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【ジャーナル】[Part3]こうち100人カイギ vol.15 藤野 幸彦さん(一般社団法人 創造的教育協会 理事・教材開発室長)/三谷 真平さん(クリエイター/フォトグラファー/Webライター)


2019年1月よりKochi Startup BASE®︎にて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。

今回は、2020年11月24日(火)にKochi Startup BASE®︎会場と、オンライン上の2箇所で開催された、vol.15に登壇いただいた5名、1人1人の話にフォーカスを当てています。

参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。


<こうち100人カイギ vol.15の登壇者>

5名それぞれの話を
もっと深く知りたい方は、こちらの記事もチェック!
※お名前をクリックすると、その記事に飛べます。

池田 詩乃さん(Part 1掲載)

今村 かをりさん(Part2掲載)
岡田美保さん (Part 2掲載)

藤野 幸彦さん (Part 3掲載)
三谷 真平さん (Part3掲載)



4人目の登壇者は、一般社団法人 創造的教育協会 理事・教材開発室長の藤野 幸彦さん。

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大阪府吹田市出身。1986年生まれ。
文学博士(大阪大学)。生まれも育ちも大阪だが関西弁は話せない。『思考』をテーマに内外の研究成果を調査し学材・学育プログラムの開発・普及に勤しむ傍ら、大学講師として倫理学や道徳教育の講義を担当する哲学研究者。大阪時代には「子ども哲学カフェ」の講師役を務める等、出張講義や講演活動も行う。愛読書はロラン・バルト著『明るい部屋』で、その影響もあり20世紀の映画論・写真論を研究中。


哲学にのめり込む日々

「私達は後ずさりしながら、未来へと入っていく。」というフランスの文学者、ポール・ヴァレリーの言葉を紹介するところから始まった藤野さんのお話。今回は、自身の好きなこの言葉に絡めながら、想いや活動について語ってくれました。
藤野さんは大阪府吹田市の出身。哲学を学ぶため大阪大学に進学し、19歳の頃にそれ以降の研究対象となるスピノザに出会いました。大学卒業後はそのまま大学院へ進学し、博士号を取得。その後、大学の非常勤講師を務めながら、小学生向けの哲学カフェの開催、趣味の写真や映画に関わる活動を行うなど多方面に渡る活動を行いました。そのうちに、高知に来てほしい、というオファーをもらい、ご縁あって2019年より高知県に移住。『創造的教育協会』に所属し、2020年1月からは同協会の理事・教材開発室長に就任しています。

高知に未来をつくりに来た

『創造的教育協会』は、オーテピアのすぐ横、柳町に事務所を構えています。『創造的教育協会』と聞くと、とても堅苦しいイメージを受けますが、大きく捉えると教育にまつわる事業をしています。主に「思考」ということをひとつのテーマに、「考える」という、老若男女問わず行っている能力をどのように培っていくか、ということを研究。その結果を幼児教育に活かしたり、幼稚園や中学校、高等学校にメソッドの提供をしたり、研修事業などを行っており、さらには、教材の開発や販売なども行っています。活動内容の幅広さからもわかるように、「教育と名のつくものはすべてやる」というかなり気合の入った団体だと話しました。
数ある活動の中でも、藤野さんがメインで関わっているのは、教育プログラムに関する研究・調査です。例えば、学習指導要領は、策定の際、専門家によって深く議論され出来上がっています。しかし一方で、専門家の意見が反映されすぎて、議論を知っていないと内容がつかみにくいといった部分もあります。そういった分かりにくい部分をより深く調べ、その内容にあったものを提案するといったことも行っています。

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「教える」ことと「学ぶ」ことの違い

長年、教育に携わる活動をしている藤野さんですが、実は『教育』という言葉はあまり好きではありません。なぜなら教えるということは、「教え、育てる」ということであり、教える側に主体があるからです。
学校の授業のように、既存の正解を覚えることを要求するということはある種、教育の典型的な形。しかし、本来は『学育』が必要だと藤野さんは考えます。教える側ではなく、子どもたちをはじめとする学習者が、自ら学んで育つためのプロセスを育てる必要がある、と活動の拠点である『創造的教育協会』として、そして藤野さん個人としても強く感じています。

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「自由」をつくるために

いながら話を続けました。「教える」ということは、過去に正解があると信じ込み、過去しか見ないままになりかねません。そのまま学ばないでいると、どんどん新しいものが通り過ぎていき、手を出すことができない状態に。そんな状態を続けていると、自分にラベルを貼ることにもつながってしまい、「自分はこういう人間なんだ」と感じ、たちまち自由が無くなってしまいます。
一方で、「自由」が自分勝手で、個人しか納得できないものであると、それもまた意味がありません。だからこそ「私達」という単位を作る必要があります。そのために『創造的教育協会』や藤野さんは、みんなで学んでいく環境を、特に子どもたちに向けて作っていきたいと話します。未来は何があるかわからないからこそ素晴らしい、そのわからないものに向かって進んでいきたい、と締めくくりました。


5人目の登壇者は、クリエイター/フォトグラファー/Webライターの三谷 真平さん。

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高知県香美市出身。1994年生まれ。
土佐塾中学高等学校から香川大学教育学部へ進学。臨床心理学を専攻しながら、Webライターと雑貨のネット販によるノマドワーカーを経験。既存の就活スタイルも「働き方」の1つの選択肢でしかないと考え、自分の価値観によりマッチした道を探すように。卒業後は地元の香美市役所に就職。今年からITベンチャー企業に転職し、現在はSNSマーケティングの業界で働いている。会社員以外にも、フリーでフォトグラファーやWebライター、イベント運営など、活動は多岐にわたる。気まぐれであるため、将来どうなるかは自分自身が1番分かっていない。

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臆病であることが原動力に 

香美市出身で、県外の大学に進学した後、地元の公務員から民間企業へと転職するという、高知では珍しいキャリアを持つ三谷さん。
現在、SNSマーケティングの企業でクリエイターとして働く傍ら、フリーでフォトグラファー、Webライターを始め、イベント運営やSNSでの高知の魅力発信などを行っています。これらは全て「人×情報×機会をつなぐことで、高知に貢献したい」という思いから行動。登壇のときに表示いただいたスライドに使用している写真も、すべて三谷さんが撮影したものです。
大学生時代から、好きな場所で自由に働く、ノマドワーカーのような経験をしていた三谷さん。その経験から、自分の価値観にあった働き方をどのようにするか意識するようになりました。高知に帰りたいと思っていたものの、情報がなく、地元にいながら情報を集める期間が必要だと感じ、仕事をしながら積極的にイベントなどに参加していました。
幅広く活動を広げている三谷さんですが、元々はとても臆病だと言います。極度の人見知りで、常に不安を抱えている。そんな自分を変えたい、という思いが行動を起こす原動力になったと言葉が続きました。

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雰囲気を伝えられる写真

そんな三谷さんが写真に惹きつけられた理由は、ほんの些細なきっかけでした。
「なんとなく撮った夕焼け空を、綺麗に残したい」という思いから、身近なアプリで加工したところ、そのままの写真よりも、より美しく伝えたいことが伝わる写真に変化したのです。事実だけでなく、感じ取った音や、空気など、編集を通して自分の感じたことを伝えられる写真の魅力に気づいた三谷さん。そこから写真が、大切な伝えるツールのひとつになりました。
自身にとって、もう一つの大きなツールであるのがSNS。自分では何気ない日常を伝える発信が、誰かにとっては必要な情報になるSNSの可能性に魅力を感じました。たとえ何気ないことでも、情報を発信することは、自分でない誰かの行動のきっかけになる。そう考えると、とても価値があることだと気付き、自分の好きな高知のことを紹介していこうと思うようになりました。


SNSで広がり、つながる

SNSを通じて実際につながりが広がった例として、いの町で行われた『夜の紙博』というイベントがあります。このイベントは毎年行われていますが、2020年に企画実行していた方とSNSを通じて知り合い、その想いに共感し、運営メンバーに加わりました。更にその後、SNSを通じて想いに共感した10代から20代の若者10名ほどが実行メンバーとして加わり、活動の幅は拡大。結果的には、イベント史上最高の来場者数となり、かつて無いほどの大盛況を記録しました。
また、Instagramの投稿を見ていたフォロワーさんから、カメラマンを探しているという話が来たり、その撮影現場で出会った方から、また次のお仕事の依頼が来たりと、SNSで自分のできることを発信していたことがきっかけで、フォトグラファーとしての仕事にも繋がっています。


「今」を組み合わせたその先に

三谷さんが高知をSNSで紹介し始めた理由は、まだまだ知らない高知を知りたい、と思ったことや、自分の好きなことで、何かに打ち込めることをしたいという気持ちでした。最近では写真やSNS運用にとどまらず、高知で活躍する大学生を紹介する『Linker』というアカウントや、写真で盛り上げたいという思いを持ったメンバーが集まった『高知フォトチーム(仮)』など、様々な企画にも関わっています。
高知で活躍したい、という思いがある一方で、将来の目標が決まっていないことに負い目を感じていたときもありました。しかし今では、自分の感性を大切にして、自分が「今」好きと感じられることを積み重ねていき、自分にしかない形を楽しめるようになりたい、と今後の展望も話してくれました。




【総括】

藤野さんの、19歳から哲学にのめり込み、現在も熱が冷めることなく、研究や活動に真摯に向き合う姿に、とても心を打たれました。また、未来を見据えて活動している様子にも尊敬の念を抱きました。
臆病な自分に危機感を感じ、変わりたかったという三谷さん。コツコツとSNSの運用を継続し続けている偉大さに加えて、それらの活動を続けることで広がった繋がりから、更に在りたい自分の姿に近づいていっている様子がとても印象的でした。

どちらも自分自身の感情や、大切にしていることに寄り添いながら、目指したい社会に向けて着実に歩みを進めているように感じました。


(レポート:檜山 諒)


100人カイギとは 
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の"身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。


問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒780-0822 高知県高知市はりまや町3-3-3 GAIAビル2階
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/


皆様からいただいたサポートは、今後の活動・運営に使用させていただきます。