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【ジャーナル】[Part2]こうち100人カイギ vol.14 陶山 智美さん(おすそわけ食堂まど 店主)/竹村 俊斗さん(四万十町役場企画課広報情報係 広報・シティプロモーション担当)


2019年1月よりKochi Startup BASEにて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。

今回は、2020年10月27日(火)にオンラインにて開催された、vol.14に登壇いただいた5名、1人1人の話にフォーカスを当てています。

参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。

<こうち100人カイギ vol.14の登壇者>
5名それぞれの話をもっと深く知りたい方は、こちらの記事もチェック!※お名前をクリックすると、その記事に飛べます。


大鳥 愛さん(Part 1掲載)

陶山 智美さん(Part2掲載)
竹村 俊斗さん (Part 2掲載)


吉岡 亮さん (Part 3掲載)
和田 栄治さん (Part3掲載)



2人目の登壇者は、おすそわけ食堂まど 店主の陶山 智美さん。

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鳥取県出身。中学生の時に農村の衰退や食料問題に関心を持ち、現在高知大学農林海洋科学部に在学中の22歳。中山間地域の農業を盛り上げたいと様々な活動をする中で、生産現場の課題のみならず消費者側の抱える課題にも気付いたことをきっかけに、日々の食事から課題解決を目指す場所の立ち上げを決意。2020年9月より香美市で日替わり晩ごはんを提供する食堂を運営している。好きな食べ物は炊きたての白米。

好きなことをして育つ

陶山さんは鳥取県出身。大学進学を期に高知に訪れ、現在、農業や地域作りについて学んでいます。まず初めに自己紹介としてご自身の今行っている活動について話してくれました。昼は農業のバイト、夜は間借りしている店舗で夜限定の食堂を開き、空いている時間には、子ども食堂のボランティアも行う多忙な日々。
元々幼少の頃から、畑仕事や自然の中で遊ぶことが好きで、食に関することや、文章や絵など何かを自分の手から作り出すことが好きでした。そして、何より一番好きだったのは、人に喜んでもらうこと。好きだったことを思い返し、総じてみると全て今行っている活動に繋がっており、「好きなことしかしていません」と笑いました。

作り手との繋がりを感じられる場所に

現在、たくさんの活動をしている陶山さんが、今一番力を入れているのが、夜限定の食堂『おすそわけ食堂 まど』です。この食堂では、市場では規格外となって売れないものや売れ残ったものを集め、一汁四菜の日替わり定食にして提供しています。ただ提供するのではなく、食堂を運営する上で心掛けているのは、『人との繋がり』を感じてもらうこと。毎日手書きで「今日の野菜は〇〇さんからです」とコメントを添えたり、お客さんが訪れたら「おかえりなさい」と迎えたりと、誰かとの繋がりを感じられる場所になるよう工夫を重ねています。
また、食に関しては『まずはしっかり食べてほしい』という強い想いがあります。たくさんの農家さんのおかげで、安価で種類豊富なメニューの提供が出来ている食堂。陶山さんは農家さんたちに、お金だけではなく、「美味しかった!」などといった、お客さんからの生の声を伝えることで応援していきたいと言いました。

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誰もやらないスキマをやってみる

今かっことなる思いを持って挑んでいる食堂の運営。どうしてこの考えに至ったかというと、その答えは今まで積み重ねてきた経験の中にありました。田んぼや山が身近な田舎で幼少期を過ごし、時には農業の手伝いもすることもあった陶山さん。当時は、「しんどいし、腰も痛くなるし、嫌だな」と思うこともあったと話します。しかし中学の時、社会科の授業で世界の貧困事情を知り、衝撃を受けました。それに加え、自身の住む田舎をはじめとする農村風景が存続困難になっていることも知りました。「自分のやりたいことはなんだろう」そう考えて選んだのは、誰もやりたがらないこと、農業の世界に進むことでした。
中学卒業後、高校は農業学校に進み、農業や畜産について学びました。世界に目を向けるか迷った大学進学の道も、恩師の一声がきっかけで、中山間地域を元気にしたいと決意し、高知大学に進学。学校内外で様々な経験を積み、たくさんの農家さんと知り合うことで、細々と営みを続けて地域を支えている農家さんたちを支えたいなと思いを募らせ、今の活動に至りました。

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今日もこの先もあなたとともに

農家さんを応援する上で、経済的な理由や、忙しくて時間がない、面倒くさいなど、食べてない人が多すぎる今、いくら作り手のストーリーを伝えようとしたところで意識の高い人にしか届かないことに気づき、まずは消費者の一番身近な『食べる』を整えようと食堂を始めた陶山さん。まだ取り組めていませんが、食堂から雇用を生むことや、子どもからお年寄りまで幅広い年代の方が集う地域の拠点にすることなど、食堂から地域の課題にアプローチしていきたいと考えています。
トークの最後には、最終的に目指している自身のゴールについて教えてくれました。
それは、『あなたと私が、今日もこの先も、心身を満たす食卓を囲めること。』
自分たちと切っても切り離せない、毎日の生きる力を支えている『食べる』ことを大事にしながら、今日もこの先も誰かと幸せに生きる世界を作りたいと考えています。ひとつの家族から、地域、国、最終的には世界にまで発展させたい大きな目標だと、食堂に対する強い想いを語ってくれました。



3人目の登壇者は、四万十町役場企画課広報情報係 広報・シティプロモーション担当の竹村 俊斗さん。

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1996年12月3日生まれの23歳。高知県四万十町生まれ四万十町育ち。
高校卒業後、役場に就職。健康福祉課→企画課まちづくり推進室→企画課広報情報係。広報紙の作成、動画制作、チラシや通知書のデザイン、SNSでの配信などを担当。広報は、伝え方と伝わり方次第で、人を元気にできるチカラがあると信じている。魅力がたくさん詰まった四万十町で、まずは隣にいる人を、そしてまちの人を、そして日本の未来を元気にすることを目指し奮闘中。最近のブームは、広告コピーを見ること。

S N Sの有効活用

四万十町で生まれ育ち、現在、同町の役場で広報担当として働いている竹村さん。トーク冒頭では、自身の住む四万十町の美しい景色や美味しい食べ物について話してくれました。役場というと、堅いイメージを持たれることも多いですが、竹村さんは様々な媒体でチャレンジをしています。町外の方向けには、S N Sを使ったプロモーション。視覚的に情報を伝えることに特化しているInstagramを使って、四万十町の魅力について日々発信をしています。また、今年の春はコロナウィルスの影響にて、給付金をはじめ、様々な情報の発信が必要となりました。どうしたらより多くのひとに届けられるかを考えたとき、竹村さんが思いついたのは、全世代が利用しているS N Sツールの『L I N E』の利用。『L I N E』なら高齢の方も使っている方が多いので、町民にも情報が届けられるのではと思い、4月後半に『四万十町公式L I N E』を立ち上げ、町民に向けて情報発信をしています。また、『L I N E』を使って、申請など役所に来なければできないことを減らすことができたら、と言葉が続きました。


広報力を上げる

竹村さんは情報発信について日々行動する中で、『役場の広報力を上げる』ことを目指しています。そうすることによって、町民にわかりやすく情報が伝わることはもちろんのこと、役場で働く職員にとってもメリットがある、と言いました。
役場は、日常的に町民からの苦情や厳しい言葉などを多く受ける場所。しかし、その原因を掘り下げていくと、町民に対して伝えたい情報がきちんと伝わってなかったり、情報不足だったりと、役場の情報発信の仕方にも問題があることがわかりました。
その部分を整え、役場から町民にわかりやすく情報を伝えることが、職員一人一人が楽しく仕事ができる近道だと考えて行動しています。

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人と人を繋げられるツールを

広報担当として、デザインや文章の勉強を行なっている竹村さん。ただ、自身のスキルとして身に付けるのではなく、他の職員の困りごとに対して手助けができるように学びを続けています。自分が学んだスキルを惜しみなく役場内に展開させ、四万十町として様々な事業の向上に繋げていきたいと考えています。
また、役場から外に向ける広報だけでなく、役場内に発信する広報にも力を入れています。これについても、きっかけはコロナ渦による影響でした。今年度入ってきた新規採用職員は、歓迎会もなく他職員との交流がないままだということに問題を感じ、竹村さんは四万十町役場で初めての庁内報の作成に取り組みました。新規採用者にも仕事を楽しんでもらい、他の職員にも新規採用者がどんな人であるか伝えたいと、新規採用職員へのインタビューをメインに内容を構成。この庁内報をきっかけに、役場では新しい繋がりが生まれました。
「広報は誰かと誰かを繋げられるツールでもあると思うので、そこを目指したい」庁内報についても今後も展開していきたい、と話しました。

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自分の行動が広がっていくように

竹村さんが自身のモットーとしているのが、
『とにかくやってみる』『こだわり抜く』『身近にいる人を楽しませる』という3つのこと。
四万十町民向けの広報誌でも、普段広報誌に手を伸ばさない中高生が少しでも興味を持つようにと、ファッション紙のような表紙に挑戦してみたり、今話題の漫画を少し織り交ぜてみたりと、仕事の中でも今までなかったことに挑戦し、細かい工夫や趣向を凝らせています。
また、プライベートでも、野外シネマの開催に挑戦。仕事仲間3人で企画したこの催しにはある想いがありました。それは、四万十町に素敵な空間や催しを作ることが出来れば、地元から離れていった人たちも、それに合わせて帰省してくれるのではないかということ。その想いが伝わったかのように、当日はたくさんのお客さんが来られ、中にはこのために帰省した人も。「行政として町全体のことを考える立場ですが、僕は身近にいる人を喜ばせたい」と話す竹村さん。仕事もプライベートも関係なく、自分が行っている活動が、少しずつ自分の住む町の人たちに広がっていけたら、と胸の内を明かしてくれました。


【総括】

中学時代に世界の現状や、身近で今後起こりうる可能性に衝撃を受け、誰もやりたがらないと気づいた上で、農業の世界に進もうと決意した陶山さん。自分の『好き』を理解し、目標を定め、自分のやるべきことを一つずつ行なっている現在。好きなことしかしていないと今の活動について話す彼女の姿に、尊敬の念を湧きました。

役場の職員でありながら、自由な考えで様々なやり方に挑戦する竹村さん。一般的に行政とS N Sは運用が難しいとされていますが、柔軟により良い方法として選択していることがとても素晴らしいと感じました。自分の住む町のために、と努力を惜しまない竹村さんの今後の活躍が楽しみです。


どちらも、人を喜ばせることには全力投球な2人。そんな2人に感謝している人もたくさんいるんだろうなと感じられるお話でした。


(レポート:畠中 詩織)

100人カイギとは 
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の"身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。

問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒781-0822 高知県高知市はりまや町3-3-3 GAIAビル2階
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/


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