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慎重さゆえの長期政権、そして志半ばに

安倍総理が退陣を表明した。任期を1年余り残しながら、自身の体調問題により辞任することはさぞや無念だろう。先週金曜の辞任表明では「志半ばで断腸の思い」と語った。

安倍政権には目立ったレガシー(政治的功績)がないとも言われている。経済面では、あの酷かった民主党政権時代に比べれば、アベノミクスや異次元緩和で一定の建て直しには成功し、株価も持ち直した。消費増税の国際公約も果たした。だが残念ながら成長戦略は描けていないし、財政再建、特にGDPの2.5倍近くに達するプライマリバランスの赤字縮小化と均衡は目途が立っておらず、将来に向けた不安感の解消には至っていない。

野党が惨憺たる状態で「安部一強」と言われたにしては、振り返ると大胆な実績は余り残せていない気がする。

個人的にはデジタル化推進や産業構造の改革には、もっと行政官庁に対して強い指導力を発揮し、大なたを振るってもらいたかった。

思うに、世論動向を気にして、安全運転に徹しすぎたからではないか。確かに今の世の中、ちょっとしたことで世論の風向きが変わる。風向きが変わると、総選挙では小選挙区制ゆえにドドッと投票行動に雪崩現象が起きてしまう。民主党政権時代の悪夢を経験しているだけに、常にネット世論の動向や内閣支持率を気にしながらの政権運営だった。

これは別に安部政権が悪いということでなく、世界の政治がインターネットやSNSの発達に伴ってポピュリズムに傾いている、そうならざるを得ない傾向なのだと思う。

ゆえに戦後最長の長期政権を維持した。が、大なたを振るうような実績には至らなかったということではないか。

コロナ問題により、大きな足跡となるはずだった東京オリ・パラが延期になってしまったことは、不運としか言いようがない。

構造的な問題にメスを入れていくには時間がかかる。民意を無視して、独裁的に権力を振るう訳にもいかない。後継政権がどうなるか分からないが、私としては日本をさらに少しでも良くしていくように、長期的視野に立って、道半ばに終わった志を引き継いで進めてくれる指導者を望みたい。

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