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【レポート】こうち100人カイギvol.7〜創る、伝えることで広がる可能性〜


地域で働く100人をきっかけに、まちの在り方や価値を再発見し、ゆるく人を繋げる「100人カイギ」がKochi Startup BASEを拠点として2019年1月よりスタートしています。

ルールは1つ。「ゲストが100名に達したら解散する」。

高知で活躍するゲストを毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただきます。

今回は、2019年7月10日に開催されたこうち100人カイギvol.7の様子をレポートします。

高知県内外、多様な分野で活動する5名の方々をお呼びし、それぞれが自分自身の生き方や働き方について話題提供を行い、参加者とともにネットワーキングを行いました。


各者各様の想い
登壇者1

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竹花綾さん (トマトハウスナカムラ/花咲社)
1988年生まれ。長野県出身。美術大学油絵専攻を卒業後、2012年に高知県佐川町に移住。臨時職員として約4年間町の観光協会に勤務し、広報などを担当する傍ら、家業のフルーツトマトの販売や商品のデザインに取り組む。2017年、観光協会を退職し、田舎の小さなデザイン屋として、個人事業でデザインの仕事を始める。美術作家活動では須崎市のアートプロジェクト「現在地方譚」等に参加。地域に根差したデザイン・創作活動を目指して現在も試行錯誤中。

1人目の登壇者は、トマト農家とデザインの仕事を行う竹花綾さん。
大学卒業を期に高知に移住した竹花さんは、観光協会に勤務する傍ら、須崎市のアートプロジェクト『現代地方譚』に参加、そして家業であるフルーツトマト農家の手伝い、と様々なことに取り組んでいました。観光協会を退職後は「トマト農家の奥さん」という立場だけではなく、地域に根差したデザインの仕事や情報発信を行っています。
ご自身でデザインした「とまずきんちゃん」Tシャツを着て、一つひとつ思いを伝えてくださった竹花さんの話に、参加者の皆さんも耳を傾けていました。

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佐川町といえば、の存在
頼まれたことは多少自信がなくても、「今がタイミングだ」と考え、全力でやりきるという竹花さん。「今あるものを残したい」という想いから始めた情報発信や、デザインの仕事、そして、トマトを通じて生まれる、色んな人との出会い。
このような活動からも、バランスとタイミングを大切にしている姿勢が伝わってきます。
今は、トマトがどのように使われているか、販売されているかがわかるようなお店との関係を広げていきたいと考えています。そして、デザイナーとしては、「佐川町といえば、この人という存在になりたい」と、話してくださいました。


登壇者2

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川鍋達さん (すさきまちかどギャラリー館長)
千葉県出身。美術を専門に学んだのち、ドイツに渡り、研鑽を重ねアーティストとして活動。国内外の展覧会に参加。帰国後、美術教員を経て地域おこし協力隊として須崎市に移住。経験を活かし、まちかどギャラリー運営のサポートに当たる。協力隊任期が終了後、引き続きまちかどギャラリー館長として企画・運営に従事。アートプロジェクト「現代地方譚 アーティスト・イン・レジデンス須崎」のディレクターを務める。

2人目の登壇者は、まちかどギャラリーの館長を務める川鍋達さん。
地域おこし協力隊時代から運営に関わっている『すさきまちかどギャラリー』を起点に、美術にあまりなじみのなかった地域でも、ギャラリーのイベントや『現代地方譚』を通じて、楽しみながら地域課題の解決の糸口をみつけられるように。と活動をされています。
表に出て話すことはあまりないということでしたが、ギャラリーと現代地方譚にかける思いを丁寧に語ってくださいました。

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姿勢と態度を表す
須崎市で行われている『現代地方譚』は今年で7回目。アーティスト・イン・レンジデンスという、作家が地域に滞在して作品を制作する手法を取り入れています。
メンバー内に変化が起こった5回目以降は、アーティスト任せだった地域の課題解決を、地域住民が主体になって取り組むよう、実行委員会を立ち上げ。住民がアーティストを選び、呼ぶ仕組みに方向転換しました。
普段は人が寄り付かない避難所に作品を展示して、整備をし、人が集まる場所にしていく。
芸術に馴染みのない人たちでも楽しさを感じてもらえるように工夫を凝らしました。
川鍋さんは、アートは個人の営みや道楽ではなく、その人の様々な物事に対する姿勢や、態度を表現するものだと話してくださり、それこそが、現代地方譚でやりたいこと。と語ってくださいました。


登壇者3

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森田 浩路さん (陶芸家(もりたうつわ製作所代表〉)
1979年生まれ。高知県土佐市出身。高知県土佐市で陶芸家として活動中。茶碗やカップ、皿など普段使いの食器をメインに、なるべく使いやすく、シンプルな作りを心がけて制作している。ギャラリーを兼ねた工房では、陶芸を交えたイベントを定期的に開催。また、陶芸の楽しさや奥深さを知ってもらう為、学校や保育園、老人ホームといった様々な施設での出張陶芸も開催している。

3人目の登壇者は、ギャラリーのオーナー兼陶芸家として活動する森田浩路さん。はじめは一生をかけてすることはないだろうと思っていた陶芸ですが、就活中に世捨て人の陶芸家に出会い、高知に帰ってきたあと、工房を持つことになります。今は土佐市にある工房兼ギャラリーを持ち、様々な作品を制作しています。
なんと、ゲストトークのあとにはじゃんけん大会が行われ、優勝した方には森田さんが作成したカップがプレゼントされました。

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大失敗からの面白さ
森田さんが初めて陶芸に出会ったのは、大学時代でした。しかし、その時はあまり面白さを感じなかったといいます。
陶芸の面白さに目覚めたのは、大失敗をしたとき。焼き入れの温度を間違え、土が溶岩のようにドロドロになってしまった様子を見て、これは普通のものづくりとは違う。自分の思った通りにならない難しさが面白い。と感じたといいます。
その後土佐市に工房を持ち、併設されたギャラリーでは個展だけではなく、アーティスト仲間を誘った展覧会などもするようになりました
今は新たに須崎の山を借り、まきの窯も準備中だそうで、森田さんのやりたい陶芸にさらに近づいていっているそうです。


登壇者4

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かずさまりやさん (フリーランス編集者(閃光舎)/ こうち食べる通信副編集長)
1994年生まれ。高知県高知市出身。高知工科大学マネジメント学部を卒業後、広島県の出版社へ就職。50本以上の雑誌やWEB媒体を製作したのち、高知県へUターンし25歳でフリーランスの編集者として活動を開始。「こうち食べる通信」の副編集長として高知県を拠点としながら、大阪・福岡・岐阜など県外では映画の公式本の製作にも携わっている。

4人目の登壇者は、フリーランスで編集者として活動しているかずさまりやさん。
学生時代、サークルやインターンシップを通じて伝えることの面白さを知ったかずささんは広島の出版社で就職しました。現在は高知へUターンし、フリーランスの編集者として高知の魅力を発信しています。
真っ直ぐに自身の目指す発信の形を伝えるかずささん。その姿に、参加者の皆さんも惹きこまれているようでした。

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人という媒体
高知に帰ってくるという前提で広島の出版社に就職したかずささん。
企画が面白ければ売れる東京に対して、地方ではいかに人を巻き込み、どれだけ応援してもらえるかが重要になるそう。このような気づきも、地方の出版社にいたからこそ。また、県外に出て仕事をすることで、高知を俯瞰してみることができるといいます。
編集者としての様々な経験を積む中で、大切なのは「人」だということに気づいたかずささん。本だけで伝えることが難しくなる中で、高知で何かが起こったときに「あの子はどうしているかな」というように、自分自身が媒体となれるよう活動を続けています。


登壇者5

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横田 佳歩さん (ブランドプランナー、グラフィックデザイナー)
1992年生まれ。高知県香南市出身。大学でプロダクトデザインを専攻し地域デザインについて研究、2014年卒業後に上京。和菓子メーカーにて地方店舗マネジメントを担当し、複数の地方都市と東京を行き来する。その後都心での地方創生プロジェクトに参画。大きなやりがいと同時に違和感を覚え、「現場で一緒に考える」を軸に都心と地方の2拠点での活動を考え始める。デザインコンサル業を経て今年から東京と地元高知の2拠点で活動を開始。つくること、自然食、人と集まって何かを企てることが好き。

4番目にお話しいただいたのは、東京と高知の2拠点で働く横田佳歩さん。
大学でプロダクトデザインを学んだ横田さんは、和菓子メーカーに就職します。全国を飛び回り店舗のマネジメントを行ってきましたが、体調を崩したことなどを期に、退職。その後、地方創生や、大企業でのブランディングなどの仕事をして、2019年4月、9年ぶりに高知に帰ってきました。
現在は仕事をしながら通信制の美術大学に通っているそうで、どこまでも成長し続けようとする姿に参加者の皆さんも感銘を受けているようでした。

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地域を支える人を支える
地域食材を使ったレストランのリブランディングのひとつとして、見づらいメニュー表の作り直しを行いました。予算がない中で、文字を揃えたり、写真の位置を変えたりして、やれる範囲で改善するだけでも売上があがる様子を体感してきました。このような経験を通じて、デザインやブランディングの仕事は「これまで学んできたことを活かすことで、気づかされることが多くある」と言います。
東京との二拠点で活動されている横田さん。地域を直接支える人になるのではなく、直接支える人たちが伝えきれないことを伝えるお手伝いをしていきたい。そう力強く話す姿がとても印象的でした。


登壇者6


山下裕矢さん (ミュージシャン/ふんどし屋)
1980年高知県香南市出身。10代から音楽に関わりはじめ、20代は会社勤めの傍で活動。35歳の時に独立すると同時に、10年ほど愛用しているふんどしの製作販売もスタート。以来、高知を拠点に県外、海外で音楽活動とふんどし販売を展開。

最後にお話しいただいたのは、ミュージシャンでふんどし屋の山下裕矢さん。サンドイッチパーラーという音楽ユニットで音楽活動やラジオパーソナリティをしたり、ウクレレの先生をしたりと実に多彩な山下さんですが、もっと驚くことに、ふんどしブランド『harenchi』で起業もされています。
今日のカイギでもふんどしを履いたトルソーを会場の真ん中においてお話してくださり、参加者の皆さんもカメラを向けて、興味津々の様子でした。

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ヒーローになる
普段、ウクレレやギターの弾き語り、アフリカンパーカッションの先生もしている山下さん。なんと、会場でウクレレの生演奏を披露。
一曲目は同級生だという森田さんからのリクエストでGreen Dayの『Basket Case』、二曲目は会場からのリクエストでスピッツの『チェリー』演奏してくれました。
「少し演奏できるようになると、ちょっとしたヒーローになれる」そう話す山下さんの演奏のあとには、自然と拍手がわきおこり、その姿はまさにヒーローでした。


ネットワーキング

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登壇者と参加者の垣根を超え、思いでつながるネットワーキングの時間。この時間は、ゆるいつながりを生むという100人カイギの中でも、大切にしている時間のひとつです。

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参加者と登壇者が自由に動きながら、質問や自分自身の思いなどを語りあいました。これまでにない新たなつながりを作る場になりました。

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総括
6人という普段よりも盛りだくさんのゲストトークでしたが、それぞれの登壇者の方の個性が光る、とても活気のある会となりました。
同じ芸術やアート、ものづくりに関わる方でも、それぞれ大切にしていることや、取り組んでいることは異なっていることに面白さを感じました。同時に、目の前の人に対して最高のものを届けたい。という思いは共通しているように見えました。
登壇、参加された皆さんにとって、新しい発見や創作活動へとつながるカイギになったではないかと思います。

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(レポート:檜山諒)


▼こうち100人カイギvol. 8はこちらから。


100人カイギとは
100人カイギは、一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の“身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動です。2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。

お問い合わせ
Kochi Startup BASE
住所:〒781-0084 高知県高知市南御座90-1 高知蔦屋書店3F
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/

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