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【レポート】事業創造アイデアソン ―“未来のありたい姿”から高知の未来を担う、観光・ヘルスケア領域の事業アイデアを考える―


事業創造アイデアソンとして、新しい観光の在り方や、中山間地域の未来を支えるヘルスケアサービスなど、課題先進県・高知ならではのアイデアを生み出すグループワークを行いました。

2019年12月16日、「事業創造アイデアソン」がKochi Startup BASE®(以下、KSB)にて開催されました。このイベントは、「高知の未来の観光」、「高知の未来を支えるヘルスケア」をテーマに掲げ、10年後、20年後の高知を想像し、新しい事業アイデアを参加者と一緒に考えるアイデアワークショップとして実施しました。

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<ファシリテーター>
佐々木哲也 氏(株式会社富士通総研 シニアマネジングコンサルタント)

1980年神奈川県生まれ。2003年法政大学卒業後、富士通総研入社。主にメーカー、通信キャリアにおける業務プロセス改革や構造改革支援を経て、新規事業の企画・開発支援および事業開発組織の立ち上げ・促進を支援。価値創造のプロセスやメカニズムの研究・開発などを手がけ、昨今ではセクターを越えたオープンイノベーションのプロデュースなども手掛ける。
著書に「0から1をつくる まだないビジネスモデルの描き方」(共著)、「徹底図解 IoTビジネスがよくわかる本」(共著)


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佐々木さんのレクチャー
最初にファシリテーターの佐々木さんより、どんな会社で何をしているのかという自己紹介を兼ねたレクチャーがありました。
株式会社富士通総研に所属し、企業や行政、公共に対するコンサルティングを中心として事業を行っています。コンサルティングサービスというと、相談を受けて話を聞き、その都度解決策を考案して提案するイメージを持つ人も多いのですが、目的や課題領域によっては解決アプローチを企画・開発し、サービスとして提供することもあるそうです。佐々木さんはコンサルティングサービスの開発をいくつも行ってきています。

続けて、アイデアソンについての説明がありました。アイデアソンは、色々な人とアイデアを生み出す方法論です。今回のアイデアソンは、今この場にいる参加者全員が初心者。これが大事なことです。お互いに学び合ったり、教え合ったりできる環境ができました。「こういう場でないと出会わない関係性でもあるので、ぜひこの場を活かしてほしい」と話します。

佐々木さんが行っている事業やプロジェクトを少し詳しく話してくれた後、テーブルごとに自己紹介をすることになりました。名前と所属、今の気持ちに加えて、アイデアソンのテーマに応じて、未来の持ちもので自分を表現するワークが同時に行われました。

自己紹介では、参加者それぞれの価値観や大切にしていること、20年後くらいを想定したときに、どれくらいの前提を置いているのかを知ることが出来ます。「“未来のありたい姿を考える”という未来洞察という行為をするので、日常の凝り固まった固定観念に縛られることなく、自由にメンバーと話し合ってもらいたい」と話し、アイデアソンの心がけを伝えました。

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それは「コンフォートゾーンを抜けださないと、人は学習できない」ということ。コンフォートゾーンとは、日常であり、未知のことや挑戦に出会うことがない状態。その次の段階はストレッチゾーン。今まで接点を持っていなかった人と出会い、日常で得られない刺激を得ることが出来る状態。次の段階はパニックゾーン。未知のものが多すぎて、身動きを取るのが怖いくらい、何が起きるか分からない状態。こうなってしまうと、学ぶことは出来ません。
今回、目指すのはコンフォートゾーンを抜けだして、ストレッチゾーンに追い込むこと。失敗してもこの場限りなので、未知のものに出会うことや挑戦することを楽しむ、とアドバイスを送りました。

実施するアイデアソンのテーマは「“未来のありたい姿”から高知の未来を担う、観光・ヘルスケア領域の事業アイデアを考える」。事業創造につながる新しい事業を考えよう、というのが、今回の根底の考え方です。テーマを選定した理由は、観光とヘルスケアは未来のデータが沢山あり考えやすいという、相性の良さを挙げました。

なぜ、未来のありたい姿から考えるのか、ということについても、GmailやYoutubeなど様々な事例を紹介しながら「今は当たり前になっているサービスでも、数年前は誰も想像していなかった」と話しました。

時代の変化によって、WEBが発達し、事業創造や起業に関する学問や情報にアクセスしやすくなり、ユーザーや協力者の獲得にかかる時間コストも下がり、資金調達の手段も増えました。世界中から仲間を集められる、あらゆるものを提供できるようにもなり、独自のネットワークがなければ行くのが大変だった、海外への進出も容易になりました。昔では考えられなかったことです。加えて、世界から見た起業の現状や起業家についての情報などを共有してくれました。

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佐々木さんのレクチャー後に行う「ありたい未来の姿から考える」ワークについて、関わりのある企業の例を用いて「ありたい姿」「世の中をもっとこうしたい」「お客さんのこんな課題を解決したい」というワードが出されました。

続けて、事業創造の大事なことについての話題に。
1番大事なのが「課題や要求をしっかり見つける」「どんな困りごとを解決したいのか」「どうしていきたいのか、どうしてあげたいのか」という3つのポイント。
2番目は、今の困りごと、今のニーズに応えるだけでなく、これからの世の中、未来がこう変わっていくからこういう姿にしていきたい、という「ビジョンやありたい姿を描く」こと。この1番と2番がちゃんと回っていないと、目の前の課題を解決できても対処療法になり、すぐに真似をされてしまいます。
3番目は、問題解決をちゃんと捉え、描いたありたい姿を「実現するための解決策」です。「ほとんどの人が見落としがちな解を考えてみるのが大事」だと言います。こうしたことをやらないと、誰もが知っていて現状ありきで、皆がチャレンジしている、もしくは確立しつくされているものになりがちになり、事業創造にはなりません。

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佐々木さんは「良いアイデアは問題と解決方法がフィットしていること」と話し、「顧客の問題を分かっていますか?」、「顧客は誰ですか?なぜ解決しないんですか?」、「解決すると顧客にとって嬉しいことは何ですか?」の3つの質問を投げかけました。
その解決策は「どうやって、誰が、どのように、どんな手段でということがリーズナブルにフィットしている」こと。

最後のアイデア発表をするときには「誰の、どんな問題を解決するのか。そのためにはどんなユニークな解決方法なのかというところを意識して、アイデアを考えてほしい」と助言しました。データで出ている統計数字や起こると想定されている大きな課題ではなく、特定の個人や問題にしっかりフォーカスすることが鉄則です。
まずは、現場に足を運び、顧客自身がまだ気づいていない潜在的なニーズや課題を見つける。必ずしも、顧客が答えや望むものを知っているわけではありません。潜在的には答えを知っていて、本当の問題や解決すべきことを提示されて「そうだった」ということの方が多いため、顧客の要求を満たすものを提供するだけでは不十分だ、と話しました。

参加者はメモを取ったり、頷いたりと真剣な様子で佐々木さんのレクチャーに聞き入っていました。このあと、グループワークがスタートしました。

グループワーク
アイデアワークショップのテーマは「“未来のありたい姿”から高知の未来を担う、観光・ヘルスケア領域の事業アイデアを考える」。個人の問題意識を問いに昇華する、といったテーマのワークを実施しました。ペンがスラスラと動く方、少し悩んだ表情の方など、参加者の様子がうかがえました。その後、観光とヘルスケアに分かれ、ワークの内容を共有しました。グループを再編したあとは未来のデータを見たり、発想法を学んだりしながら、アイデア出しをしていく時間となりました。

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ヘルスケアと観光の3グループに分かれた後は、模造紙を使用して未来洞察のワークを実施しました。その後は全員でワークの成果を共有しました。さらにアイデアを深めていくため、洞察ポイントや思考の仕方などのレクチャーがありました。
誰もが思いつくものではなく、「その手があったか!」という新しいアイデアや見過ごしがちなものを見つける手法も紹介してもらい、資源の洗い出しワークに取り掛かりました。ワーク後は、再び参加者全員でアイデアを共有しました。

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チェックアウト
アイデアワークショップのあとは、それぞれのグループが考えたアイデアを発表しました。参加者からは「自分だけでは思いつかないたどり着けないアイデア、発想に出会いました」、「アイデアワークショップには初めて参加しましたが非常に勉強になりました。普段、意見の交換をするころがあまりないので全く想像していなかった話を聞けて良かったです」という満足度の高い声が聞かれました。

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※総括
今回の佐々木さんのレクチャーには、何か新しいアイデアを形にするときに、取り入れたい考え方が沢山ありました。これまでの経験に裏打ちされたアドバイスやヒントの数々は参加者にとっても多くの気づきや発見があったようにも思いました。


(レポート:上野 伊代)


お問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒781-0084 高知県高知市南御座90-1 高知 蔦屋書店3F
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/

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