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【ジャーナル】こうちマイプロジェクト道場 #1 ~自分の思いを見つめ、マイプロジェクトを描く~


「こうちマイプロジェクト道場」は、一人ひとりが自分のライフヒストリーと紐づいた自分自身が本当にやりたいこと(will)に向き合い、仲間と共にその第一歩を踏み出し、そこでの気づきを対話を通じて深め、さらにアクションを重ねながら、起業や事業創造、プロジェクト実践を進めていく連続講座です。

今回は、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきました。

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馬場加奈子さん(株式会社サンクラッド 代表取締役)

2011年 学生服リユースshopさくらやopen。
3人の子育て中のシングルマザーがどこにもなかったビジネスに着目し地域共感型ビジネスを展開し現在さくらやパートナーを全国52店舗に拡大している。
自身の経験からお母さん、女性の働き方について発信し高松信用金庫と女性起業応援塾を開催しメンバーは120人となる。日本商工会議所女性起業家大賞史上初の2部門優秀賞、日経WOMANオブザイヤー受賞。がっちりマンデー、ブラマヨのウラマヨ、クイズやさしいね、その他の人に会ってみた、NHKニュースチェックイレブン、NHKニュースウォッチナイン、NHKおはよう日本他に出演。

きっかけは「家族」

33歳のとき、シングルマザーとして、3人の子育てをしていた馬場さん。
一番下の子を保育園に入れられず、チラシ配りをしてお金を稼いでいました。
しかし、その収入で家計をやりくりするのは厳しく、何度もガスや水道を止められていたころを振り返りながら、悲観的になりそうでも、子供たちがいたから必死に工夫して、頑張れたそうですが、ママ友からのランチの誘いに、なかなか返事をできない経済状況に疎外感を感じていました。

さらに高松市は、小学校から制服が必要な土地柄。どんどん成長する子どもたちの制服の買い替えは、苦しい家計を一層、圧迫していきました。
「また大きくなっちゃったの」という、買い替えの悲しさから、子どもの成長を喜んであげたいのに、喜べない。
習い事などもさせてあげられないもどかしさ。そんな気持ちが入り交じり、本当に子育てが出来るのだろうか、という不安を覚える日々。

それでも馬場さんには知的障害のある長女が生まれた時から、心の奥に強い思いがありました。
それは「この子と一緒に働ける場所を作りたい、そのために起業したい」という信念でした。


失われる「おさがり」コミュニティ 

子どもたちの成長は早く、1年後に制服が着られなくなるのは、当たり前のこと。「冬服なんて半年しか着ないし、もったいない」と頭を悩ませていました。
ふと、自身の幼いころを思い返すと、近所の知り合いからお下がりをもらっていた記憶が蘇りました。しかし、働くお母さんが増えたことで、学校行事などで話す機会が減り、気軽に頼めるような付き合いのあるお母さんがいません。
たとえもらえたとしても、どんなお礼を返したらよいのかも分からない。そんな状況にママコミュニティや、おさがりネットワークの希薄化を実感します。

制服の悩みをお母さんたちに聞いてみると、制服をゴミやバザーに出したら、誰が持っていくのか分からない、趣味で着る人に届いてしまうのではないか。といった不安にあふれていました。
また制服の問題に目を向けているうちに子供の貧困にも目が行くようになり、これまでは自分だけの悩みだと思っていたことが、実は多くの人の悩みでもあったのだと気づきます。


お金よりも大切なもの

自分の悩みがみんなの悩みだと気づいた馬場さんは、制服のリユースショップで起業することを決意しました。早速、起業のための勉強をしようと、参考になりそうなお店を探し始めますがなかなか見つかりません。
やっとの思いで見つけた池袋のお店は、薄暗い店内に制服が1着10万円で売られているようなところ。
自分がやりたいのは、制服を1着10万で売ることではなく、困っている家庭の助けになるようなこと。
それなら自分でやるしかない、と馬場さんは100人のお母さんにヒアリングをしました。
応援者を作りたい、やりたいことを理解してくれる人を増やしたい。そんな思いとは裏腹に、これまでにない事業に対して、周りの視線は冷たかったといいます。

営業に回る先で、社長から経営や起業のことについてアドバイスをもらおうと考え、保険会社で働いていたとき、どんどんお金が稼げるようになる一方で、仕事が忙しくなり、家庭を顧みる余裕がなくなっていた馬場さんは、子どもたちの喧嘩もお菓子を買い与えて終わらせてしまう「お金で解決するお母さん」になっていました。
そのことに気づいた馬場さんは、子供たちと一緒にいる時間を大切にできる仕事にすることを決めます。

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お店のカウンターから見えること

とりあえず1年頑張ろう。そう自分に言い聞かせて、小さく制服のリユースショップ『さくらや』を開業した馬場さん。
お店を始めてみると、制服に困っている人がとても多いことが分かってきました。
小学校1年生から6年生まで同じ体操服を着ている子や、高校入試に受かったものの制服が買えない子。そういった子供たちのために、付き添ってくるソーシャルワーカーや、領収書を切らずに買っていく先生、そんな光景をいくつも目にしました。

また、『さくらや』は、ママたちの居場所としても役割も果たしています。
誰かに聞いてほしいけど、誰に話してよいのか分からない心の叫び。
そういったお母さんたちの声を聞き、時には自分たちの困っていることを相談することで、だんだんと、地域の中で支援のコミュニティが生まれていきました。
例えば、制服の洗濯は障がい者施設に依頼し、刺繍とりは、おばあちゃんたちに1つ200円で依頼しています。お店側は作業が楽になり、障がい者施設の方やおばあちゃんたちは楽しみながら、お給料ももらえる。
そんな循環が生まれる中で、『さくらや』はみんなから応援される店になったといいます。


広報はお母さんたちが

小さく始めた「さくらや」の年収は134万円、赤字は200万円。
この状況で、もっとお店を認知してもらい、制服を集めるためにはどうしたら良いのか、馬場さんは考えていました。
そのとき頭に浮かんだのが、販売と買い取りをスムーズにする、ポスレジシステムの導入。

香川県のビジネスチャレンジコンペで優勝すれば、賞金の300万円で実現することができます。
出場した馬場さんは見事優勝。ポスレジシステムを導入することができました。同時に、馬場さんの『さくらや』での活動は新聞に取り上げられ、次第に様々なメディアからの取材が増えていきました。
取り上げられた回数に比例してお客さんも増え、問い合わせの連絡も急増します。
さらに、お母さんたちの口コミも増え、今まで不安や怪しさであふれていた声が、「こんな店が欲しかった」という声に変わっていきました。
今ではお母さんがお母さんを呼ぶ、そんなお店になっています。


さくらやがやるべきこと

母親の視点で、今あることをどうやって変えていくかを日々考え、お母さんと子どものための店として、躍進していく『さくらや』。
さくらや高松で働くスタッフは、自分たちがお店のお客様を通じてやりたいと思う地域支援や子ども支援をするために、収益を頑張って作る母の集団です。と、馬場さんは語ります。
お母さんだから出来ない、と諦めるのではなく、出来ることを考えていくことで新し発見が生まれる、と話します。

これから始まる赤ちゃん連れのカフェも同様。カフェの売り上げを重視するのではなく、そこでお客さんと話をすることによって、お母さんたちの今を知り、今後『さくらや』がやるべきことを洗い出すきっかけにしていきます。

「諦めないのが大事。私も一緒に走っているから、みんなも一緒に頑張ろうよ」最後に馬場さんはそんな応援メッセージを伝えてくれました。

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マイプロのシェア
次に、マイプロシートの人生グラフを使用したワークを行いました。これまでの人生を振り返り、感情の浮き沈みをグラフに表します。共有では、2人1組でペアになり、グラフに沿って話しながら、お互いにもっと聞きたいところ、疑問点などを話し、自分自身の思いや大切にしていることなどを見つけ出しました。

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チェックアウト
最後に、チェックアウトを兼ねて、LEGO®SERIOUS PLAY®(LSP)メソッドを用いた振り返りをしました。「理想の自分」というテーマで、頭で考えるのではなく、手を動かすことを通して自分自身の内面と向き合っていくワークです。
自身のつくった作品を見ながら、作品の意味や役割などを話していきます。参加者の皆さんからは、「みんなを引っ張っていけるように」、「笑顔を生みたい」、「軸が明確でないことが自分の軸」といったように、三者三様の意見がでました。

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総括
馬場さんのキーノートからは、自身の「家族を大切にしたい」、「同じ思いを持っている人のためになることをしたい」といった、思いを起点にあきらめずに行動をおこす姿が印象的でした。その後のマイプロのシェアでは、参加者の皆さんもワークを通して、自身の心が動くキッカケや、普段何気なく意識しているものを見つけ出しているようでした。私自身も、これまでに人生グラフを書いたことは何度かあったのですが、その時の自身の気分や体調、経験によって毎回異なるグラフが出来上がります。共有の際にも、ワークの相手や、質問によって気づきが異なり、今回も今までは気づかなかった新しい自分と出会えました。
これからの講座を経て、参加者の皆さんがそれぞれのプロジェクトをどのように形にしていくのか、とても楽しみになりました。


(レポート:檜山諒)

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