ドクドクと
もうすぐ二歳の娘は、寝付くとき私に乗っかってくることがある。添い寝する私の頭によじ登ってきて、ベストポジションを探しバウンドしたのち、うつ伏せで眠る。重たい。首が痛い。寝付くまでじっとがまん。
ちょうど耳のあたりに娘の心臓がくるのか、ドッドッドッと聞こえる。それがだんだん落ち着いていき、ゆっくりのドクドクになる。でもやっぱり、私のドクドクよりは早い気がする。
私と別の心臓を持ってるんだなぁ、この小さい人。と当たり前のことを思う。この心臓は私の身体の奥で動くことをはじめたんだな、とも。
心拍確認、は確か妊娠八週目あたりだったか。もう時期は忘れた。妊娠でよくいわれる、「◯◯の壁」の二つ目だった。「ほら、トットと動いてるよ、見える?」と医者に言われて、正直よく分からなかったけどほっとしたのを覚えてる。ドラえもんみたいな形だったあのときからずっと、娘の心臓は動いてるんだな。
娘が寿命を迎えるそのときまで、頼むよ心臓。と心の中で呼びかける。
多分。そうであってほしいけど、この子が大人になって、やがて私が死んで、それからまた長い時間が流れるまで。
私の中で作られた身体が、遠いところまで娘を運んでくれますように。そこがあたたかい場所ですように。
まだ意識もなにもないときに、母親のお腹で作られた身体。ずっとずっと、元の親がいなくなっても、何十年もつかっていくことって何度考えても不思議。
そんなことを考えてたら、結構時間が経っていた。娘もぐっすり。ゆっくり頭をひきぬいて、私も隣で眠りにつく。はー軽くなった。だけどやけにスースーする。娘の身体に暖められていたのは私の方だったのかもしれない。
この暖かくて可愛い子のこと、頼むよ、心臓。頼むね、娘の身体たち。
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