ショートストーリー 回転寿司

たくさんは食べられない。
でも、たくさん皿を重ねたい。

高級寿司屋では、出てこないアレンジ寿司。
ツナマヨ、シーサラダ、サーモンアボカド、生ハム、カルビ、ホットスナック、ラーメン、デザート各種。
もちろん美味いが、種類豊富さがなにより楽しい。

回っている既存の寿司を狙うか。
それとも、タッチパネルで注文するか。
トロ、サーモン、エビ、イカ、玉子。
人気商品のこれらは、いずれ回ってくる確率も比較的高い。
だが、絶対ではないのが面白いところ。
あえて、待っていたとしても。
腹が膨れた頃にやってくることもある。
それでは、本末転倒。

そんなことを考えている間に、他の客が頼んだ茶碗蒸しが流れる。
それもあった。
とパネルを操作。
魅惑的な麺類の欄も覗いて、ついつい新作ラーメンをタッチ。
寿司屋で寿司を注文しなくとも、全く感じない罪悪感。
むしろ、一瞬自分が何を食べに来たのか分からなくなりかける。
とりあえず、弾む心と鳴り響く空腹を落ち着けるべく。
コマーシャルでも絶賛売り出し中の一皿百円の大トロを手にする。

力を入れているだけあって、口の中でとける脂が心地よい。
鼻から抜ける酢飯とトロ、ワサビ、醤油を目を閉じて味わう。
パネルから流れる音楽で、目を開ける。
茶碗蒸しとラーメンが同時に届く。
テーブルで、どっしり構える二つのメニューに少し笑う。
しかし、ツルンとした喉越しの茶碗蒸しと、初めて食べる新感覚ラーメンを食べるとどうでもよくなった。

何を食べに来たとか、何を食べなくちゃいけないとか。
全部忘れて二つをすする。
デザートも注文し、持ち帰り用に新作商品を数種類頼んだ。
楽しんだものがち。
遊園地みたいなものだ。
木馬の変わりに寿司が回っている。
なんとも愉快。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。