、いろいろなものをつなぐ。

そう感じた鎌田さん。
投資家たちは、人生の限られた時間を使って得た“命”の一部ともいえるお金を、投資という形で差し出し、頑張る会社を応援してくれたのです。
読めない先のことに囚われ、「どうもうけるか」ばかりを計算する。それよりも、目の前の頑張っている会社に手を差し伸べよう。
「金融を通じて、平和への“祈り”を捧げる」。それが、鎌田さんの目指すところです。

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お金のつながりだけで終わらない
今では赤ちゃんからお年寄りまで、たくさんの人の投資信託により支持されている鎌倉投信。その秘密は、「共感」にあります。お客様がただ株価の変動だけを見るのではなく、想いやビジョンに触れることで投資先に心から共感し、応援したいと思える仕組みを築く。そのために、あえて手間のかかる直接販売や、経営トップたちによるトーク、パネルディスカッションなどの機会を設けています。
鎌倉投信から投資を受ける会社の経営者たちは、その辺にいそうなごく普通の人たち。しかし、ちょっぴり高い志と、実際に動き続けた行動力があったからこそ、社会に大きな価値を生み出した人たちです。お客様が投資を通じて彼らと出会うことで、自分に秘められた可能性に気付き、人生を変えていって欲しい―。鎌田さんはそう願っています。
投資のリターンは、資産のみにあらず。社会の形成、お客様の心の形成をも目指すのが、鎌倉投信の流儀です。

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「いい会社」のリーダーに学ぶ
鎌田さんは最後に、今まで投資をしてきた「いい会社」のリーダーに共通している5つの性質についてお話してくれました。
1つ目に、運(縁)が巡ってくるまで絶対諦めないこと―成功の理由に「運が良かった」とリーダーたちは口を揃えますが、それはその運が巡ってくるまで地道にやり続けてきたからこそ。また、純粋な動機の元には、縁はおのずと生み出されていきます。
2つ目に、勉強熱心であること―読書は、自分の可能性を拓く土台となる価値観を築き、さらに自分の生まれた意味や使命を知るきっかけとなるものです。
3つ目に、謙虚であること―人の言葉に素直に耳を傾け、礼を正すと、その真心が相手に届き、新たな縁も生み出していきます。
4つ目に、感謝する心や愛を持つこと―人のために時間を使って徳を積むことが、人についてきてもらうためには大切なことだと鎌田さんはいいます。また、ある社長曰く、「社長の仕事とは会社内の笑顔やいい雰囲気を作ること」。無理に引っ張っていこうとせずとも、リーダー自身の人間性の良さが、周りの信頼や共感を形成していくのです。
そして5つ目に、行動すること―それも心を伴っていて、言動が無意識に一致している状態であること。それができている人は「本物」であると鎌田さんは語ります。

自分自身の大義と、周りにいる多くの人たちの想いを胸に、会社に関る全ての人の幸福を探求する鎌田さん。その姿勢に圧倒され、紡ぎだされる一言一言から多くを学んだ、実りの多い1時間半でした。


ライフヒストリーや気づきのシェア
次に参加者3~4人で1グループを作り、今年1年を振り返るワークショップを行いました。

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今回は年末も近いということで、参加者それぞれが2018年の自分を振り返り、どんな1年でどんな気づきや変化があったか、グラフに書き起こして紹介し合いました。大きな転換期を迎えていたり、感情に激しい変動があったりした参加者もいて、各グループごとに盛り上がっていました。

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その後、来年をどんな年にしたいか一言で表現しました。各参加者から前向きな抱負が述べられていました。

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チェックアウト
最後は、チェックアウトとして、グループごとに一人ひとり今日の感想を話しました。
参加者からは、「鎌田さんの話を聞いて今すぐ動き出したい気持ちになった」「来年も一歩踏み出したい」といった感想が出されました。

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総括
社会や人々のよりよい未来を心から願い行動する鎌田さんの、一つひとつの言葉が参加者の胸に深く刺さり、終了後には多くの人が「楽しかったー!」といきいきしていたのが印象的でした。ひときわ感動や共感を呼んでいた今回の講座だったように思います。
2018年の終わりとともに、マイプロジェクト道場2期も全ての講座が終了しました。「やりたいこと」に向かって踏み出していく人たちが、ありのままの想いを打ち明け、仲間に支えられながら一歩踏み出していける、その土台の場となっていれば幸いです。来年以降もますます多くの人たちにそんな場を提供していければと思います。


(レポート:陶山智美)

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