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2020年代における「利用規約」との関わり方について考えてみるよ!

はじめに

そういえば、Googleの利用規約を改定したようである。

ユーザーがより「読みやすい」ようにアップデートがなされた。

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(画像:Google 利用規約)

「人類社会は情報化社会になると共に"契約"が大量に消費されている」らしい。

シティライツ法律事務所の水野祐 弁護士は、その著書「法とデザイン」の中で次のように述べている。

「一方で、情報化社会と言われる私たちの社会では、私人間の合意である契約が大量化・複雑化している......歴史上、人類がこれだけ大量の契約を日常的に交わした時代はおそらくない。」

(水野祐「法のデザイン」フィルムアート社, 2017年,p12)

大量消費されている契約の中でも特に顕著であるとされているのが、この利用規約と呼ばれるものである。

利用規約とは?

利用規約とは、法律上は「約款」と整理されるものである(正確にいえば、4月1日に民法が改正されるのだが、そこで「約款」としての整理が行われる)。

つまり、事業者とユーザーの間の"約束事"が書いてあるドキュメントであり、非常に重要なものである。

しかし、ちょっと立ち止まって考えてみよう。

しっかりと利用規約を読んで、理解したことがある人が、どれだけいるだろうか?

大抵、「なにこの長い文章... スクロールしなきゃいけないのちょーめんどい」と愚痴りながら、一瞬でスクロールして、同意ボタンを押すのが関の山なのではなかろうか。

ぶっちゃけ、みんな読まない

利用規約が、これほど身近に存在しており、そして重要なドキュメントなのにも関わらず、皆が読まないのはなぜか?

それは、「ぶっちゃけ、長いし、なに言ってっかよくわからん」からである。

とりあえず利用規約は長い。

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(画像:利用規約をプリントして長さ比べ トップ10は、どこ?)

上記の画像を見て頂きたい。

利用規約の長さを、視覚的にご理解頂けると思う。

また、利用規約は"わかりにくい"。

例えば、Twitterの利用規約には以下のような記載がなされている。

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(出典:Twitter サービス利用規約)

これを読んで、「ああーなるほどね。ユーザーが投稿したコンテンツに関しては、Twitterは責任おわないよーってことか。完全理解!!!!」と腹落ちして、同意プロセスに進んだユーザーはどれほどいるだろうか。

おそらく、世の中の90%以上の人が感じる感想はこんな感じだろう。

「なにそれ、おいしいの...?」

ここで、興味深い例を取り上げたい。

何かのサービスに申し込む時、必ず契約条件に同意を求められるが、その全文を読んでいる人はどのくらいいるだろうか。おそらくそれを読まなかったため、イギリスでは2万2000人が、無料Wi-Fiと引き換えに1000時間の社会奉仕活動に従事するという契約を結んだ。活動には公共トイレの掃除や、歩道のチューインガム除去、詰まった排水溝掃除などが含まれている。

(出典:無料Wi-Fiの接続条件に「社会奉仕」→2万2000人が契約も問合せは1人だけ)

無料Wi-Fiの接続と引き換えに、「トイレ掃除をすること」が求められる利用規約に、ほぼ全てのユーザーが同意したのである。

こういった現象は、ユーザーにとっても、また事業者にとってもよくない状況であると考える。

ある日、ユーザーに不利な状況が発生した際、利用規約によって事業者はリスクを負担しない為、ユーザーが自分自身でその問題で解決しなくてはならないかもしれない。

事業者にとっては、サービス上の疑義に関して、(利用規約を理解して合意したはずのユーザーからの)有象無象のクレームに対応しなくてはならないかもしれない。

「利用規約」を通じて、事業者とユーザーが、双方の立場を理解しながら、ルールメイキングしていくことが、結果的には双方の利益に繋がるのではないかと切実に思うのである。

2020年代における「利用規約」との関わり方

これまで見てきたように、現在社会では、契約があふれている (利用規約という形態で私達の周りに立ち現れてきている)が、そのあふれ方は尋常ではない。

「気になるあの子の写真をチェックする為にはアプリが必要で、そのアプリを起動するには利用規約に同意しなきゃいけなくて... 」

「クレジットカードを発行しようと思っていて、Web上で会員登録するには先ず"利用規約を読んだ"というチェックボックスをクリックしなくてはならなくて...」

我々は、未曾有の"契約の大量消費時代"を生きているのである。

ユーザーが利用規約を読まないのをいいことに、プラットフォーマーは絶大な権力を手にしていく可能性もある(プラットフォーマーとは、インターネット上で大規模なサービスを提供している巨大なIT系の事業者を指す;例えばGAFA)。

実際には、消費者契約法や、今回の民法改正等によって、一方的な免責事項は無効とされるケースがあるし、個人情報の取扱いに関しても、EUのGDPR(個人のデータを保護する為に、EUが策定した規則)に代表されるような「プラットフォーマーにとって有利な状況に対抗する動き」も出てきている。

しかし、一番大事なのは、「自分で取捨選択していくこと」と「プラットフォーマーの横暴に対して"NO"を突きつける勇気」なのではないかと思う。

プラットフォーマーに服従するのか、調べて抵抗するのか

2020年代、「自分で自分の生き方を選びたい」のであれば、

①既存の法律にアクセスし、その法律を利用していく姿勢

②自分と関係するルール(利用規約等)にアンテナを張って、それを変革していこうとする姿勢

が重要になってくると考えられる。

「この利用規約が、自分に与える影響はどのようなものか」「この部分はよくわからないから、事業者に問い合わせよう」...などなど、自分から積極的に動く姿勢が求められているのではなかろうか。

「ルールを最大限自分よりに活かしていくということは、知性の証明となりえる(水野祐「法のデザイン」フィルムアート社, 2017年より)

ぜひ、みなさんも、なんらかのサービスを使う時には利用規約をチラ見して欲しい。

読み方や用語がわからなかったら、ググるといい。法律用語をわかりやすく解説しているサイトは巷にあふれている。

それと共に、「これってちょっとおかしくない?」と思う条項に関しては、積極的に発信していく姿勢が重要である。プラットフォーマー及びその他の事業者は、レピュテーションを非常に気にしている。あなたの一言が、世の中を動かし、ルールを変革することだってあるかもしれない。

"契約の大量消費時代"、みんなでルールメイキングして、サバイブしていきたいものである。

(taro)

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