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エッセイ

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思ったことや考えたことを書きました。
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記事一覧

(エッセイ)花粉症の記録

 今年も花粉症の季節がやってきた。清少納言は「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。」なんて言っているが、今は平安時代ではない。半世紀前に列島中で植えられたスギが毎年空気中へ散布する花粉に、詩情も何もないのだ。
 はじめて花粉症であることを自覚した瞬間のことは覚えていない。気づけばいつのまにかこんな体になってしまったのだ。
 基本的に生き物とい

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(エッセイ)振り向いてよ、映画

(この記事は書き手が今年度のアカデミー賞受賞式にて「思ったこと」に関して、さらに「思った」ことを書いた記事です。つまり「感想」の感想文です。だからこの内容を一般に適用できるものとしてではなく、こう考える人もいるんだな〜と読んでくだされば幸いです。)

 2022年の3月28日、第94回アカデミー賞受賞式が開催された。過去1年間で公開された映画から、より優れた作品を各部門ごとに顕彰する、国際的な映画

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(エッセイ)変な意味ではないのだが…

 ちょうど今、駅のホームにひとりで立っている。午後22時54分。そろそろ23時になる。電車を待っているあいだに通過電車が2台、ものすごい速度で目の前を通り過ぎていった。
 12月も中頃になり、最近はいっそう寒さが増している。コート無しで出かけたのがバカだったなぁ、と後悔しながら薄手のスーツをさすってみたりするが、風も吹いてきてなおさら寒い。
 前置きはここからにして、本題に入る。あらかじめ言ってお

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(エッセイ)嘘の晴れ、本当の雨

 今年の8月は頻繁に雨が降っていた。しかしこの気候が異常なのかといえば決してそうではなく、昨年一昨年を振り返ると、やはりこの時期は曇天やゲリラ豪雨が相次いでいたように思える。元来、日本列島は夏になると雨天に曝されやすい風土なのだろう。
 話は変わるが8月の初め、細田守監督の最新作「竜とそばかすの姫」を劇場で鑑賞してきた。言うまでもないが、夏休みに時間を持て余した子供やそれを連れる親たちに向けたいわ

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(エッセイ)自分自身における悪趣味の源流ーまたは手塚治虫についてー

じぶんの悪趣味は明らかに手塚治虫から影響を受けている。そして手塚治虫のその性向をもっとも如実に捉えることができる作品は短編「紙の砦」だ。

「紙の砦」は数ある手塚治虫の戦争漫画でも特に評価の高い作品である。手塚自身をモデルにした漫画好きな大寒少年と、合唱団に所属する少女との出会いから、戦争が2人を襲い心を引き裂くまでの青春模様をわずかなページ数で見事に描写している。少女の存在も含めていくつかはフィ

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(エッセイ)「じぶん」のこと

「俺」と言ったことがない。

小学校に上がる少し前から、「俺」という一人称を使うのが嫌だった。当時、周りの男友達は少しずつ「(本名)くん」とかから徐々に「俺」と自身を名乗りはじめ、純粋な子供からガキンチョらしいガキンチョへと成長?していた。当然その一人称鞍替えの波に押されていたし心も体も男だから、自然にみんなと一緒に「俺」と名乗るはずだった。

けれど結局、「俺」という一人称を使う気にはなれなかっ

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