水無月キミ

大学生からnoteをはじめて社会人になりました。 日常何気なく考えたこと、思い出、小説…

水無月キミ

大学生からnoteをはじめて社会人になりました。 日常何気なく考えたこと、思い出、小説っぽいものなどを書き溜めていきます。 不定期更新ですが、気に入っていただけましたらぜひお付き合いください。 ♡、フォローなるべくお返しします。お気軽に交流していただけたら嬉しいです。

最近の記事

生の美学

「やっぱりさー、生のお花ってもらったら1番うれしいのよね。」 梅雨の平日の昼下がり。 行きつけのカフェで遅めのランチをしていたら、隣の席の女性たちの、そんな話が聞こえてきた。 私は恋人を思い浮かべた。 梅雨生まれの私誕生日はたった先日。 彼は私に、ハーバリウムをプレゼントした。 「花、好きって言ってたから。」 付き合ってから一度も私の名前を呼ばない彼はそう言った。 昨年の誕生日もハーバリウムをもらった。 しかも同じ文具屋さんの同じ色の。 かろうじて瓶の形は違うが、中

    • 表現の不自由

      幼い頃、自由帳にらくがきをしていると、クレヨンがはみ出して床に描いてしまい、親に怒られた。 だって、自由帳って小さいんだもん。 つまんないよ。 じゃあ、今度はもっと大きな紙を用意して自由に描こう。 これならはみ出さずにどこまでもえがけるはず。 自由に、どこまでも、どこまでも… それでも、紙の四方は「終わり」である。 その紙をどんなに大きく広げたって、必ず終わりが来るんだ。 どこまでも自由に描ける紙なんて存在しないんだ。 幼い頃、そんな風に思った記憶がある。

      • 募金[短編小説]

        「えへへ、ごめんね、こういうの見かけるとついついちょっとだけ募金しちゃうんだよね」 吉祥寺の人でごった返した商店街を彼女と歩いていた。 駅を出て数歩のところで小学生のボランティア団体を見つけるとフラフラっと寄って行って小銭を入れて戻ってきた。 「なんの募金だったの?」 「えっと…ユニセフ?的な?世界の子どもたちを…どうたら?みたいな?」 こういった呆れることは日常茶飯事なのだが、彼女は都会で生きていくことに本当に向いていない。 一歩外に出れば、政治団体、宗教

        • あの日No.2(後編)

          (続き) 「あの。義忠さん。今日はお願いがあってきたんです。」 お願い?そんなに改まって言われるようなことはあっただろうか。 振り返ると手を握りしめ、真剣な表情を浮かべる康介の姿があった。 「農家、やめないで続けて欲しいんです。大熊にいた時から義忠さんの作る米や野菜、嫁も大好きだったんです。次の春には子どもも生まれて、俺たちが食べて感動した福島の味を、伝えていきたいんです。」 まっすぐな眼差しに、少し引け目を感じながら言った。 「ありがとう、嬉しいよ。でも、もう決めたこ

          あの日。No.2(前編)

          (この小説はフィクションです。) 夢とか希望とか。 そういう言葉を馬鹿馬鹿しいと思うようになったのはいつからだっただろうか。 私は倉庫で農具を整理しながらふと思った。 甲子園常連校を目指して勉強も野球も頑張っていたが、入試当日にインフルエンザで完全にダウンした時。 高校3年の最後の試合で初戦から強豪校にあたり、ボロクソに打たれてコールド負けした時。 東京へ就職したが無茶苦茶な営業ノルマで胃に穴を開け、逃げるように大熊に帰ってきて親父の跡を継ぎ農家になった時。 そして、あ

          あの日。No.2(前編)

          あの日。

          (この小説はフィクションです。) 「私、将来ケーキ屋さんになるんだ!」 幼い頃、そう言っていた私は、大人なって夢を叶え、はれてパティシエになり愛する人とケーキショップを開いた。 私の生まれ故郷にはなかった、豊かな自然、清らかな空気、あたたかいご近所さんたち。 1人都会を離れ、夫の故郷へ移住することに、最初は不安だった。 けれど、昔からの夢を叶え 私は幸せだった。 私はこの地が好きだった。 きっと、ずっとここで幸せに暮らしていくんだろうなと思っていた。 あの日までは。 ー

          作品と価格

          数年前、当時美術系大学に通っていた友人が大学祭で売るハンドメイドアクセサリーの価格について、同じサークルの先輩方と議論している光景を見た。 友人はできる限り安く、材料費のみ回収できるくらいの価格で売りたいと言った。 手に取りやすい価格で、少しでも多くの人に届いてほしい、私はプロではないし仕事としてもうけを得ようとしているわけではないから、もうけにはこだわらない。 といったスタンスだった。 それに対し先輩方は、反論する。 そういった安易に安い価格設定はプロとして仕事

          作品と価格

          あの日の恋情

          かつての恋人が夢に出てきた。 彼と別れたのはもう5年以上前のことだ。 別れてから連絡を取り合うことはなかった。 しかし、大学に入学してから、同窓会用のLINEグループで私の連絡先を知ったらしく、時々彼から連絡が来るようになった。 私は彼に限らず、過去の恋人にほとほと興味がない。 もうとっくに別れてそれぞれの日常を歩んでいる。 なのに、なぜ今更近況報告をしないといけないのか。 なぜ今更馴れ合わないといけないのか。 なぜ今更会いたい、と言われないといけないのか。

          あの日の恋情

          遺伝のいたずら

          祖母と話していた。 私「私ってなんで親の悪いとこだけ遺伝してしまったんだろう。 そう思わない? 身長低くて、性格が頑固で、好き嫌いが激しいところとか、似なくていいところばっかり似てさ。 数学が得意とか、人見知りしないとか、方向音痴じゃないとか、良いところが全く似ないなんて。 こんな嫌な遺伝の仕方する人、そうそういないよ。」 祖母は笑ってこう言った。 祖母「そんなの当たり前だよ。 だってその人の良いところっていうのは、その人自身の努力によるんだから。 努力しな

          遺伝のいたずら

          水無月キミはかく語りき①

          こんにちは。 noteを始めて、今回で10本目のテキストとなりました。 いつもお読みいただいている皆様、本当にありがとうございます。 自己満足と思ってはじめましたが、毎回☆やコメントいただけて嬉しい限りです。 今回は今まで書いてきたエッセイについて、少しだけ語ってみたいと思います。 私は割と全体的に長文になる傾向があるので、この書き込みを目次がわりに気になるテキストのみお読みいただくといいかなと思います。 今後も10本溜まるごとに一言コメント的な、あとがき的なことをでき

          水無月キミはかく語りき①

          秋空花火

          地元に友達と家族に会いに、また花火を見るために帰っていた。 私の実家の地域ではこんな季節にお祭りがあって花火が上がるのだ。 新潟県の花火情報誌の1番最後に記載がある花火大会。 それが私の地元の花火大会だ。 新潟ではフェニックスで有名な長岡花火、片貝花火、柏崎花火と豪華絢爛な花火大会が夏には目白押しである。 そんな中、地元の花火大会なんてちっぽけだ。 打ち上げ箇所は1つだけ。 時間にすると1時間で終了する。 年々打ち上げ数も減っていく。 そんな、季節外れの、ち

          信じられるのはお金だけか

          「やっぱりさ、世の中で信じられるのはお金だけだと思うの、母親が昔そういってたんだけど、大人になってほんとそうだと思うようになった。」 先日友人と飲んでいた際に聞いた言葉だ。 ふと思い返し、信じられるのは本当にお金だけなのか。と疑問に思った。 この友人の考えについて、考察してみたいと思い、今noteを書き始めてみた。 今は答えがない。 自分でも落ちや結末のわからない文章を書いてみたかったので書いてみる。 まず、「世の中で信じられるのはお金だけ」の「お金だけ」の部分に

          信じられるのはお金だけか

          魚沼産コシヒカリのアイデンティティ

          数年前、お米について研究している大学生に「お米で有名な魚沼の地元の人ならではの美味しいお米の食べ方を教えて欲しい。」と聞かれたことがある。 こんなことを聞かれたら、地元民として黙っていられない。 よそ者が知らない、どんな美味しいお米料理を紹介してさすが地元民だろ!と驚かせてやろうか。と思いながらやけになって考えてみた。 が、まったく思い浮かばない。 新潟ならではの米料理。 おにぎり。とかチャーハン。とか彼はそういったことを聞きたいわけではないのだ。 日本一のブランド米を

          魚沼産コシヒカリのアイデンティティ

          古着の記憶

          古着を買ったことがなかった。 そもそも古着に魅力を感じなかったからだ。 どうせ買うなら古着と同じかまあもう少し高くても新品が良い。 普段買うのはファストファッションかセール品のどちらかで、服にこだわりがある方ではないが、1度使い古されたものよりは新しい服に魅力を感じていた。 そんな私が古着屋を訪れたのは、大学のゼミで使う衣装が必要になったからだ。 多分1度しか着ないであろう服にお金をかけたくなかったので、まあそれなら古着屋でいいや、という安易な気持ちからだった。

          古着の記憶

          人は死んだら何処へゆくのか

          私は大学で建築を学んでいるが、卒業研究の中間発表で「墓地」というテーマで設計している学生が2人がおり、その2人の設計の世界観の違いが大変興味深かった。 1人は墓地とはもっと明るく爽快な場所であるべきだと述べ、もう1人はもっと暗く、静寂に包まれる場所であるべきだと述べた。(研究の本筋は違うかもしれないが、私の感じたニュアンスだとだいたいこんな雰囲気だった。) 同じテーマに対して全く真逆の方向性が生まれることは大変興味深い。 そして、それはなぜなのか。 死生観の

          人は死んだら何処へゆくのか

          東京

          信じられないくらい大量の人々が凄まじいスピードで行き交っている。 子どもの頃、後楽園の遊園地に遊びに行った時のこと。 遊園地の前なのに、ちっとも楽しそうでない、スーツを来た大人たちが、疲れた顔をしながら早足で通り過ぎていく。 そのうちの1人のポケットから小銭が落ちた。 私はすかさずその小銭を拾い上げ、早足で人混みに消えゆくスーツの男を追いかけた。 「ねえ、お金、落としたよ」 これは良いことをしたと思って笑顔で話しかけた私を、その男は睨みつけ、無言で小銭を攫い、また早足で人混