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廃線とともに暮らす人々(バンコク/タイ)

ナナ駅近くのアラブ人街でケバブを食べたあと、私たち夫婦は隣のチットロム駅を目指して大通り沿いを歩くことにした。高級ホテルや銀行、商業施設など大きな建物が目を引く。

のんびり15分ほど歩いたところで、南北と東西の大通りが交差する地点にたどり着いた。ふと足元を見ると、電車の線路のようなものを、横切るように踏んでいることにきづく。


ここ電車通るの?!

そのわりに柵も踏切もない。左を向くと、少し先で線路が途中で切れているのが見えた。廃線だった。

直後、右を向いて驚愕した。そこには、まるで時代がタイムスリップしたかのような異世界が広がっていた。バンコクの、この大都会の真ん中で、廃線とともに生活する人たちの姿があったのだ。



トタン屋根で決して頑丈そうとはいえない家々が、線路を挟んで建ち並んでいた。バイクや物干し竿が生活感を感じさせる。ところどころゴミが散乱していたりもする。100メートルほど先の、木が生い茂っているところが行き止まりのようだ。


線路の上を歩く人がいるかと思えば、そこに座り込んで子守をしている母親か祖母らしき姿も見える。線路の真ん中は少しへこんでいるので、座ると収まりがいいのかもしれない。

線路は、完全に住民の生活に溶け込んでいた。


廃線は観光スポットになる。


たとえば日本では、廃線の跡地がハイキングコースとして利用されている場所がある。それ以外にも、線路の中での記念撮影が堂々とできたり、ノスタルジックな景観が写真映えすることから、各地で密かな人気を呼んでいる。

またニューヨークでは、高架廃線を活用した縦長の緑地公園「ハイライン」が、新しい観光スポットとして注目を集めている。


私たちが見たバンコクの廃線が、観光地化も整備もされずに残されているのは、おそらく彼ら住民たちの生活があるからだ。


「見世物じゃない」と怒られるかもしれない。

ただ私のように、人の手によって作られた「ザ・観光地」よりも、庶民のありのままの暮らしぶりに魅力を感じる人だっているだろう。そんな人にはうってつけの場所だ。


いつからここに住んでいて、何で生計を立てていて、なにを幸せと感じ生きているのだろうか。

線路の奥へ進み、人々の生活についてもっと知りたい、見てみたいと思った。

しかしそこは住民たちの「テリトリー」。奥へと進むことはできない雰囲気だ。


だから彼らの邪魔をしないように、1度だけ、そっとレンズを向けさせてもらった。



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17歳年上の旦那と小さな飲食店を経営しながら、ときどき旅へ出ています。中卒の女将。過去に起業の経験もあり。今は趣味&気晴らしに旅のエッセイを書いています。「幸せの扉は自分でこじ開ける」がモットーです。
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