雑誌並んでいる

アソウ、雑誌つくるってよ。

新たなる挑戦

取扱説明書やマニュアルの企画・編集・執筆を行うテクニカルライターとして、はや15年オーバー。
そんな私が、初めて雑誌制作に取り組んでいる。

ライターと名のつく職をやってきたが、つくるコンテンツが変われば、やり方も変わる。
テクニカルライターとしての取材対象は、製品とそれに関わる人。
雑誌なら、インタビュー記事であれば人であるし、情報記事であれば人やそれを取り巻く環境、事象であろう。

世間には様々なタイプのライターがいる。専門性を売りにする人、瑞々しい感性をいかんなく発揮する人、幅広く何でも書くことができる人など、各々がストロングポイントをもっている。
私のストロングポイントは、テクニカルライターとしての経験とスキルに裏付けされた、難しいことをわかりやすく伝えること、である。

だが、今回、慣れない雑誌制作において、この能力を生かすことができるのだろうか?
それとも、まったく生かすことができず、一から出直し的な取り組みになるのだろうか?
実に興味深いテーマであり、やりがいもあり、楽しみしか感じられない取り組みだ。


「マエボン」とは

元・任天堂のデザイナー 前田高志さんが率いるクリエイター集団「前田デザイン室」。
結成以来、数々のプロダクトを世に送り出してきた彼らが、
雑誌」にチャレンジする。それが「マエボン」である。
この雑誌が掲げるテーマは、「童心を取り戻せ」。

あなたは、こんなことを考えたことがないだろうか?
「社会ってめんどくせぇな、でも実際のところ、こんなものだろう。」
学生生活を終えて社会人になると、現実の厳しさに直面する。関わる人や事象が急激に増え、組織や人目を気にしたり、気を遣ったりして、いろいろ面倒が増えるものだ。

しかし、これも最初だけで、いろいろな経験を重ねていくうちに慣れていき、いつの間にか「こんなものだ」と当たり前になる。
これは、成長とも言える。
自分を抑え、制御し、現実にアジャストさせる。
これは、社会人の誰もが、多かれ少なかれやっているものだ。

だが、いつの間にか、すっかり忘れてしまったことがないだろうか?
自分を社会に合わせていくうちに。生きていこうとするうちに…。
本当にしたいこと、楽しく思うことまで、内面に抑え込んでいないだろうか?
ここで少し思い出してほしい、子どもの頃はどうだったか?
今よりもっとシンプルに、考えて行動していたのではないか?
もっと、思うままに生きていたのではないか?

ここで、あなたに提案がある。
経験もスキルも兼ね備えた社会人が、子どもの頃のような気持ちで、
思うまま一つのことに取り組んだら、いったいどうなるのだろうか?
今回、この思いを実際に試し、形にしてみようと考えた。
ぜひ、この取り組みを見守ってほしい。

前田デザイン室のクリエイターたち。
彼らは会社員やフリーランスとして、最前線で活躍するガチのプロ集団だ。
そんな彼らの研ぎすまされたスキルと経験を惜しみなく投入し、
本気の遊び心で、「マエボン」をつくる。

このプロジェクトでは、果たして、どんな化学反応が起こるのだろうか。
そして、マエボンを読んだあなたが、少しでも自分の心を解放し、
楽しんでくれたなら、こんなに嬉しいことはない。
いっしょに、童心を取り戻してみませんか?


「マエボン」でしたこと

私は、この雑誌「マエボン」で、
特集ページとメンバーコラボレーション企画ページ
のライティング面で参加させてもらった。

●特集ページ
映像クリエイター 藤井亮さんのインタビュー記事で、取材と執筆を行った。
彼はこれまで、数々のおもしろ映像を生み出してきた。
NHK Eテレの作品などは、見たことがある人も多いのではなかろうか。
彼の創作活動の裏側やクリエイティブへの思いなどを中心に書いた。
その中でも特に、彼自身の独特なキャラクターに注目して欲しい。

〈藤井亮さんの作品〉


●メンバーコラボレーション企画ページ

前田デザイン室の高校生クリエイターGOくんへのインタビュー記事を執筆した。
彼の話を聞いていると、もはや「高校生」という肩書きは不要ではないかと思わせられる一面もある。
一人のクリエイターとして歩み始めた、彼の素顔を知って欲しい。

〈GOくんのnote〉



「マエボン」で得たこと

雑誌制作で自分の経験やスキルを、どこまで生かすことができるのか?
結論としては、すべて役に立った。
これまでの経験がなかったら、決して書き上げることはできなかった。

まずは、取材力。
取材経験はある方だが、取材対象が人ということで、やや気になるところがあった。
取材において、話を引き出すことは大切だが、聞いた話を理解し、言葉に現れない会話の雰囲気をつかむことも大切だ。

藤井さんの場合もGOくんの場合も、それぞれの雰囲気をつかむため、話を聞きながら、視線の動きや身振り手振りなどの仕草まで観察していた。
必ずしも執筆時の具体的な描写に直結しないが、彼らを少しでも理解するために注目した。
その意味で、取材のために磨いてきた観察力は、役に立ったと言える。

そして、企画構成力と文章力。
藤井さんの記事を例にして、振り返ってみる。
取材後、文字起こしをしたら、約40,000字の情報量になった。これを編集の浜田さんにより、15,000字程度まで圧縮してもらい、そこから執筆がスタートした。これを5,000字程度まで減らし、ブラッシュアップするのが目標だ。
何も考えず、単に文字を減らして読める文章にするだけなら、それほど難しいことではない。
しかし、それで果たして、楽しんでもらえるような内容になるのだろうか?

基本に立ち返り、構成を熟慮することから始めた。
まず各エピソードの要点を、ざっとまとめ書き出してみる。
そこから必ず入れたい内容、複数の内容をひとまとめにできそうな内容などを考え、並べて、全体の流れをつくる。
いわゆる、目次構成を考えるのだ。
流れに違和感がなければ、文字数を気にせず執筆し、第一段階を書き上げる。これで9,000字程度まで減らした。

だが、ここからが大変だった。
アスリートの場合、運動して、ある程度の脂肪を減らせても、大切な筋肉まで減らしてしまえば、動きが悪くなりパフォーマンスが低下する。
それと同じで、エピソードの面白いところまで削り過ぎたり、変えてしまうと、流れに無理が出て、面白みが薄れてしまう。
この調整が、全工程中で一番苦労したところだ。さらに3,000字程度減らし、残り500字を減らすときは、かなり苦慮した。


できるボクサーは、ここからさらに減量できるのだ!と、訳のわからない檄を自分に飛ばしながら、なんとかまとめきった。
取扱説明書などの執筆では、ここまでやらないが、なるべく平易で伝わる文章を書くという点で、これまでの経験を活かせた。

執筆前、専門にするテクニカルライティングと雑誌ライティングの違いに戸惑いがあった。だが、実際に書いてみると、印象は変わった。
コンテンツに違いはあるが、伝わる文書を書くために、これまで磨いてきたスキルと経験は、十分に転用できることに気づけた。

これは今回のチャレンジで最大の発見であり、手応えを感じ、本当に嬉しいことに思っている。
そして、このような喜びを感じられた背景には、クリエイターたちとの密接なチームワークが、大きなファクターになっていたことは、間違いないことである。


「マエボン」の手に入れかた

マエボンは、9月末に始まるCAMPFIREのクラウドファンディングで購入できます。
一般書店では、現時点(2018.9.4)では、青山ブックセンター本店で販売されることが決まっています。
発売日等の詳細がわかりましたら、あらためてお知らせします。
ご興味ございましたら、ぜひ、ご一読ください!

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