PechaKucha88_村瀬_.010

Back to いつかの菌未来。ソーシャルバイオミミクリーに生きること。

2015年は、発酵プロジェクトに力を入れ、価値観が大きく動き出した年でした。

【Case1】日本一手間のかかる味噌作り

【Case2】日本みっけ旅【甲州×発酵】

2016年は、自然から学ぶ本質的な働きを少しでも自分フレームワークに取り入れられるよう精進したいと思います。

発酵を選ぶか腐敗を選ぶか、人間だけは自由意志でそれを選択できる

せっかくの新春なので、300年続く造り酒屋「寺田本家」の故 寺田啓佐氏の言葉に習いながら、自分が何を大切にこれからを生きたいのか、意気込みと備忘録も兼ねて少し考えてみました。

AIと人間と生物と

未来を考える時に、欠かせないのはテクノロジーの存在です。

2045年は、人工知能(AI)が全人類の知能を超える現象、いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎える年と予測されています。AIが自己より優秀なAIを開発し続け、爆速的に進化していく中で人類を超えるという年です。

AIの発達は地球や人間社会をより効率的にサポートし、様々な問題を素早く解決したり、素晴らしいアイデアを人々が簡単に使える世界の実現に向けて期待されています。一方、影響力を持ったAIの悪用や職業の配置転換による混乱なども同時に懸念されています。

今AIの研究者が目指しているのは「人間並みの知性を持つ汎用人工知能」(WIRED vol.20より)。つまり、特定の目的に留まらず人間のような幅広く柔軟な対応力を持ったAIです。その実現方法は、人間の脳構造を模倣することが近道とされています。

そこまで模倣されると「人間って、何のために生きてるんだっけ?」という哲学的な疑問も生まれてきます。

でも、AIを使って未来の風景をデザインするのは、まず人間。自然破壊や戦争がなく、人間が自然の一部として循環しながら100年後も生きられる世界を作るか、正反対の世界を作るかは、きっとAI(テクノロジー)を使う人間の作法が大きく影響します。

じゃあ、人間が上手にAIを使えば豊かな世界になるんじゃん、そう感じる人も多いでしょう。でも、今の私たちに100年後も続く未来は描けるのでしょうか。

少し情緒的ですが、AIがせっかく人間を模倣するならもっといいお手本になることから始めた方がいいんじゃないかと自戒を込めて思います。

逆に、人間の方が自然の摂理に沿った生物を模倣することの方がこれからのヒューマンデザインの主軸として重要になるのではないでしょうか。

Social Biomimicryに生きる

そんな自然のエッセンスを技術に取り入れているのが、Biomimicryです。

Biomimicryとは、「生物が長い年月をかけて最適化してきた機能を、新しい技術に応用する考え方」を指します。例えば、注射器は蚊の針を応用することで痛みを軽減したのは有名な話。また、山形県鶴岡市のベンチャー企業スパイバーが蜘蛛の糸を繊維に活かす技術を開発したり、MITメディアラボのBioLogicというグループが納豆菌を応用した「自律的に動く服」を開発したりしています。

あらゆる天変地異を経験した地球で今も生き残っている又は進化した生物は最適化されたサバイバル機能を持っているので、その手法はとても合理的だと思います。それこそ「生物 × AI」の事例も今後増えてきそうですね。

ただ、この考え方を技術だけに応用するのはもったいないと思います。生物が長い年月をかけて最適化してきたエッセンスを、人間の社会作りにも応用することはできないでしょうか。

それを「Social Biomimicry(生物模倣する社会作り)」と呼びたいと思います。

もしかしたら、模倣するのは生物だけでなく、おばあちゃんの知恵や地域に伝わる文化かもしれません。子孫を残す力や循環に長けた自然の仕組みを社会作りのヒントにできれば、持続性のあるデザインが見えてきそうです。

例えば、【発酵×コミュニティ】

寺田本家の故 寺田啓佐氏は、著書「発酵道」の中でこんなことを仰っていました。

発酵すると腐らない。発酵と腐敗のメカニズムは同じ。様々な微生物やそれらが生産した酵素の働きによって有機化合物が分解され、別の物質を作り出す現象をいう。人間にとって有益なら「発酵」、有害なら「腐敗」。

酒造りでなにより大事なことは、微生物によい働きをしてもらうことなのだが、そのためには微生物の棲み家である「場」が居心地のよいことが最大の条件。微生物にとって快い場では素晴らしい発酵が始まり、不快な場では腐敗が始まる。

腐敗の原因は蔵の菌バランスが崩れたことが原因ではないか。微生物たちの調和した世界を乱したのは何か。酒作りに有用な微生物が楽しく働ける場を整えればいい。そうすれば発酵が発酵を呼び腐敗など寄せ付けない。蔵は微生物たちが力を合わせて発酵を続けている場所。

また、「森のような畑にしたい」と循環を大切にする農家さんも、

人間の役割は、土壌中の微生物が気持ち良く働いてもらうのを手助けするだけ。あとは自然と野菜が育っていくんだよ。

と仰っていました。

この仕組みを社会作りに当てはめた時、人間を菌、コミュニティをぬか床に例えるとよく理解できます。

持続的なコミュニティは、まず面白い人が面白い人を呼び、その場が気兼ねなく学びがあり、互いに尊敬し合う居心地のよさがあれば自然と盛り上がっていく。そのコミュニティは他にはないオリジナリティを持ち、地域の色(文化)を放ちます。また、同じようなコミュニティ同士が連携し合うことで小さな社会がゆっくりと着実に育っていく。この繰り返しが社会作りであり発酵だと感じています。

実際に、尊敬する同年代のコミュニティは、上記の内容がバチッと当てはまります。発酵するコミュニティは、誰もがリーダーで誰もが仲間となり、自発性と創造性に富むように育ちます。

「成金」よりも自ら菌に成る「成菌」を目指し、社会のぬか床を作ること。持続性のある豊かさ(New Rich)を実現する過程の方が僕は楽しみです。

微生物の他にも、鳥や蜜蜂など様々な動植物から学ぶエッセンスはきっと沢山あるはず。

2016年は、そんなことを考えながら物事を見定めていきたいと思います。

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